龍
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荒川組はブリーチジャパンという活動団体のトップと懇意な間柄らしく、沢城の命でそこに潜入することになった。トップの青木はナマエがどこの誰だか知っているが、他の面子に悟られてはいけない。
ナマエにブリーチジャパンの信念は少しも刺さらないが、荒川や沢城へは忠実だから真面目な顔で参加している。ナマエの隣で漂白せよと真っ当に言い切れる青木にも関心が芽生えていた。
青木が人柄を褒められるとき、難なく繕えているのにむしゃくしゃしているというか、その場を離れたあとでナマエには口直しのように雑な態度になるのも、それだけ親しくなったのだと思う。ナマエが荒川組員だからこその信頼かもしれないし、もしかすると舐められているのかもしれないが、正確なことはどうでもいい。ナマエは親しくなった気がしている。
ブリーチジャパンの活動が大きくなると、幹部ではないが青木に近いナマエの立場に疑問を持つ者が出た。ナマエの学歴が気になるらしい。ナマエは大学を卒業したと偽っているがそれでは足りなかった。幹部はみな聞いたことがある名門の出だ。青木と友人はハーバードだとか。ナマエは日本人も行けるのかよと思う程度の知識しかなかった。
青木がナマエの献身を挙げて大事なのは同じ志を持っていることだとそれらしいことを語ってその場を収めた。ナマエの出自が疑われることは青木にもナマエにもまずい傾向だが、ただ学歴を見下しているだけなら問題にならない。
事務所の一室で二人きりになってから青木がナマエに不満を表した。
「言い返せよ」
「波風立てられません」
「情けねぇな!」
育ちがいい努力家には耐えられないのだろうかと思った。ナマエのことなのに。そもそもナマエにはブリーチジャパンの活動がごっこ遊びにしか見えていない。ナマエはただ荒川組を裏切りたくない思いでやっているから腹も立たなかった。
「あの人たちと違って、育ちが悪いってのも事実ですから」
ナマエはここで青木の名前を出さないようにしながら、なんとか宥めようとした。しかし青木はナマエの正面に立って、腹に拳を入れた。咄嗟に腹筋に力を入れたが、なかなか重い。手を出されるのは初めてだ。
「ぐ……」
「じゃあせめて、お前も俺たちと同じ場所に立ってる自覚を持てよ」
「……どういう意味ですか?」
「とにかくこの組織にいればいいんだって態度を改めてみろって言ってるんだ。まんま利権屋に見えてんだよ」
「……すみません」
それは一大事だった。いま考えてみれば、罵られているのに一歩引いた態度でいることは間違いだったかもしれない。ナマエはしおらしくなって頭を下げた。
そうして二人は少し離れて、それぞれ手近な椅子に腰掛けた。
青木の怒りの出所は繋がりを探られかねないことではない。青木の普段の態度に鑑みて、とにかく出自に言及するのがいけないのかもしれない。人を出自で量るなという思想かトラウマか。家が立派だと親の干渉が酷いケースもあるだろう。他人に尊敬されないナマエの実親では例えられないが、流石荒川組だと褒められたらナマエは嬉しい。でも荒川や沢城がそれこそ実親のような人柄だったら、ナマエの功績を見て流石荒川組と言われるのは不服かもしれない。荒川組に拾われたおかげでそれを為せたとしてもだ。そういうことかもしれない。
ナマエは腹をさすった。青木が鍛えていることは知っているしたまにトレーニングにもつきあうが、あの拳は喧嘩に慣れていると思う。
「……悪かった」
青木がナマエに顔を向けた。
「いえ、俺の態度のせいで……あらためます」
ナマエは腹を撫でていた手を止める。
「お前は……漂白だなんて馬鹿みたいだと思いながらアイツらに全く悟らせないんだから、よく繕ってるよ」
本心を言ったことはないが、青木の前では態度に出ていたのか、それとも漂白される側のナマエの出自で同調するのは愚かだからか。
「フフ、フ」
「え?」
「俺のこと……よく理解してくださってますね」
「……フ、フフフ」
なにが楽しいのか、事実はどうあれ、なんだか変に通じ合ったような気持ちになって二人で笑った。
ナマエにブリーチジャパンの信念は少しも刺さらないが、荒川や沢城へは忠実だから真面目な顔で参加している。ナマエの隣で漂白せよと真っ当に言い切れる青木にも関心が芽生えていた。
青木が人柄を褒められるとき、難なく繕えているのにむしゃくしゃしているというか、その場を離れたあとでナマエには口直しのように雑な態度になるのも、それだけ親しくなったのだと思う。ナマエが荒川組員だからこその信頼かもしれないし、もしかすると舐められているのかもしれないが、正確なことはどうでもいい。ナマエは親しくなった気がしている。
ブリーチジャパンの活動が大きくなると、幹部ではないが青木に近いナマエの立場に疑問を持つ者が出た。ナマエの学歴が気になるらしい。ナマエは大学を卒業したと偽っているがそれでは足りなかった。幹部はみな聞いたことがある名門の出だ。青木と友人はハーバードだとか。ナマエは日本人も行けるのかよと思う程度の知識しかなかった。
青木がナマエの献身を挙げて大事なのは同じ志を持っていることだとそれらしいことを語ってその場を収めた。ナマエの出自が疑われることは青木にもナマエにもまずい傾向だが、ただ学歴を見下しているだけなら問題にならない。
事務所の一室で二人きりになってから青木がナマエに不満を表した。
「言い返せよ」
「波風立てられません」
「情けねぇな!」
育ちがいい努力家には耐えられないのだろうかと思った。ナマエのことなのに。そもそもナマエにはブリーチジャパンの活動がごっこ遊びにしか見えていない。ナマエはただ荒川組を裏切りたくない思いでやっているから腹も立たなかった。
「あの人たちと違って、育ちが悪いってのも事実ですから」
ナマエはここで青木の名前を出さないようにしながら、なんとか宥めようとした。しかし青木はナマエの正面に立って、腹に拳を入れた。咄嗟に腹筋に力を入れたが、なかなか重い。手を出されるのは初めてだ。
「ぐ……」
「じゃあせめて、お前も俺たちと同じ場所に立ってる自覚を持てよ」
「……どういう意味ですか?」
「とにかくこの組織にいればいいんだって態度を改めてみろって言ってるんだ。まんま利権屋に見えてんだよ」
「……すみません」
それは一大事だった。いま考えてみれば、罵られているのに一歩引いた態度でいることは間違いだったかもしれない。ナマエはしおらしくなって頭を下げた。
そうして二人は少し離れて、それぞれ手近な椅子に腰掛けた。
青木の怒りの出所は繋がりを探られかねないことではない。青木の普段の態度に鑑みて、とにかく出自に言及するのがいけないのかもしれない。人を出自で量るなという思想かトラウマか。家が立派だと親の干渉が酷いケースもあるだろう。他人に尊敬されないナマエの実親では例えられないが、流石荒川組だと褒められたらナマエは嬉しい。でも荒川や沢城がそれこそ実親のような人柄だったら、ナマエの功績を見て流石荒川組と言われるのは不服かもしれない。荒川組に拾われたおかげでそれを為せたとしてもだ。そういうことかもしれない。
ナマエは腹をさすった。青木が鍛えていることは知っているしたまにトレーニングにもつきあうが、あの拳は喧嘩に慣れていると思う。
「……悪かった」
青木がナマエに顔を向けた。
「いえ、俺の態度のせいで……あらためます」
ナマエは腹を撫でていた手を止める。
「お前は……漂白だなんて馬鹿みたいだと思いながらアイツらに全く悟らせないんだから、よく繕ってるよ」
本心を言ったことはないが、青木の前では態度に出ていたのか、それとも漂白される側のナマエの出自で同調するのは愚かだからか。
「フフ、フ」
「え?」
「俺のこと……よく理解してくださってますね」
「……フ、フフフ」
なにが楽しいのか、事実はどうあれ、なんだか変に通じ合ったような気持ちになって二人で笑った。
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