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二章 コランバインのバラード【前半】



勢いをつけてダイブする。ドスっという音がして、体に衝撃が来る。見た目のわりに固いベッドだ。いつも寝ていたベッドとは違う感触。そんなベッドに横たわりながら、なんとなく天井を見つめる。自分の家の天井とは明らかに違う素材でできている。自宅が恋しい。自分の入学を祝って送り出してくれた家族が恋しい。近所の公園に住み着いていた野良猫の親子さえ恋しくなってくる。
こんな生活を強いられてから、心が休まるときは一度たりとも来ないしそこから逃げることも叶わない。脱出の手掛かりがないか探索はしているが、いまだ重要な情報が入ってこない。そんなこんなことをしているうちに人が二人も消えてしまった。

早く家に帰れないかな。もう希望ヶ峰学園に入学なんてできなくていいから。

明日起きたら、自分の家にいて、隣には家族がいて。そんなことになってないかな。
こんなマイナスな感情になるのは自分らしくないな。
きっと疲れているんだ。早く寝てしまおう。

「おはよう!朝の7時だよ!夜時間は終了だよー!……ブツッ」

また朝が来た。とりあえず食堂に行こう。

きっと今日はいいことがある!昨日のじめじめとした思考は排除してしまおう。
今日も元気に行こう。誰かが明るくないと士気も下がる。

ひとまず何かお腹に入れてから行動開始だ。

「白石!おはよう!」

「……おはよう。朝から元気だね、大原くんは」

そう返事をした後、白石はあくびする。
昨夜遅くまで起きていたのだろうか。

「今から食堂に行くんだろ?オレも一緒に行ってもいいか?」

「そうだけど……好きにしたら?」

すこしでも皆と関わって、信頼を得られるように動くことに決めた。
そうすれば、何か障害ができても話を聞いて解決することができるかもしれない。

「ところでお前、昨日寝てないの?」

「……いいネタが思いついたから。いつもよりは遅く寝たかも」

「こんな状況でも書けるってすごいな!さすが小説家!」

「……こんな状況だから、非日常だから逆に思いつくこともあると思うけど」

「確かに!どんな内容の話なんだ?」

「興味を持ってくれるのはうれしいけど……。完成する前に教えるなんてしないから」

「うっ、そういうもんかぁ……」

少し肩を落とすと、白石が少し笑って、

「……私の作品は商品だから。企業秘密……ていうとこだね」

「完成したら読ませてくれよ」

「……書店に並んだら、ぜひ手に取って」

「ああ!そうするよ!友達の本とか買う以外ないだろ!」

オレがそう言うと、白石は怪訝な顔をして、

「……私とあなたってちゃんと話したの今が初めてな気がするんだけど」

「そうだっけ?でも仲が悪いわけでもないし、友達じゃないか?」

白石はオレの言葉を聞いて驚いた顔をした。それほど嬉しかったのか!

「……大原くんの頭の中では、もしかしてだけど……話したことある人は全員友達っていう謎理論が展開されて……いや、いいや」

「友達はいたほうが心強いだろ!それにオレは白石とも仲良くいたいし!」

「……」

「あ、そうだ!今日、よかったら一緒に探索しないか?」

この生活での周りの人たちの情報もついでに得ておこう。
いうならば『クラスメイト』である彼らの情報を。

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