戯作

だりあうう




あらゆる命の芽生えの頃、わたくしは暖かな土の中で静かに眠り、朱い血液の海を夢に視ておりました。


やがて目覚めの刻、まどろみの中にある重し目蓋をだらりと開くと、未だ暗き世界が眼球をぬるりと撫でました。


また、わたくしが視ておりますと、如何なされたか、泣き止まぬ天よ、心痛余りあったので、恐る恐るかいなを伸ばしますと、噫、ふれる、ぬれる。


やがて、天の愁嘆を浴び、盛りの光明を受け、緑の腕に咽せる大気を抱き留め、わたくしは傲慢に裂く、ちぬるの様に悍ましい天竺牡丹となっておりました。


大地の愁へを吸って
高貴の溜息を還し、

然うして沈みゆく晩夏、

わたくしは、疲れ果てた一片の蝶から、今生の別れのしるしとして、甘い口吸いを授かりました。


冷たい北風に木々はさいごの舞を始めます。
永い眠りに向け、なんて美しい死化粧。


然れどわたくしは無様に抗ったりはせず、そう、死期を悟った獣の、ゆるりと閉じる目蓋のさまに。


ただ今は、新たに膨らむ命の灼熱を感じ乍ら、


白い世界に、また夢を視にゆきます。









機会が御座いましたら、また貴方様と御話しとう存じます。


ではまた、御機嫌よう。




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