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セキンガルはナマエの抱擁を拒まなかった。
普段のナマエはこんな接触を図る人ではない。不安に苛まれ続ける立場で、それを知るセキンガルだけが支えなのだ。距離が縮まるにつれてそれなりに抵抗を感じたが、S級ヒーローの苦悩と比べれば些細なことだ。
セキンガルの背中を抱いたナマエの右手がジャケットの裾から潜り込んで、ワイシャツ越しに背中を押さえた。力だけでなく、皮膚の硬さや体温まで伝わって、想定外の感覚に身体がこわばる。そこから互いの余白を全くなくしてしまうように抱き寄せるから、ナマエの太い腕に手をついた。距離は少しも開かない。
「ナマエ」
添えられた手がわずかに動いて背中を撫でる。
「ナマエっ」
焦って呼ぶと、ナマエは身体を離して、セキンガルの両肩に手を置いた。
「はい」
誠実なヒーローの顔でセキンガルを見る。両手にかかる重さは軽く、圧を感じない。ただセキンガルを頼りにしているひとりの人間なのだと思い出す。
「いや……」
その仕草に流されかけた。ナマエにセキンガルが予感した意図がなかったとしても、セキンガルの拒否を無視したことには違いない。圧倒的な力量の差を持って、少しくらいは通用しない。
「……拒むつもりはない。だが、待ったにはすぐに応えてほしい」
「すみません。あんなことを話せたのが、初めてで……いいえ、すみません」
ナマエはセキンガルから手を離して、二歩下がった。
「拒むつもりはないと言っただろ? ナマエ、あなたを孤独にしたくない」
思わず手を差し出す。ナマエはそれで十分ですと、ただ微笑を返した。
「もともと、一人で解決しなければいけないことです。俺の失敗であなたにも荷を背負わせてしまっていることを、忘れるところでした」
「ナマエ、あなたが楽になるなら、その荷を預けられるだけ預けてくれ」
「俺が弱いことを知ってくれている人がいるだけで、いままでとずっと違うんです」
ナマエの笑みはこれで十分なのだと語って、セキンガルに安心を与えようとする。だからこそ、セキンガルは引けなくなった。
手を拒まれたあとで、こちらから抱擁をするのはやりすぎだろうか。疑いすぎて自分が酷く感じる。もしナマエにその意図があったとしても、背負うものに比べたら、応えるべきかもしれないとまで思わされる。
普段のナマエはこんな接触を図る人ではない。不安に苛まれ続ける立場で、それを知るセキンガルだけが支えなのだ。距離が縮まるにつれてそれなりに抵抗を感じたが、S級ヒーローの苦悩と比べれば些細なことだ。
セキンガルの背中を抱いたナマエの右手がジャケットの裾から潜り込んで、ワイシャツ越しに背中を押さえた。力だけでなく、皮膚の硬さや体温まで伝わって、想定外の感覚に身体がこわばる。そこから互いの余白を全くなくしてしまうように抱き寄せるから、ナマエの太い腕に手をついた。距離は少しも開かない。
「ナマエ」
添えられた手がわずかに動いて背中を撫でる。
「ナマエっ」
焦って呼ぶと、ナマエは身体を離して、セキンガルの両肩に手を置いた。
「はい」
誠実なヒーローの顔でセキンガルを見る。両手にかかる重さは軽く、圧を感じない。ただセキンガルを頼りにしているひとりの人間なのだと思い出す。
「いや……」
その仕草に流されかけた。ナマエにセキンガルが予感した意図がなかったとしても、セキンガルの拒否を無視したことには違いない。圧倒的な力量の差を持って、少しくらいは通用しない。
「……拒むつもりはない。だが、待ったにはすぐに応えてほしい」
「すみません。あんなことを話せたのが、初めてで……いいえ、すみません」
ナマエはセキンガルから手を離して、二歩下がった。
「拒むつもりはないと言っただろ? ナマエ、あなたを孤独にしたくない」
思わず手を差し出す。ナマエはそれで十分ですと、ただ微笑を返した。
「もともと、一人で解決しなければいけないことです。俺の失敗であなたにも荷を背負わせてしまっていることを、忘れるところでした」
「ナマエ、あなたが楽になるなら、その荷を預けられるだけ預けてくれ」
「俺が弱いことを知ってくれている人がいるだけで、いままでとずっと違うんです」
ナマエの笑みはこれで十分なのだと語って、セキンガルに安心を与えようとする。だからこそ、セキンガルは引けなくなった。
手を拒まれたあとで、こちらから抱擁をするのはやりすぎだろうか。疑いすぎて自分が酷く感じる。もしナマエにその意図があったとしても、背負うものに比べたら、応えるべきかもしれないとまで思わされる。
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