一章 季節外れのプリムラ【前半】
「おはよう!朝の7時だよ!夜時間は終了だよー!……ブツッ」
朝が来る。当たり前だが今日が来る。
来てしまうのだ。時間は何をしないでもすぎていく。こうして一日が過ぎていく。
憂鬱だな。行きたくないな。
身を起こすが、自分の体が鉛のように重く感じる。
部屋に備え付けの洗面台で顔を洗う。
とりあえず今日も食堂に向かうか。
食堂に着くとそこにいたのは鑑とローゼンに出口。そして儚火と架束だった。
なんだろう。朝早く行くといるメンバーって同じだよな。先日も見た顔ぶれだ。新しい人もいるけど。
「…おはよう。」
「おはようございます!」
「おはようございます。ご飯できてますよ」
「おはよう…」
鑑とローゼン、出口がすぐに反応してくれる。
少し嬉しい。
しばらくして、儚火と架束がこちらに気づく。
「あ、おはようございます!」
「おはよう」
見ると机の上には黄色いダチュラが飾られている。可愛らしい。しかし、ただ一つ不満があるとしたらこの学園にダチュラしか咲いていないことだな。もう少しバリエーションが欲しい。
朝ご飯を済まし、自由行動に移ろうと思う。
今日は誰と過ごそうか。
廊下へ出ると秘星と出会した。
何をしているのかと問えば、学園探索と返ってきた。特にすることもないので、お供することにした。
「この学園は広いね!ボロい割に設備が揃っているよ!」
秘星の言う通り、ボロいくせにエアコンに最新式の冷蔵庫など設備が整っているのだ。
「明らかに雰囲気に合わないよなぁ…」
そう呟くとバッと秘星の顔がこちらを向く。
「そうなんだよ!何か行うにあたって場の設定はしっかりしないと!」
これじゃあエアコンやら冷蔵庫やら、場に合わなさすぎてボロボロの雰囲気が台無しじゃないか!全く、この学園の監督者は誰だい…?
…そんなものいないか。現実だから。
秘星はぐぬぬ、と今まで秘めていただろうことをぶちまける。
コロシアイ生活をさせられて、まず思うところはそこなのだろうか…?
「それよりね幸運くん!舞台でもないのに、このようなオンボロ学園での生活を強いられて平気なんて正気の沙汰じゃないよ!」
秘星はどんどん語る。話によると昨日図書室付近を探索していたところ、黒光りした「奴」が飛んできたそうなのだ。飛んできた、というところを秘星はやけに強調した。
「歩いているのなら百歩譲って許そう!しかし、飛んでくるなんて聞いていないよ!?」
確かに。飛んでいるのならいつぶつかるか予測が難しい。……正直その時そこにいたのが自分でなくて安心した。
「全く……コロシアイ生活を送るのは一先ず置いといて、人間が住めるような環境にしてほしいもんだね」
置いとくんだ……。
学園を探索をしていたはずなのだが秘星の環境談義に花が咲いてしまい、あまり細かく教室などを注視したりなどは叶わなかった。
「全く、環境というのはね。スポーツにおいても劇においても、何にしても所属する者のコンディションを整える為にはきちんとしとかなければいけないところなのに」
超高校級の監督故の心配なのだろう。
しかし、どこかこの生活でのその発言はズレているというか…良く言って変わっていると思った。