序章 ダチュラの花の咲き始め
校庭の端に綺麗な花壇があるのを見つけた。
殺風景な景色の中に唯一ある色である。
校庭の周りは木々で覆われており、とてもつまらない。
花壇の近くには二人の男女がいた。
「あの、オレは大原空。ここで何をしているんだ?」
声をかけるとまず振り向いたのは緑色の髪の、黒いセーラー服を着た女子だった。
「…私は超高校級の華道家、
「へー、詳しいんだね!流石華道家、なのかな?」
「えへへ、華道家として花の知識はつけておかないとですね!何かあったら聞いてください!」
この前私の個展が開かれたばかりなんです!
え、すごいね!界隈では有名なんだろうなぁ〜。
屈託のない笑顔を浮かべる彼女の横にいた少年が、こちらに気づいたのか視線を感じる。
「…こんなところに咲いているなんてね。 いい絵の資料になるよ。」
そう言いながらも彼はスケッチブックにダチュラを描き続けている。
「私は櫻井奈々子だよっ!アナタは?」
「架束彩。アヤじゃなくてサイだから、よろしく。」
架束彩……。聞いたことがある。確か有名なイラストレーターだ。
「まさか同い年だなんてな…」
「よく言われる」
返事をしながらも書き続けるその姿にはただただ尊敬するしかなかった。
しかし、何もないこの校庭に唯一ダチュラが咲いていることに違和感を覚えた。
「よっぽど、ここの先生たちがダチュラの花が好きなのかなっ!」
そういうことなのだろうか。
やはりこの学校は何か引っかかるところがある。