一章 季節外れのプリムラ【前半】
ー百鬼サイドー
二人に分かれて、場所を分担しよう。
大原さんの言う通りに動く。
私は、普段からよく一緒にいる弥音くんと探すことにした。やっぱり、共にいることが慣れている人との方が協力できると思う。
私達の探す方面は倉庫付近〜第二校舎付近だ。
とりあえず、食堂を出る。
食堂にはいなかった。
第二校舎の一階には食堂しか無いため隠れる場所は他にない。
なのでここにはいないのだろう。
それにしても、食堂の近くなのにトイレがないことが不思議でならない。
もしかしたらこの建物のトイレは今はいけない二階にあるのかもしれない。
二階に行こうとも木材などが崩れているのか、落ちておりそれが邪魔で行けない。
きっとそこに伊織さんはいない。
「外に出よう」
そう、同行者に告げて第二校舎から出る。
目の前に体育館のような建物があるがそこもまだ解放されておらず、探すことができない。
なので必然的に、廃校舎付近を調査することになった。
倉庫よりも廃校舎の方が、広いしそこにいる可能性の方が高いだろう。
廃校舎の中を見て、いなかったら倉庫を見よう。順番を決め廃校舎に向かう。
「伊織さーん!いるのー?」
大きな声を廃校舎で出す。
シーン。
返ってくるのは返事ではなくただの静かな空気だった。
「……何してるんだ?」
突然背後から声がかかる。
伊織さんか、と少し期待する。
急いで背後を見ると、そこには紫色の髪をした男がいた。
「うわ、びっくりしたー大和じゃん」
あ、そういえば下の名前大和だったな。
それより、どうしてここにいるのだろうか。
「で、何してるんだ?こんなところで」
こっちが聞く前に聞かれてしまったので先に答えなければいけない。
「伊織さんがいなくて、探してるの」
すると明石さんは意外、といった顔をした。
怪我しているのにそんなに動けるのか?
でも、遠くは行っていないだろう。
先程、倉庫付近で見たからな。
明石さんの証言は重要なモノだった。
「倉庫に行かなきゃ!」
「倉庫はこの前の状況のままって聞いたから……危ないだろう?窓からとりあえず様子見するべきだね」
明石さんの助言通り窓に周る。
「あっ、いた!」
思わず声を上げる。
倉庫の中は暗くてよく見えないが、おそらく伊織であろう人物がこちらに背を向けていた。
見える大きさ的にどこかに座っているらしい。
何をしているんだろう。
「蒼太いたじゃん!良かった〜。何してるんだ?」
四津谷が声をかけ、明石が良かったなと言うように少し微笑む。
「……。」
しかし何かに熱中しているのか伊織さんからの返事は無い。
「伊織さん!儚火さんが心配して探していましたよ!大変だけど、サポートするから一緒に帰らない?」
「……調べたいことがあってな。放っておいてほしい」
返事が返って来た。
伊織さんも何か考えて、行動しているんだ。
怪我をしているというのに。
私達も希望を失ってはいけない。
「そうか!事情話しとくぜ!」
伊織さんの調べ物の邪魔をしてはいけないと、戻ることにした。
皆にも伊織さんのことを話さねばならない。
「明石さんも一緒に行く?」
もう少し、ここら辺を探索したいから。
少ししたら食堂に戻るよ。
残念だが断られてしまった。
去り際、なんとなく焼却炉が気になった。
「紗月〜!行こうぜ!」
しかし四津谷に促され、じっくりと観察する暇はなかった。