一章 季節外れのプリムラ【後半】
ー秘星サイドー
紗月ちゃんと弥音と、捜査を進める。
しかし二人があまりにも、暗い面持ちでいるので全く進まない。
「ねえ、君たち。気持ちは分かるけど今は調査の時間だよ?切り替えて頑張ろう?」
「麻央ちゃん……。分かってるけど、やっぱり辛いよ……。」
「そうだぜ。俺なんて結構仲良くなったつもりだったのによぉ……。」
思い切って声をかけてみるが、二人の返しになんとも言えなくなる。
しょうがないな。私が先陣を切ろう。
二人がそうするなら、私はその分調査するまでだ。
裁判が始まって、何も調べてませんだなんて許されない。
今し方調べていた保健室の隣にある、表記の無い部屋に入ろうとする。
しかし、鍵がかかっているのかドアは開かない。
仕方なしに隣の職員室へ入る。
入ってすぐ手前にある教員の机の引き出しを開けてみると、謎の校内図のようなくしゃくしゃの紙が二枚も見つかった。
「二人とも。これ見てくれるかい?」
「どうしたの?……校内図?」
「校内図って言っても手書きっぽいし……何かメモのようなものもあるな。」
ほほう。さっき入れなかったのは放送室なのか。第二校舎と第一校舎の一階の校内図……。それにしてもこれを書いたのは誰だ。
下の方に目をやると、二枚とも「20××4月1日記
20××……去年だ。そして、4月1日。私達のこの学園に来た日も4月1日と記憶している。
約一年前に誰かがこの学校にいたということになる。
「ふーん……。まぁ、これは重要な発見だね!」
職員室をもっと探そうと思ったが、やけに広い。
ここを調べても今回の事件に繋がるものは無さそうで、調べるだけ骨折り損だ。
「よし!紗月ちゃん、弥音!次行くよ!」
「……うん、分かった。ごめん、任せちゃって」
「えっちょっと待てよ!な、ここ出てすぐそこにあるソファで一旦休もうぜ!」
「却下」
二枚の紙を折ってポケットにしまった。
落ち込んでいる二人を励ましながらの調査は
案外、難しくないかもしれない。
【第一校舎一階校内図】
【第二校舎一階校内図】