小説
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カウンター席で酒を一口飲んで、今日は回るなと言っていたナマエが、気づいたら前を向いたまま目を閉じていた。いつもはまだ飲むし、ついさっきまで顔色ひとつ変えずに話していたから止め損ねた。
「ナマエ、寝るなら二階で寝ろ」
「うーん……二階、お客さんに貸してるんじゃなかったっけ」
「しばらく、みんなで県外に行くそうだ」
「あ、そうなんだ……じゃあ、お借りしようかな」
「そうしろ……おい、ここで寝るな」
許可を得たと言わんばかりに頬杖をついて目を瞑るナマエを起こして、二階に上がるのを見送った。
その後、二時間ほどで定時を迎えて、様子を見に部屋を訪ねた。電気が点いている。ドアを叩くと返事が聞こえて、一言断って中に入った。ナマエは布団の上でスマホを片手に胡座をかいている。
「お疲れさまです。上がりですか?」
「ああ。どうする、お前も帰るか?」
「はい」
ナマエは財布とスマホをポケットにしまって身支度を終えた。
「シーツもうちで洗わせてください」
布団からシーツを剥ぎ取って、適当に畳んでいる。
「いいから、置いてな」
「よだれ垂らしたかもしれないんで」
じゃあ持って帰れと笑った。
シーツを鞄のように小脇に抱えるナマエと外に出て、店に鍵を掛けた。辺りも営業時間を過ぎていて、星と街灯しか頼りがない静かな空間は、野外なのにナマエとの距離を近づける。
ナマエが静けさに気遣って小声で話した。同じほどの声量で返す。
「マスター、うちに泊まりませんか? 風呂沸かしますから」
「お前のベッド、柔らかすぎて合わないんだよ」
「言ってましたよね。今夜は寝かせませんから」
「余計に酷じゃねぇか」
「マットレス、買い換えたんです」
「は? わざわざ?」
「言われてから気になって。ずっと使ってたし」
「必死だな」
満更でもない仕草に思わず笑うと、ナマエは気恥ずかしそうに微笑んで、闇夜に紛れて手を握ってきた。まだ酒が残るのか、ずいぶん暖かい。
「じゃあ、見にいってみるか」
「やった」
「でも、マジで疲れてるから寝る。酔っ払って寝てたお前と違って、今まで仕事してたんだからな」
「は、はい……来てくれるならいいです」
ナマエは楽しげにタクシーまで手を引いた。
ナマエはどこで覚えたのか、頭を守るように車の縁に手を当てて乗車を補助するから、ちょっと昔を思い出す。
ナマエの部屋でゆっくりと風呂に浸かって、交代にナマエが風呂に入っている間にベッドに入った。二人で寝てもゆとりを感じられる大きさはそのまま、柔らかさが控えめになって、以前のよりもしっくりくる。
風呂を終えたナマエが部屋に来た。
「失礼します」
「どうぞ」
ナマエが横に並ぶ。前髪が降りて、風呂から出たばかりで赤く熱っているから、普段より若く見える。
「寝心地どうですか?」
「いいな。これ」
「よかった! 俺もこっちの方があってました――ねえ、お店の二階の押入れの河童、どこから持ってきたんですか?」
「あれか、どうだったかな……」
「忘れられなさそうだけど」
「ずっと入れっぱなしだからな」
静かに談笑してから、穏やかな微睡みに誘われるまま、ナマエと挨拶を交わして目を閉じた。
「ナマエ、寝るなら二階で寝ろ」
「うーん……二階、お客さんに貸してるんじゃなかったっけ」
「しばらく、みんなで県外に行くそうだ」
「あ、そうなんだ……じゃあ、お借りしようかな」
「そうしろ……おい、ここで寝るな」
許可を得たと言わんばかりに頬杖をついて目を瞑るナマエを起こして、二階に上がるのを見送った。
その後、二時間ほどで定時を迎えて、様子を見に部屋を訪ねた。電気が点いている。ドアを叩くと返事が聞こえて、一言断って中に入った。ナマエは布団の上でスマホを片手に胡座をかいている。
「お疲れさまです。上がりですか?」
「ああ。どうする、お前も帰るか?」
「はい」
ナマエは財布とスマホをポケットにしまって身支度を終えた。
「シーツもうちで洗わせてください」
布団からシーツを剥ぎ取って、適当に畳んでいる。
「いいから、置いてな」
「よだれ垂らしたかもしれないんで」
じゃあ持って帰れと笑った。
シーツを鞄のように小脇に抱えるナマエと外に出て、店に鍵を掛けた。辺りも営業時間を過ぎていて、星と街灯しか頼りがない静かな空間は、野外なのにナマエとの距離を近づける。
ナマエが静けさに気遣って小声で話した。同じほどの声量で返す。
「マスター、うちに泊まりませんか? 風呂沸かしますから」
「お前のベッド、柔らかすぎて合わないんだよ」
「言ってましたよね。今夜は寝かせませんから」
「余計に酷じゃねぇか」
「マットレス、買い換えたんです」
「は? わざわざ?」
「言われてから気になって。ずっと使ってたし」
「必死だな」
満更でもない仕草に思わず笑うと、ナマエは気恥ずかしそうに微笑んで、闇夜に紛れて手を握ってきた。まだ酒が残るのか、ずいぶん暖かい。
「じゃあ、見にいってみるか」
「やった」
「でも、マジで疲れてるから寝る。酔っ払って寝てたお前と違って、今まで仕事してたんだからな」
「は、はい……来てくれるならいいです」
ナマエは楽しげにタクシーまで手を引いた。
ナマエはどこで覚えたのか、頭を守るように車の縁に手を当てて乗車を補助するから、ちょっと昔を思い出す。
ナマエの部屋でゆっくりと風呂に浸かって、交代にナマエが風呂に入っている間にベッドに入った。二人で寝てもゆとりを感じられる大きさはそのまま、柔らかさが控えめになって、以前のよりもしっくりくる。
風呂を終えたナマエが部屋に来た。
「失礼します」
「どうぞ」
ナマエが横に並ぶ。前髪が降りて、風呂から出たばかりで赤く熱っているから、普段より若く見える。
「寝心地どうですか?」
「いいな。これ」
「よかった! 俺もこっちの方があってました――ねえ、お店の二階の押入れの河童、どこから持ってきたんですか?」
「あれか、どうだったかな……」
「忘れられなさそうだけど」
「ずっと入れっぱなしだからな」
静かに談笑してから、穏やかな微睡みに誘われるまま、ナマエと挨拶を交わして目を閉じた。
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