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一章 季節外れのプリムラ【前半】



ー河西サイドー



焦る。焦る。とにかく今焦燥しているのだ。

この生活が始まり、つけ出したノートを見る。
このままじゃダメだ。動かないと。
何もしないのに卒業だなんて、この学園は許してくれない。

そうはいうけどどうしたらいいか調べても、脱出の糸口が見つからない。それだけでなく、大好きな祖父の形見も無くしてしまった。自分の不出来さに涙が出そうになるのをグッと堪える。

「誰も行動に移さない…。このままじゃモノゴン達が何かしでかす可能性もありますね」

独り言を呟きながらノートを見ながら考える。
このまま何も起きなかったらきっと最悪な事態になる。かといって何かが起きても大変なのだが。
とにかく今大事なのはいかにして自分が外へ出るかだ。何とかして、外に出るから。


見守っていてください、お爺様。



ー大原サイドー


今日という一日がやっと終わる。
どっと疲労が押し寄せる。

はぁ、疲れたなぁ。今日は倉庫へ行って見舞いに行ったくらいだったが、精神的にキツかった。
伊織が怪我して一日しか経っていないが、昨日よりはマシなようだ。
立ち直りが早いのだろうか。そう装っているだけなのか。

「ただ今、夜の10時になりました!夜時間だよ!立入禁止区域もあるから気をつけるんだよ!ウププ!……ブツッ」

目蓋が重い。でも、明日になったら何かが起こってしまいそうで、目を閉じることを拒む。
ああ、明日なんて来なきゃいいのに。
ずっとこんな、日々が続けばいい。
そして伊織の怪我なんか早く治ってしまえばいいんだ。

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