戯作
兎型のポシェット
少女が愛用している兎型のポシェットには、色々なものが入っている。
フリルやレースを不断にあしらった洋服にも良く似合う小さな扇子だとか、幼い彼女にしては些か背伸びをし過ぎたリップとグロスだとか、何に使うのか俄かには察し得ないペンのようなものだとか。
少女が外に出さないだけで、この他にも色々なものが兎の中でそろそろと息を潜めている。
少女が愛用している兎型のポシェットには、色々なものが入っている。
肌を撫でる汗を吸い殺す薄桃色のハンカチだとか、閑暇を指先で押し潰すための手袋だとか、危ない妄想を詰められ育った、長い髪をなだめる櫛やピンや紐だとか、これは今日必ず使うという理由で入っているもの、特に用は無いけれど持っていないとなんだか落ち着かないもの。それぞれに思い入れや考えがあって、兎型のポシェットという限られた空間の中に押し込めるには余りにも多過ぎる。
少女が口に出さないだけで、とても素敵な小道具たちが兎の中でわらわらと息巻いている。