一章 季節外れのプリムラ【後半】
倉庫の外に出る。
入り口のそばに焼却炉がある。
単純な考えだが、証拠を消すなら焼却炉はうってつけではないか。
見たところ、可動はしていないらしい。
「この扉ば開けたら良かね?」
躊躇いもなく出口が焼却炉の扉を開ける。
中にはまだ焼け切れていないものがあるようだ。
次は架束が思い切り手を焼却炉の中に突っ込む。
「お、おい!危ないぞ!?」
「大丈夫。」
見ると、彼は軍手をしていた。
「いつのまに……用意周到だな。」
「うん。でもまぁ……そこまで熱くないから。」
最後に焼かれたのはずっと前なのだろうか。
焼却炉の温度は800度以上と義務付けられているはずだ。今日燃やしたばかりなのに、人が手を入れられる温度のわけがない。
それでもまぁ、火傷などしなくてよかったと安堵のため息を吐いた。
見ているうちに、彼はどんどんトングで中のものを取り出していく。
その手際の良さに驚かされる。
「えーと、じゃあ何が出てきたか見てこ」
まず、出てきたのは謎の金具であった。
謎は謎でもどこかで見たことがある。
それもついさっき見たようなー。
「これ、さっきの備品リストで見た気がする…」
「……じゃあ、わたしそれ取ってくっけん」
出口はささっと倉庫へ入りささっとこちらへ戻ってきた。もちろんあの分厚い本を抱えて。
「えーと、確かあそこで見た」
彼女の証言を頼りにページを探す。
「あ、あった!これだ!」
それはあの木のバケツであった。
これくらいの大きさの金具ならきっと、このバケツのものであろう。
しかし、バケツであると思ったそれは【木の釣瓶】というらしい。
それはさておきこの謎の金具については解決したので、備品リストを元の場所に戻し他の発掘したものを調べる。
「なんだこれ?」
プラスチック製のリモコンの様に見えるそれには、「◁ || ▷」というボタンがつけられていた。一体何のリモコンだろうか。
金具だけになった木の釣瓶。溶けかけたリモコン。
これらが焼却炉に入れられてから燃焼があったことは事実であろう。
「……割と重要そうだね」
「ああ。」
ここはこれくらいか、と見つけたものを全部写真に撮りこの場を離れた。
—手に入れた証拠—
【焼却炉の温度】
【謎の金具】
【プラスチック製のリモコン】