一章 季節外れのプリムラ【後半】
ー物置ー
物置の前に着く。
ここには入ったことがないから、一体どんなところなのかと気構えてしまう。
入ると、もう既に全員集まっていたようだ。
中は、人数に対して狭すぎる。
埃っぽく咳をしている人も少なくない。
空気は重々しくて誰も何も言わない。
何かを話す気にもならない。
物置の、電球は切れているのが更に気分を暗くさせる。
「……もうすぐ裁判だけど、そっちはどう?」
これからの起こることに堪らず、側にいた櫻井に声をかける。
「うん。真飛くんと舞琴ちゃんがすごい進んで捜査してくれてさっ!……なんとかなると思うよ」
話しかけると、まるでオレのの不安だという気持ちを汲み取ったかのように明るく返事をくれる。気を使わせてしまったかな。
ヒョイッ
「うぷぷぶぷ、お待たせ!で、もうみんな集まってるの!?落ち込んでるフリして本当は楽しみなんじゃないの?」
そんなわけあるか!このクソトカゲ!とでも叫びたくなるがなんとか我慢をする。
ここで反発したら、モノゴンの意のままだ。
早く終わらせてしまいたいところだ。
「じゃあ始めちゃうよ!そら、開け!」
モノゴンが叫ぶと、どういう仕組みか積まれていたダンボールが崩れた。
そしてそれを一郷が、歩きやすいようにと端へと寄せる。
「さぁ、皆さん。道は開かれました。こちらへどうぞ。……足元にお気をつけて」
目の前には巨大な鉄製の扉が佇んでいる。
ダンボールにより、隠されていたのだ。
それは、まるで処刑場の扉のような不気味なものだった。
「よぉし、みんな集まったね!よいしょっと!」
モノゴンの掛け声と共に扉の横のボタンがぽちっと押される。
瞬間
ゴゴゴゴゴゴ……
不穏な地響きが現れる。
ゆっくりと、扉が開く音だ。
そこには、正方形の床と鉄格子の壁がある。
「エレベーターだよ!ほら、早く乗って乗って!広さも余裕あるからさ!」
全員が乗ると、ガシャンっと自然にドアは閉まった。エレベーターの中の面積は広いが、窓も無い為狭く感じる。収容を待つ囚人になった気分だ。
「……。」
これからきっと裁判場のようなところへ連れて行かれるのだろう。
行きたくない。エレベーターが止まらなければいいのに。
その思いは虚しく、エレベーターが止まる音がした。