00.季節はずれの転校生
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#00.季節はずれの転校生
「…ん……あれ…寝ちゃってた…?」
雪が降りそうな寒い季節。
白い息が周りを漂い、鼻を赤くさせるような気温が覆っている。
とある公園のモダンなベンチで、ふと目を覚ました。
辺りを見回しても誰もいない。
下を見下ろすと、腿の上には【御品物】と書かれた白い箱が乗っている。
「…あ、そっか…これを持っていこうと思って…」
すくっと立ち上がり、その場を後にした。
そして、目的地へタタタッと走り出す。
ピンポ―――ン……
「あれ、誰もいないのかな…」
灰色の空が街を包むある日の午後、あるマンションのドアの前で、御品物を持って立ち往生してる女の子が一人、名前は夜明蒼。
透き通るような白い肌に、薄桃の唇、快晴のような深い空色の瞳、紺色がかった黒髪を左側へ団子型に右側へ小さく纏めつつ、余った毛先は胸元からお腹辺りまで下ろし、団子の部分には紅色のリボンが飾られている。
マフラーを首にぐるぐると巻き、温かそうに見えるが持っている手は寒さで震えていた。
引っ越しをしてきた為、隣の住人に粗品を持って来たのだが、生憎の留守。
どうしようかな…と御品物をジッと見つめていた。
すると……。
「すいません、うちの部屋に何か用ですか?」
「え?」
声を掛けられた方へと振り返ってみると、同じくらいの年齢の男の子が立っていた。
“うちの部屋”というキーワードにピンと来た蒼は、ぱぁっと表情を変え「もしかして城田さんですか?」と尋ねた。
蒼の表情にドキッと心動かされた男の子の名は城田真昼。
真昼は動揺しながらも「は、はい、そうですけど」と答えた。
「丁度良かった。私、隣に越してきました、夜明蒼と申します。はじめまして」
ペコリと頭を下げる。
「え、あ、えと…城田真昼です、はじめまして」
真昼もつられて頭を下げる。
「これ、粗品です。渡そうと思ってチャイムを鳴らしたんですけど、誰もいらっしゃらなくて…よろしければどうぞ」
「あ、ども、ご丁寧に」
粗品を受け取る真昼を、蒼はジッと見ている。
「な、なんかついてるかな?」としどろもどろに聞いてみた。
「あの…お会いしたばかりで失礼ですが、中学生ですか?」
「え?う、うん、そうだけど…」
「やっぱり!私、この近くの中学校に転入するんです」
「へえ!そうなんだ!あ、学年は?」
「今2年生で、来年3年生です」
「来年3年…てことは、俺と一緒だ!」
「そうなんですね♪もしかしたら学校一緒かも。その時はよろしくお願いします」
「おう。ていうか、敬語なんていーよ。同い年なんだしさ」
「!…うん!じゃあ、お隣さんだし真昼くんって呼んでもいいかな?私の事も名前で呼んでほしいな」
「いいよ。よろしくな、蒼」
「はい!」
お互い握手をする。
蒼から伝わった手の温度に驚き、思わず「冷たっ!」と声が出た。
「あ、あはは…ドアの前でどうしようか悩んでたから」と蒼は照れながら笑った。
「ったく…こんなに冷えるまでいなくても…隣なんだし」
「あはは~…ですよね〜」
「…もしかしなくても蒼って、かなり天然?」
「ん〜…?天然かどうかはわかりませんが、よくぼーっとしてたりしてます」
「なんだそれ。っていうか、敬語使ってる」
「あ…あ〜、あはは~…」
今初めて会ったばかりだというのに、まるで昔から知ってるような雰囲気に変わる。
何かあったら呼んでいいからと言ってくれた真昼にお礼を言い、それぞれの部屋に戻っていった。
「良かった、お隣さんに同じ中学生の人がいて…」
転校する事に少し不安になっていた蒼だったが、真昼と知り合いホッとした様子。
明日の転校初日に、感じていた重荷がスッと消えて軽くなると、次の日が来るのを楽しみにしながら荷物の整理を続けた。
一方で、真昼の方も隣に転校生が引っ越してきた事と、その転校生が可愛く接しやすいタイプだった為に、明日学校へ行くのがわくわくしていた。
もしかしたら同じ学校かもしれない。
早く来ないかな?と旅行や遠足を楽しみにしている子供のように…。