一章 季節外れのプリムラ【後半】
大「……伊織の為にも絶対犯人を見つけよう……!伊織だってきっとオレ達がおしおき受けるのは嫌なはずだ!」
内「え〜。すごいねェ〜。大原クンエスパーなのォ?」
大「いや、あくまでもこれは推測というか……。」
この空気を打破する為に議論の口火を切ったが、反応してくれる人は内沢くらいしかいない。相変わらず彼女はニコニコしている。
四「でもな〜(ひっく)……蒼汰が死んでしまったんだ。頭なんて働かないぜ……(ひっく)」
百「うぅ……そうですよ、誰よりもリーダーシップがあった伊織さんが亡くなったなんて信じられませんよ」
内「えェ〜二人とも大泣きしちゃって、そんな伊織クンと仲良かったっけ〜?」
四「……俺ちゃん割と話してたぜ。コロッセオ行くって言ったのによぉ〜」
百「だって、仲間ですよ!?」
議論を始めようにも、まだ気持ちが収まっていないのか中々進まない。
桐「……そういう茶番めんどくさいよ。早く犯人を見つけようよ。」
櫻「そうだね。まずは今出ている情報をまとめようか。」
一応把握しているつもりではあるが、間違いが無いようにモノゴンファイル①を見る。
議論開始——
櫻「えーと、被害者はみんな知ってる通り超高校級のサッカー選手である伊織蒼汰くんだね」
四「あいつ、以前テレビで見たけどすごいプレイしてたぜ!」
ロ「発見した現場は……井戸ですわ!そこで栗花落さんが蒼汰さんを見つけました!」
出「殺害時刻は……不明」
桐「発見時の状態は、首に縄が巻きついていたね。でも死因は不明だよ」
白「あ……その姿からして、釣瓶の縄を首にくくりつけて自殺したのでは?」
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とりあえずここまでだが、何か違和感を感じる……。
待てよ。ああ、そうだ。
大「それは違うよ!」
申し訳ないが議論はここでストップさせてもらう。
儚「え、自殺ではないの?」
大「ああ、伊織の遺体には【前頭部に切り傷】があった。自殺だとしたらどうしてこんな傷ができるんだ?」
秘「確かに……!それは良い観点だね!」
議論開始——
大「自殺なら、縄で首を絞めるだけで死ねるぞ。」
内「自分で傷つけたんじゃないのォ?」
鑑「でも、縄だけでも十分威力はあるのにどうしてわざわざそんなことをするというのですか」
出「そもそも、伊織さんが自殺ばすっタイプには見えんけど」
大「だから、他殺の線が濃いよ!」
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河「それは違います!」
河西の反論に身構える。
そして、彼女が出した写真に写っていたのは手紙であった。
河「【伊織さんの遺書】です。大原さんもご覧になっている筈では?彼の部屋にいたのですから」
儚「な、内容としては……うぅ、思い出すだけで涙がこみ上げてきますね」
明「……内容は僕達へとチームメイトへのものだ。才能を無くして絶望した。未来へ進む道が見えない。みたいな内容だったな。」
確かに、遺書があるとしたら自殺と考えるのが妥当だ。
しかし本当にそうなのだろうか。
もしかして……
大「犯人が書いたものであったりしないのか?」
明「それは完全に違うね。これ、親睦会で渡された用意するものの手書きのリスト。見比べてみてくれ」
内「あれェ?何度見ても同じ筆跡だねェ〜」
どう見てもそれは伊織の字であることがわかった。
出「犯人が、その遺書ば書かせている可能性は?」
書いたのが伊織でも、この思考は彼のものではないかもしれない。
四「(ひっく)……あーくそ。言いたくなかったんだけどさ」
四津谷は自分のモノタブを取り出して画面を見せる。
四「今日の早朝、起きてたから何となく暇で蒼汰にメッセージを送ったんだ。」
秘「ふーん。まだ寝てるかもしれないのに?」
四「それは悪かったと思ってるよ!そしたら、すぐに返信が来て何ならってことで電話したんだ」
櫻「会いに行っても良かったんじゃない?」
四「なんかこの後出かける用事があると言っていたから無理だったんだぜきっと。それで、その時試しに使ってみたくて録音機能を利用したんだよ。許可は取ってる。」
どうやら、録音機能は通話の内容も録音してくれる優れものらしい。
四津谷がその再生ボタンを押す。
早送りして、しばらくすると。
『ありがとな〜。朝早くから話聞いてくれて』
『まぁ俺ちゃん超超やさしいからね〜』
『……それでさ、話しってのはさ』
『うんうん』
『……俺ってまじでどうしたら良いかわかんないよ……。』
『……。』
『唯一の取り柄のサッカーはできないし、ここを卒業してもチームメイトには受け入れられない』
『蒼汰には他にもリーダーシップだとかいろんな才能があるぜ。それにチームメイトもそれで縁切るような奴らじゃないんだろ?』
『うーん……そうなのかな。だと良いんだけど』
『あっ、そういえば大事な話だったけど興味本位で録音してたぜ。大丈夫?』
『ブハッw事後許可制か?新しいなwまぁいいぜ。でもそういうのは普通最初に言…』
四「その遺書、読んでみた限り蒼汰がこの時言ってたこととさして変わんないぜ。蒼太自身の考えだと思うな」
内「それじゃあ、伊織クンの遺書で間違いなさそうだねェ〜」
また詰まってしまった。
これが伊織の遺書だとすると、本当にこれは自殺なのだろうか。