二章 コランバインのバラード【前半】
「うぷぷぷ、このまま仲良しごっこが続いて殺人なんて起きないかと思ってたけど、杞憂だったようだね!」
「とりあえず一安心ですよ、学園長。やっと、最高のエンターテイメントが始まるんです!」
ニタニタと、白と黒の格好をした二人は笑う。
「それでも、逆に絆が固まって事件が起きないという可能性も……。」
「うぷぷぷッ!そう思ってもう準備はしているんだよッ!」
うぷぷぷ……あははは……楽しみですね……
もう大勢の生徒のいない裁判場だからか、二人の声はよく響いた。
————————————————————
明石の起こした、最悪の事件から2日くらい経った。
あの裁判の後、念の為井戸へ行く。
すると、あろうことか伊織の遺体は無くなっていた。
どうやらオレ達には彼の死を弔うことさえ許されないらしい。
流石に、事件の翌日は全員まともに顔を合わすことはなかった。
しかし、2日経てば気持ちの整理がついたのか朝食の時間にはほとんど全員が言葉を交わすようになっていた。
「うん、鑑の作るご飯はやっぱ最高だよ!鑑って、流石執事ってだけあるよな。」
「文武両道ってやつですね!」
本当に美味しいものを口にすると、今まであった悪いことなんて嘘のように思う。
「伊織とか明石とかの件も、夢だったんじゃないかって……そう思うんだ。」
「……そうだったらいいのに」
「でもいつまでもこんな暗い雰囲気じゃいけないと思うよ。ハッピーエンドに向かうなら前を向かなきゃ」
白石の言葉に励まされる。
確かにこんなことを言っていられない。
伊織の死を乗り越えていかなければいけない。
「全く麻央の奴!こんな状況下でもう友達作ったのかよッ!」
「麻央ちゃんって結構積極的だからね〜」
食器の片付けが終わって、飲食スペースを見ると百鬼と四津谷が何か話していた。
「どうしたんだ?二人とも」
話を聞くと、秘星が新たに友達をゲットしたらしい。
なるほど、それで二人は……いや、四津谷は羨ましがってるわけだ。
「全くよ〜俺ちゃん達を差し置いて友達作りとかさっ!」
「何々?やっかみかい?というかそれなら弥音も友人を増やせばいいじゃないか。」
私は今華道家ちゃんと話をするのに夢中なのでね!邪魔はしないでくれるかい?
「ムキーッもーいいや、紗月図書室でも行こッ!」
「えっ、あ、うん!?」
バタンッ。
ドアは勢いよく閉まる。
「えへへ、秘星さんと話してみたらば結構楽しくって!」
「華道家ちゃんの才能には驚いてね。前回の親睦会での花の飾りがなんと綺麗だったことか!」
秘星は大袈裟とも取れる程に儚火の素晴らしさを語る。儚火は珍しく照れている。
「秘星さんの才能あって、あのステージは輝いたんですよ!」
ある意味あれも二人と架束、百鬼コラボのステージとも言えるな。
二人に背を向け食堂を出ると、目の前の塞がれていた階段が通れるようになっていた。
ちょっと行ってみようと足を運ぶ。
二階に着くと、そこには四つの部屋とテーブルにソファがあった。
そして、もっと上に行く階段はまた木材で通せんぼされている。
「ー!ー?」
階段登ってすぐそこの部屋から声が聞こえる。
表記を見るとどうやらここは調理室のようだ。
ドアを開けるとそこには楽しげに話す出口とローゼン。
そして少し離れたところでその様子を見つめながら談笑している架束と鑑がいた。