一章 季節外れのプリムラ【前半】
「おはよう!朝の7時だよ!夜時間は終了だよー!……ブツッ」
もはやテンプレートだろ!?と突っ込みたくなるようないつもと同じアナウンスを聞いて起床する。
はぁ、今日もまた始まった。
でも、今日は伊織の調子はどうだろう。
今日は河西は少し優しくなったりしてないか。
など考えると少し食堂に行く足取りも軽くなる。
寮から食堂のある第二校舎までの外の道を、そよ風を受けながら歩く。
朝日が目に染みるほど痛い。まだ眠い。
でもどこか、こんなに天気がいいんだからきっと今日は伊織は元気なんじゃないか。なんて根拠もなく考えてしまう。
食堂のドアをいつもより少し強めに開く。
「おはよう!」
「…ハッ、伊織さんですか!?」
食堂に来て一番に言われたのは伊織の名前だった。
「いや、オレは大原空だ!」
そんなぁ〜、と明らかに落ち込んでいる儚火を見兼ねて声をかける。
「伊織なら保健室にいるんじゃないか?何か急用でもあるのか?」
保健室には包帯や鎮痛剤などが揃っている為、特別、伊織は保健室で就寝することを許されていた。それもありいつも伊織は保健室で過ごしていた筈だ。
「よ、用事はないんですよ!少しお見舞いにと保健室に行ったらいなくて…!不安になったので部屋に行ったんですけど、そこももぬけの殻だったんです!」
儚火が言うには、伊織が朝からどこにもいない、ということだ。第一校舎、第二校舎付近を探しても見つからないというのだ。
「伊織さんは、怪我人ですしそんな自分だけでは遠いとこまで行くと思いませんが…」
百鬼が口を挟む。確かに先日の昼食に、動くのがきついと行って食堂まで来れない程の怪我人が儚火が見つけきれない場所まで行くとは考えられない。
「なんかあったんかな?とりあえず探してみようぜ!見つけたら安心するだろ!」
四津谷の一声でその場にいた全員で探すことになった。
捜索に協力してくれるのは桐谷、白石、儚火に百鬼と四津谷、そして鑑とローゼンだった。