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風の噂で、ナマエが少し厄介な仕事を引き受けたと聞いた。手を貸したかったが、ナマエは仕事への干渉をきらうので、護符を押しつけて待つことになった。
互いの仕事に関わることを避けるのは、読み合いを控えてただ食事を楽しむためだ。それが最後になり兼ねないのならそんな配慮は不要だろうと言いたいが、ナマエの意思を尊重したい思いもある。そうして生死も定かでないまま永遠の別れとなる可能性もあるが、ナマエはそういう別れ方を望んでいる節があった。それだけは絶対に思いどおりにしてやらない。
ナマエがしばしば仕事を請け負う組織を調べてみたが、今回はそのときではないと思えた。ナマエが仕事をすると思われる日に偶然近くを通りがかったが、想定内のことが起こった。
結局、ナマエは敵の得物が掠めたところを数針縫う怪我を負ったというのをナマエの事務所で聞いた。
「ナマエさんが怪我をするくらいだから、余程の仕事だったんですね。大事がなくてなによりです」
「やめてください、しょうもないミスをしたんです……まあ、この程度だったのは、これのおかげかもしれません」
ナマエは事務机の隅に置いていた血塗れの護符をぴらりと持ち上げた。
「しまう場所が悪くて……すみません」
「とんでもない……いくらでもお渡ししますから、またいらしてくださいよ」
護符だけでなく手だっていくらでも貸しようがあるが、それを言うと来なくなるんだろう。ひとつ腹を決めて口を開く。
「ところでナマエさん、ロドス製薬に興味ありませんか?」
「製薬会社ですか? 龍門で活躍していたあの」
「ええ。適していると判断されれば、あの規模の戦いに参加することもあるかもしれません。私も相談役ばかりではいられないこともありますが、決して無理矢理じゃありません。現場が危険なのは今と変わらないところもあるでしょうけど、体制がしっかりしているんですよ」
「そうでしたか……ふむ」
「ナマエさん、もう単刀直入に言います。どこまでも追っかけてきて口を挟まれるのがいやだと言うなら……ロドスと契約してください。それなら少しは安心できます」
「現場で見た尻尾は見間違いだと思ってましたよ」
ナマエは合点がいったと笑う。
「俺は、あなたを失いたくないんです」
ナマエはきょとんとした顔でリーを見る。それからじわりと口角が上がって、眉尻が下がっていく。初めて見る顔だ。
「情熱的ですね」
ナマエは表情を繕うが、顔の火照りまでは誤魔化せない。
「ダメだ」
ナマエは、はにかみながら前髪を掻き上げる。
「ちょっと……照れすぎじゃないですか? こっちまで熱くなってきた」
「真に受けてしまう相手なんて、そういないんですよ」
「それは光栄です。それで、どうでしょう。口添えなら任せてくださいよ」
「友人にそこまで頼まれたら、期待に沿わないわけにはいきませんね」
そう言ってナマエは微笑む。あの反応でなぜ友人と強調するのかと少し気落ちするが、任せてほしいと請け負った。
互いの仕事に関わることを避けるのは、読み合いを控えてただ食事を楽しむためだ。それが最後になり兼ねないのならそんな配慮は不要だろうと言いたいが、ナマエの意思を尊重したい思いもある。そうして生死も定かでないまま永遠の別れとなる可能性もあるが、ナマエはそういう別れ方を望んでいる節があった。それだけは絶対に思いどおりにしてやらない。
ナマエがしばしば仕事を請け負う組織を調べてみたが、今回はそのときではないと思えた。ナマエが仕事をすると思われる日に偶然近くを通りがかったが、想定内のことが起こった。
結局、ナマエは敵の得物が掠めたところを数針縫う怪我を負ったというのをナマエの事務所で聞いた。
「ナマエさんが怪我をするくらいだから、余程の仕事だったんですね。大事がなくてなによりです」
「やめてください、しょうもないミスをしたんです……まあ、この程度だったのは、これのおかげかもしれません」
ナマエは事務机の隅に置いていた血塗れの護符をぴらりと持ち上げた。
「しまう場所が悪くて……すみません」
「とんでもない……いくらでもお渡ししますから、またいらしてくださいよ」
護符だけでなく手だっていくらでも貸しようがあるが、それを言うと来なくなるんだろう。ひとつ腹を決めて口を開く。
「ところでナマエさん、ロドス製薬に興味ありませんか?」
「製薬会社ですか? 龍門で活躍していたあの」
「ええ。適していると判断されれば、あの規模の戦いに参加することもあるかもしれません。私も相談役ばかりではいられないこともありますが、決して無理矢理じゃありません。現場が危険なのは今と変わらないところもあるでしょうけど、体制がしっかりしているんですよ」
「そうでしたか……ふむ」
「ナマエさん、もう単刀直入に言います。どこまでも追っかけてきて口を挟まれるのがいやだと言うなら……ロドスと契約してください。それなら少しは安心できます」
「現場で見た尻尾は見間違いだと思ってましたよ」
ナマエは合点がいったと笑う。
「俺は、あなたを失いたくないんです」
ナマエはきょとんとした顔でリーを見る。それからじわりと口角が上がって、眉尻が下がっていく。初めて見る顔だ。
「情熱的ですね」
ナマエは表情を繕うが、顔の火照りまでは誤魔化せない。
「ダメだ」
ナマエは、はにかみながら前髪を掻き上げる。
「ちょっと……照れすぎじゃないですか? こっちまで熱くなってきた」
「真に受けてしまう相手なんて、そういないんですよ」
「それは光栄です。それで、どうでしょう。口添えなら任せてくださいよ」
「友人にそこまで頼まれたら、期待に沿わないわけにはいきませんね」
そう言ってナマエは微笑む。あの反応でなぜ友人と強調するのかと少し気落ちするが、任せてほしいと請け負った。