龍
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居酒屋を出てから、ナマエは腰に手を当てて夜空を見上げた。そうして冬の冷たい風にさらされていると、頭が冴えていく気がする。
「カシラ、これから少し、つきあっていただけませんか?」
ナマエは気を引き締めて高部を見た。浮かれてばかりおらず、言っておかなければいけないことがある。
高部はナマエの真剣な顔に何かあるのを察する。さっきの盛り上がりと差があるからどこか滑稽に感じるものの、少し雰囲気に引っ張られる。
好きな人と結ばれたばかりなのはナマエも同じだ。そこでこの顔で切り出されること。子供がいるだけならまだいいが、関係が宙に浮いている母親なんかがいたら簡単には許せない。あくまで状況から考えうることで、そんな不誠実な男とは思っていない。
「ああ、いいぞ」
「ありがとうございます。そこの事務所でいいでしょうか? 鍵はありますから」
飲み屋でもカフェでもないとなると、いよいよ真剣になる。
ナマエが管理している事務所に着いた。深夜も近い時間にあらためて電気をつけて、暖房をつけたばかりでまだ冷えるなか、二人きりで向かい合ってソファに腰を下ろすと、 この状況でもナマエの仕草を意識する。
「俺から迫っていながら……予め、言っておくべきだった関係があります」
「あ?」
不誠実な男なのか? それ以外にない言いように、怒りが態度に出る。ナマエは一瞬だけ怯んだように見えたが、すぐに持ち直した。
「戸塚さんの話です」
「戸塚? 兄貴がどうした」
また気持ちが切り替わる。高部と戸塚には浅からぬ因縁がある。
「以前……体の関係がありました」
高部は険しい表情で言葉を詰まらせた。
ナマエは高部の様子を窺いつつ、きっかけから終わりまでを打ち明けた。
「今、戸塚さんが考えているシノギが、まだ、構想の段階だそうですが――それを手伝わないかと誘っていただいたんですが、今のシノギがありますから、お断りしたんです。それで関係は終わりました」
ナマエは戸塚よりも高部に任されている仕事を選んだ。戸塚がそれを許せず終わりに至るのは想像できる。
ナマエは行為に興味があって、望んで同意したと説明した。裏切られたような気分だが、高部に対して不誠実な部分はない。ナマエは高部より長い戸塚に逆らえないし、聞きたくなかったが、予め断っておくのは誠実ですらあるかもしれない。
戸塚が仕事を振っていなければ続いていたのかは、考えても仕方がない。とにかく関係が終わってから、酔ったナマエが色恋に不満を漏らしているのを適当に肯定したのが今日のきっかけだ。
「そうか……兄貴は鋭いところもあるから、聞いておくべきだったかもしれねぇな」
「……」
「でも、俺の気持ちは変わらねぇ。俺が応えると思わなかったって言うんなら、さっきの店のことは忘れていい。もし兄貴がちょっかいかけてくるなら、標的になるのはお前だからな。お前はどうしたい?」
ナマエは泣き笑いのような顔になった。
「俺は、許していただけるなら、高部さんとおつきあいしたいと思っています」
「わかった。その気なら、俺が守ってやる」
ナマエは眉を八の字にしたまま、もっと笑みが多い顔になった。
「お隣行ってもいいですか?」
笑って受け入れた。ナマエが隣に座って、照れ笑いを浮かべる。
「カシラ……ありがたいですが、自分の始末は自分でつけます」
「もし限度超えたら絶対に言えよ。わかったな」
「はい」
言わないだろうから支えてやると、高部は決意した。
「カシラ、これから少し、つきあっていただけませんか?」
ナマエは気を引き締めて高部を見た。浮かれてばかりおらず、言っておかなければいけないことがある。
高部はナマエの真剣な顔に何かあるのを察する。さっきの盛り上がりと差があるからどこか滑稽に感じるものの、少し雰囲気に引っ張られる。
好きな人と結ばれたばかりなのはナマエも同じだ。そこでこの顔で切り出されること。子供がいるだけならまだいいが、関係が宙に浮いている母親なんかがいたら簡単には許せない。あくまで状況から考えうることで、そんな不誠実な男とは思っていない。
「ああ、いいぞ」
「ありがとうございます。そこの事務所でいいでしょうか? 鍵はありますから」
飲み屋でもカフェでもないとなると、いよいよ真剣になる。
ナマエが管理している事務所に着いた。深夜も近い時間にあらためて電気をつけて、暖房をつけたばかりでまだ冷えるなか、二人きりで向かい合ってソファに腰を下ろすと、 この状況でもナマエの仕草を意識する。
「俺から迫っていながら……予め、言っておくべきだった関係があります」
「あ?」
不誠実な男なのか? それ以外にない言いように、怒りが態度に出る。ナマエは一瞬だけ怯んだように見えたが、すぐに持ち直した。
「戸塚さんの話です」
「戸塚? 兄貴がどうした」
また気持ちが切り替わる。高部と戸塚には浅からぬ因縁がある。
「以前……体の関係がありました」
高部は険しい表情で言葉を詰まらせた。
ナマエは高部の様子を窺いつつ、きっかけから終わりまでを打ち明けた。
「今、戸塚さんが考えているシノギが、まだ、構想の段階だそうですが――それを手伝わないかと誘っていただいたんですが、今のシノギがありますから、お断りしたんです。それで関係は終わりました」
ナマエは戸塚よりも高部に任されている仕事を選んだ。戸塚がそれを許せず終わりに至るのは想像できる。
ナマエは行為に興味があって、望んで同意したと説明した。裏切られたような気分だが、高部に対して不誠実な部分はない。ナマエは高部より長い戸塚に逆らえないし、聞きたくなかったが、予め断っておくのは誠実ですらあるかもしれない。
戸塚が仕事を振っていなければ続いていたのかは、考えても仕方がない。とにかく関係が終わってから、酔ったナマエが色恋に不満を漏らしているのを適当に肯定したのが今日のきっかけだ。
「そうか……兄貴は鋭いところもあるから、聞いておくべきだったかもしれねぇな」
「……」
「でも、俺の気持ちは変わらねぇ。俺が応えると思わなかったって言うんなら、さっきの店のことは忘れていい。もし兄貴がちょっかいかけてくるなら、標的になるのはお前だからな。お前はどうしたい?」
ナマエは泣き笑いのような顔になった。
「俺は、許していただけるなら、高部さんとおつきあいしたいと思っています」
「わかった。その気なら、俺が守ってやる」
ナマエは眉を八の字にしたまま、もっと笑みが多い顔になった。
「お隣行ってもいいですか?」
笑って受け入れた。ナマエが隣に座って、照れ笑いを浮かべる。
「カシラ……ありがたいですが、自分の始末は自分でつけます」
「もし限度超えたら絶対に言えよ。わかったな」
「はい」
言わないだろうから支えてやると、高部は決意した。
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