01.引きこもり吸血鬼
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「そういえば、猫くん一匹で大丈夫?」
「大丈夫だろ。猫缶開けておいたし」
「そっか」
真昼と蒼、マンションに入りながら昨日拾った黒猫がどんな様子か会話をしていた。
それぞれの部屋の前で一度別れる。
「じゃあ後でね、真昼くん。なるべく早く準備するけど、先に終わったら呼び鈴押してね」
「あ、ちょっと待って」
「?」
リュックの中をガサガサと漁る真昼。
中からクッキングペーパーで風呂敷包みされたある物を取り出し「これやるよ」と差し出した。
包みからふんわり漂う香りに、蒼はぱあっと顔が明るくなる。
「この香り、今日の試作品クッキー?」
「おう。多めに作ったからお裾分け」
「いいの?貰っちゃって…」
「いいんだよ。じゃなきゃ用意しないって」
「わあ〜…ありがとう!」
差し出された包みを、大事に包み込むように受け取る蒼。
きゅっと優しく抱えながら「大事に頂きます♪」という蒼に対して、どこか照れ臭そうに「大袈裟だっつーの」と真昼はツッコんだ。
「じゃあ後でな」
「はーい」
真昼と別れた蒼は、斜め掛けのショルダーバッグと貰った包みを部屋へ置き、すぐに干していた洗濯物を取り込みにベランダのある部屋へ向かった。
取り込んでいる間、蒼は桜哉の言っていた”吸血鬼”というワードにどこか引っかかる所があった。
話を聞いた時はその場の雰囲気でそうなったが、今思い出してみると、恐ろしさというのはあまりなかったのだ。
「吸血鬼、か…そんなおとぎ話みたいな人、本当にいるのかな…」
ポソッと呟き、取り込み終わった洗濯物を持ってベランダから出ようとした時!
「うわあああああ!?」
「え?真昼くん!?」
真昼の叫び声が聞こえて、洗濯物を持ったまんま直ぐ様真昼の部屋の玄関へ向かった。
「真昼くん!真昼くん!!どうしたの!?何かあったの!?」
ドンドンッとドアを叩くも返事がない。
ドアノブに手をかけると、鍵はかかっていない。
少し顔を覗かせ「真昼、くん…?」と遠慮がちに呼んでみる。
なにやら声がする…真昼と、知らない声。
「お邪魔しまーす…」と上がってみると、やっぱり真昼と知らない声がする。
すると…。
「襲えよ!!吸血鬼なら!!」
(え!?吸血鬼!!?真昼くん!!)
吸血鬼というキーワードに、蒼は人の家でありながらも廊下を走ってリビングへ。
「真昼くんどうしたの!?今吸血鬼って…!!」
「あっ、蒼!」
「ん?」
「へ…?え?」
そこには、真昼の他に別の男の子がいた。
水色の髪、目の下にクマ、浅黄色のフードジャケットを着た、見知らぬ男の子。
え?誰?Why?そんな単語しか蒼の頭には無かった。
「まあ落ちつけよ。しょうがねえ、オレが茶でもいれてやるか…」
「俺の家だ!!」べしっ
コントとは正にこの事を言うのだろうか…。
他人が他人の家で茶をいれようとするなど…蒼は頭がおっつかないでいた。
「え、え?ひ、人が…増えて?ど、どなた様?あれ、今日って来客日…?」
「ひでー奴だな…そう慌てんな…夜になれば出てくって…。とりあえずオレが人の姿の時に名前を呼ぶなよ」
「?!俺、お前の名前なんか知らねーよ!
・・
猫だと思ったからクロって……」
するとヴンッと大きな音と共に光が現れ、真昼の右手首とその男の子の首の周りを光の輪が包み、互いの輪が繋がれている。
驚いている真昼と、その輪の意味を知り、いかにもめんどくさそうな表情を浮かべる男の子。
そして光の輪は消えていった。
そんな光景を見た蒼も驚きで言葉すら出ない。