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ヒーローになる以前、近所の主婦から、病弱な孫に稽古をつけてくれと押し切られて、園児に剣の持ち方を教えた。病があるからあとは親許で身体を鍛えるように助言して、真剣を振るわせたことはない。
それから十年弱、成長するにつれて病と縁遠くなっても、ナマエはよく顔を見せにきた。今では一般の道場で稽古を受けるようになって、体格もらしくなっている。
「ナマエ、この剣でそのりんごを切ってみろ」
「先生の……」
ナマエは戸惑いつつ、差し出された剣を手に取る。初めて会ったときは、先生という発音も未熟だったものだと思い出す。弟子入りを志願されたのではなく、ただナマエの成長を見てみたかった。
正座をしたナマエは刀身を抜き切ると、片手でりんごを掴んで刃を当てがった。
「な」
皮を剥いている。集中した眼差しで口を結んでいるが、重いし、鍔が邪魔で親指を当てられないなと苦戦しているのがわかる。それでも、ぎりぎり危なげは感じさせない程度に御せているところには、やはりセンスが現れているのか?
なんとか皮を剥き終えると、刀を両手で握って、りんごをそっと六つに斬り分ける。そこからまた苦戦しながらひとつずつ芯を削り取って、ふう、と息を吐いた。
「できました先生!」
「ああ……ありがとう」
剥かれた皮はひと繋がりで、差し出された実の曲線もなめらかだ。りんごを一片掴みながら、斬り方次第で弟子にすると伝えてこれを見せられていたらどうしていたかを考えてみると、自分が試されているような気がした。
それから十年弱、成長するにつれて病と縁遠くなっても、ナマエはよく顔を見せにきた。今では一般の道場で稽古を受けるようになって、体格もらしくなっている。
「ナマエ、この剣でそのりんごを切ってみろ」
「先生の……」
ナマエは戸惑いつつ、差し出された剣を手に取る。初めて会ったときは、先生という発音も未熟だったものだと思い出す。弟子入りを志願されたのではなく、ただナマエの成長を見てみたかった。
正座をしたナマエは刀身を抜き切ると、片手でりんごを掴んで刃を当てがった。
「な」
皮を剥いている。集中した眼差しで口を結んでいるが、重いし、鍔が邪魔で親指を当てられないなと苦戦しているのがわかる。それでも、ぎりぎり危なげは感じさせない程度に御せているところには、やはりセンスが現れているのか?
なんとか皮を剥き終えると、刀を両手で握って、りんごをそっと六つに斬り分ける。そこからまた苦戦しながらひとつずつ芯を削り取って、ふう、と息を吐いた。
「できました先生!」
「ああ……ありがとう」
剥かれた皮はひと繋がりで、差し出された実の曲線もなめらかだ。りんごを一片掴みながら、斬り方次第で弟子にすると伝えてこれを見せられていたらどうしていたかを考えてみると、自分が試されているような気がした。
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