02.椿
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「リリイさんは…」
「?はい」
「…リリイさんは、まるでしんしんと降る雪みたいですね」
「……はい?」
突然何を言い出すのだろうとしか思えないこの発言。
続きをとりあえず聞いてみる。
「えと、どういうことでしょうか」
「ん~…えっと、安心できるというか…ホッとするというか…でもそれだけじゃなくて。…どうしてかな、ごめんなさい…上手く説明できない」
「……」
一体何を思ったのだろう、何を感じたのだろう。
でも本人が上手く説明できないと、少ししゅんとする蒼に、「大丈夫ですよ」と言ってにこりと微笑みを交わす。
そんな笑顔に安心したのか、蒼もにこりと微笑みを返し「ありがとうございます」と言った。
(蒼さんの笑顔は、何だかホッとしますね。……なんなのでしょう、鼓動が高鳴る…この胸の熱さは……)
胸の鼓動がドクンと熱く動くのが分かった。
リリイが少し影を落としていると、蒼は様子が少し違うことに気が付き声をかける。
「リリイさん?」
「!…はい?」
「どうかしたのですか?具合、悪いのですか?」
「…いいえ。蒼さんの為にひと肌脱がせて頂いて、とても光栄です」
するりと器用に服をずらし、既に肩が見える状態に。
はわわっと再び慌てふためき、脱がそうとするリリイの服を掴んだ。
「あっ、ダ、ダメですよ!」
「おや、どうかしましたか?」
「脱いじゃダメです!風邪を引いてしまうので!」
「大丈夫ですよ、風邪なんて引きませんから」
「だ、ダメっ…あう、あのっ…わ、私が困るのでっ!もし風邪を引いてしまったら、大変申し訳ないのでっ!」
必死に訴える蒼、すすす…と服を戻すリリイ。
あまりにも心配してくれる反応で、リリイも困りましたね…と少し苦笑していた。
(風邪なんて引かないのに…)と、そうまでして人の事を心配する姿に心温まるような感じを覚える。
そしてマンションに辿りつき、無事真昼達を部屋に戻す事ができた。
籠の中にタオルを詰めて、その上にすやすや眠るクロを置く。
帰宅しようとするリリイに、「少しだけ待って下さい!」と制止する蒼。
「直ぐ戻るので、ここで待っててもらえますか?」
「は、はい」
玄関の外で待っててもらい、蒼は自分の部屋に一度戻った。
鞄の中からリボンでまとめた小包を手に取る。
それを持ってリリイのいる玄関の外に出てきた。
そして…。
「あの、これ…ありがとうございました。助かりました」
「…これは?」
「えと、今日学校で焼いたんです。文化祭用で、クッキーなんですけど…お礼に」
「よろしいのですか?どなたかにあげる予定だったのでは?」
「あ、えっと…はい、今リリイさんにあげる予定ができました。なので、差し支えなければ受け取って下さい」
ふんわりと笑みを零しながらクッキーの入った包みを差し出す蒼。
一瞬止まったが、リリイもふわりと笑みを返して「では、頂きます」とクッキーを受け取った。
蒼はリリイを見送り、真昼の様子を見ようと一度真昼宅へお邪魔する。
真昼の部屋へ行き、様子を伺う蒼。
倒れてから一度も目を覚まさない。
けれど、すー…っと眠っているだけの真昼に安堵の表情を浮かべた。
クロも変わらずすやすやと眠っている。
思わずふっと笑みを零し、そっ…と優しく頭を撫でてあげた。
「…あのクッキー…本当は真昼くんにあげる予定だったんだけど…。まさか、お裾分けしてもらえるとは思わなかったなあ」
独り言が静かに消えると、部屋を出てリビングに向かう蒼。
机の上には、あの人形を置いていた。
先程のこともあり、びくびくしながらじっと見ていると…。