02.椿
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「知らねーもんは知らねーよ。めんどくせー…」
それだけを言うと、鎖やクロの爪はバシャッと一瞬にして消えた。
その勢いにやられ、真昼も尻もちをついた。
「わっ!?鎖が…消えたのか。びっくりした…」
倒れているクロに気付いた真昼は「おいクロ!大丈夫―――…」と声を掛ける。
「大丈夫じゃね――…あ――――――明日絶対筋肉痛だー…めんどくせー…」
「筋肉痛とかあんのかよ…しっかりしろ吸血鬼…」
「あはは…帰ったらちゃんとお風呂入って、身体ほぐさないとね」
ぷるぷると身体を震わせるクロ。
そんなクロを見て、蒼はまたも安堵した。
さっきの冷たい表情が忘れられない…さっきの瞳や顔が怖くなかった訳じゃない。
とても怖かった…でもその恐れ以上に元に戻った事に、何より安心したのだ。
そして、真昼も……。
(…よかった。元のクロに戻っ…て……さっきなんか怖かったし…)
ふらっと真昼は身体が後ろに倒れていく。
真昼の様子に気付いた蒼は「真昼くん?」と呼びかけた。
「真昼くん?どうしたの?真昼くん!」
目がかすんでいく…目の前にいる黒猫のクロと、手品師の人形、そして蒼が見える。
蒼の必死な呼びかけも、真昼の耳から段々遠のいていく。
─────あれ? えっ? おい何だよ、次から次へ 誰かシンプルに 説明してくれよ─────…
「真昼くんっ!?しっかりして真昼くん!!真昼くんっ!!」
蒼の呼びかけに答える事なく、真昼はそのまま気を失った。
真昼が倒れ、蒼は直ぐ様駆け寄るが、気を失っているだけだと分かると、ほっとして自分自身も気を失いそうになった。
めまいが蒼を襲う。
ふらふらと身体が揺れ始め、仕舞いには倒れそうになった。
ポスッ
「…へ?」
地面への衝撃が無いことに、蒼は意識が少し戻った。
自分を受け止めた何かに目を向ける蒼。
するとそこには、一人の男性が蒼を支えていた。
?と飾す蒼に、その男性はにこっと優しく微笑む。
「大丈夫ですか?もしよろしければ、私がひと肌脱ぎましょうか?」
とても綺麗な顔をしているが、ただでさえ胸元が見えているのに付け加えスルリと服をはだけさせる露出狂、金髪の見た目ホストがそこにいた。
だが蒼はキャー!などと叫ぶことなく、整った綺麗な顔立ちとスタイルに思わず頬を染めている。
まるで時間が止まってしまったかのように動かない蒼。
何も反応しない蒼に対して、男性も流石に「あ、あの~…」と声をかけた。
「はっ!す、すみません!思わず見惚れてしまいまして…。とても綺麗な方ですね」
「……」ポカン
「でも、あの、あんまりお洋服を脱いでいたら、風邪引いちゃいますよ?」
「いえ、あの…困りましたね。いつもでしたら…脱ぐなキモイ!!って突っ込まれるのですが…」
「そ、そんなことないですよ!とても綺麗なお身体だと思います!」
「え…あ、ありがとうございます。何だかこちらが照れてしまいますね」
「でも、ずっと脱いでいたら風邪引いてしまいますから!…はっ!も、もしやこれが俗に言う…あの有名な!!」
「?ゆ、有名な…?」
「露しちゅ狂!!」
「……」ポカン
「あ、噛んじゃった……っえ、えっと、露しちゅ…りょしちゅ…!」
「…あ、あの…私は別に露出狂ではありませんよ?」
「露しゅちゅ狂!」
「…」ポッカーン
結局言えず仕舞い。
何度言おうとしても言えない“露出狂”。
嗚呼、文章ならこんなにも簡単に表現できるのに…。
噛み続ける蒼の言葉に、男性は冷や汗を垂らすしかなかった。