一章 季節外れのプリムラ【後半】
議論開始——
儚「きっと伊織さんは遺書を残して、井戸に向かったんですよ!」
明「そこで自分で首に縄を巻いた。しかし不安だったから何かで頭を殴ったんだ。縄で死ねなかった時の保険として」
出「最悪な話ばい。自ら命を絶つなんて」
ロ「だとしたら、全てが繋がりますわね……?首に縄が締め付けられていたのも遺書があったのも」
鑑「確かに。人は見た目で分からないものです。伊織さんは一見明るく見えましたが悩むことはあったのでしょう。」
百「辛いなら相談してくれたら良かったのに……」
桐「傷の話は少し強引な気もするけど……見ていたわけじゃないし自殺で決まりなのかな」
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架「センスないね」
秘「ん?今の流れと出ている証拠だと、正しい結論じゃないかい?」
架「大原さんと出口さん、そして明石さんグループなら知ってると思うけど」
架「【伊織さんのモノタブ】だよ。」
大「あっ!ああ、そうだ
それに【残された録音機能】だ!」
出「確か……争ったごて音声と謎の打撃音が録音されちょったばい」
大「そうだ。確か音声が粗くて誰の声か……男女の区別もつかなかったから。物理に詳しい明石に頼んだな。【明石の音声解析】の結果が分かれば良いんだけど」
明石「……今流すよ。」
そう言って伊織のモノタブを取り出し、再生する。
『……ザーッザーッ……何……考……な……くせに!……ドゴッ……ザーッザーッ……プツッ』
明石「結果から言うと、【少し低めの女性の声】だ。だからあの録音されていた言葉は伊織さんの発言ではないね」
河「女性……?だとしたら、伊織さん以外の人が関わっていたということですよね。」
百「そ、そしたら、自殺じゃない可能性も十分にあるということですか……?」
大「そうなる。しかし、明石。お前は解析したんだから自殺ではないこと一番にわかっているだろうに。どうしてさっき自殺だと言ったんだ?」
明「……嫌な事件だ。この中に犯人がいるのも考えたくない。自殺で片付けたかったんだよ」
桐「気持ちは分かるけどさ、これは間違えたら俺たちがどうなるか分からないんだぜ。」
櫻「そうそう。慎重に行こっ?」
大「そして、その声だけじゃなくて打撃音も聞こえているんだ。だからきっと、事件が起きたときに伊織が咄嗟に録音したんだろう」
白「……もし、自殺じゃないとしたら絞殺されたのかな」
桐「いや、絞殺じゃないと思うよ。他殺での絞殺は大体被害者が苦しくてもがくから、縄の周りになんとか縄を解こうとしたときに引っ掻いてできた爪痕が残ることが多いんだよ」
架「だとしたら、死因は絞殺では無い可能性が高いよね。」
死因が絞殺では無い……。頭の傷があるから、あり得る話だ。
では、どうして縄が首に巻きついていたんだろうか。
そうか!分かったぞ。
大「偽装だ!死因の偽装だ。犯人は、伊織を殺した後縄を首に巻きつけて自殺に見せかけたんだ。」
そうに違いない。見つけた証拠などを見るとどうしても自殺という判断は下せない。
架「そう。それで、きっとその死因に関係するのがさっきの打撃音じゃないかな。」
秘「確かに……。隠蔽にしては隠れていなさすぎだけどね」
ここで、自殺という可能性は消滅した。
内「でもそしたら、その声の主は誰なんだろうねェ?」
櫻「声が低い女の人だよっ!」
白「録音から聞こえたものから推測するに『何も考えていないくせに!』といったところかな?そしたら、その人は何か考えていたりするような人ってことだよ」
ロ「……声が低い女性で、この事態に真摯に向き合っているような人ということですわね……。そうするとかなり、絞られてきますが……」
鑑「それだと、確実な証拠ではないということですよね。状況証拠のようなものです」
声が低くて、コロシアイ生活に対して考えのある女性……。
あの人かと推測はできるが、間違っている可能性もあるため迂闊に発言はできない。