龍
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近江連合解散宣言の後、鶴野とナマエは府内のホテルの一室にいた。ナマエはソファに座って待ち構えている鶴野を睨む。
「このッ……ボケが!」
ナマエは大声で喚いて、振り上げた拳を腿の横に下ろした。怒りだけでここに来たが、鶴野と向き合うと大事をやり遂げるだけの覚悟を想像せずにはおられず力が抜けていく。
「全部説明する」
「冷静に言うな」
ナマエはそう怒鳴って鶴野の隣に座った。一呼吸入れて口を開く。
「百歩譲って、解散はええ」
「そこ譲ってくれんなら」
「黙っとれ。渡瀬のカシラの言い分、納得するところもあったわ。何で言わんのや。死ぬまで許さんからな。解散なんてでっかいことに、自分の裏切りがひっついてるんやからな!」
「言うてたら、お前は暴れてたやろ」
「暴れんわ、そんとき聞いてたらな!」
「そうやったら、俺らの読み違いや……」
鶴野は何か言いたげに口を閉じた。
「……なんやねん、その沈黙。謝る間ちゃうの?」
「お前は暴れてたやろうが。そんでお前のとこの連中にも気づかれて、大っぴらになってたはずや。親父の言い分を飲めたんは、もう解散したからやろ」
「……」
鶴野は忖度しなかった。ナマエは口を結んで眉を吊り上げる。反論できない。
その隙に、鶴野は大道寺のエージェントに助力を求めてから近江連合本部へ向かうまでを簡潔に話した。
渡瀬と鶴野が味方を集めた本部に辿り着くまでに、すでにナマエと同じ怒りを持って攻撃されていたと知って、ナマエの怒りは急激に冷めた。鶴野が無事でよかったと思う気持ちを自覚して口にも顔にも出さないように努めるが、どこか心細さを訴えるような表情になっていて、鶴野はナマエの思いを察する。
「大道寺かい……で、鶴野、お前はこれからどうするんや」
「親父と警備会社をやる予定や」
「……もうほんまに、ずっと考えてたんやな」
ナマエはすっかり熱をなくして、もうしらけている。
人生の大半を費やした近江連合、そして鶴野との信頼関係が価値をなくした気がした。
「なんも言わんやんけ」
ナマエにとって、決別の挨拶のような意味を含めた台詞だった。
「あかん、やっぱり腹立つわ」
鶴野が表情を険しくしてナマエを睨んだ。
「え?」
「テメェが短絡的なくせに妙なとこで勘がええからやろうが! 七まで言うてもアホみたいな顔しとると思ったら一から十に気づいたりよォ、せやから一も言われへんかったんやろうが!」
「は、あぇ」
この流れで怒鳴られるとは思わなかったナマエは、褒められたような貶されたような内容を咀嚼できず、目を丸くしてどこか幼げな顔になる。
「お前だけは……その場で暴れるかもしれんけど、話せばわかるやろうって親父も言うてたわ。問題はアホほどわかりやすいことや! そやけど今更変えられへんことはわかっとる。俺だってお前に言うときたかったわボケ!」
「だ、誰がボケ……」
ナマエは勢いに流されて、鶴野がナマエを思いやっていたところだけを受け入れている。ナマエはそうして過ぎたことを飲み込む。誰に対してもそうというわけではない。
ナマエはため息を吐いて、静かに眉尻を下ろした。力を抜いてソファにべったりと背中を預ける。鶴野はそうしてぼうっと天井を見上げるナマエの口元に煙草を差し出して、自分も一本咥えて火をつけた。
「ナマエ、悪かったな」
ナマエは天井を見たまま煙を吐き出して鶴野を見なかったが、じりじりと身体を傾けて頭を寄せた。鶴野はいろんな思いを振り返ってナマエの肩を抱き止めた。
「このッ……ボケが!」
ナマエは大声で喚いて、振り上げた拳を腿の横に下ろした。怒りだけでここに来たが、鶴野と向き合うと大事をやり遂げるだけの覚悟を想像せずにはおられず力が抜けていく。
「全部説明する」
「冷静に言うな」
ナマエはそう怒鳴って鶴野の隣に座った。一呼吸入れて口を開く。
「百歩譲って、解散はええ」
「そこ譲ってくれんなら」
「黙っとれ。渡瀬のカシラの言い分、納得するところもあったわ。何で言わんのや。死ぬまで許さんからな。解散なんてでっかいことに、自分の裏切りがひっついてるんやからな!」
「言うてたら、お前は暴れてたやろ」
「暴れんわ、そんとき聞いてたらな!」
「そうやったら、俺らの読み違いや……」
鶴野は何か言いたげに口を閉じた。
「……なんやねん、その沈黙。謝る間ちゃうの?」
「お前は暴れてたやろうが。そんでお前のとこの連中にも気づかれて、大っぴらになってたはずや。親父の言い分を飲めたんは、もう解散したからやろ」
「……」
鶴野は忖度しなかった。ナマエは口を結んで眉を吊り上げる。反論できない。
その隙に、鶴野は大道寺のエージェントに助力を求めてから近江連合本部へ向かうまでを簡潔に話した。
渡瀬と鶴野が味方を集めた本部に辿り着くまでに、すでにナマエと同じ怒りを持って攻撃されていたと知って、ナマエの怒りは急激に冷めた。鶴野が無事でよかったと思う気持ちを自覚して口にも顔にも出さないように努めるが、どこか心細さを訴えるような表情になっていて、鶴野はナマエの思いを察する。
「大道寺かい……で、鶴野、お前はこれからどうするんや」
「親父と警備会社をやる予定や」
「……もうほんまに、ずっと考えてたんやな」
ナマエはすっかり熱をなくして、もうしらけている。
人生の大半を費やした近江連合、そして鶴野との信頼関係が価値をなくした気がした。
「なんも言わんやんけ」
ナマエにとって、決別の挨拶のような意味を含めた台詞だった。
「あかん、やっぱり腹立つわ」
鶴野が表情を険しくしてナマエを睨んだ。
「え?」
「テメェが短絡的なくせに妙なとこで勘がええからやろうが! 七まで言うてもアホみたいな顔しとると思ったら一から十に気づいたりよォ、せやから一も言われへんかったんやろうが!」
「は、あぇ」
この流れで怒鳴られるとは思わなかったナマエは、褒められたような貶されたような内容を咀嚼できず、目を丸くしてどこか幼げな顔になる。
「お前だけは……その場で暴れるかもしれんけど、話せばわかるやろうって親父も言うてたわ。問題はアホほどわかりやすいことや! そやけど今更変えられへんことはわかっとる。俺だってお前に言うときたかったわボケ!」
「だ、誰がボケ……」
ナマエは勢いに流されて、鶴野がナマエを思いやっていたところだけを受け入れている。ナマエはそうして過ぎたことを飲み込む。誰に対してもそうというわけではない。
ナマエはため息を吐いて、静かに眉尻を下ろした。力を抜いてソファにべったりと背中を預ける。鶴野はそうしてぼうっと天井を見上げるナマエの口元に煙草を差し出して、自分も一本咥えて火をつけた。
「ナマエ、悪かったな」
ナマエは天井を見たまま煙を吐き出して鶴野を見なかったが、じりじりと身体を傾けて頭を寄せた。鶴野はいろんな思いを振り返ってナマエの肩を抱き止めた。
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