一章 季節外れのプリムラ【前半】
ー四津谷サイドー
紗月が蒼太の見舞いに行って、30分ほど経った。俺も行こうかと思ったが大勢で行くと絶対騒がしくしてしまうしやめた。
麻央はなんか、学校探索するとか言ってどっか行ったし他の人はあんま知らないから話しかけるのがめんどくさいし暇だ。とにかく暇だ。
いつ帰ってくるのかな〜まだかな〜と思いながら、せっかくだから新しい曲を考える。
帰ってきて新曲できてたら紗月驚くんじゃね!?とかいうどうしようもない発想によるものだ。どんな曲にしようかな〜。
「……。」
大体曲の三分の二の構成ができたところで紗月が戻ってきたことに気づく。
なんだか顔が暗い。
「紗月〜終わった?」
声をかけても返事がなくどこか上の空だ。
「紗月ちゃぁん?さっちゃーん?」
何度声をかけても気付いてくれない。
「百鬼紗月さん?」
近くに行って肩を叩いて声をかける。
あれっいたの?と拍子抜けしたような返事が来た。
ここまでしないと気付かないなんて、よっぽど疲れているのか気が滅入ってるのか、それか俺のことが嫌いなのか。
多分前者だな!
「蒼太のやつどーだった?元気?なわけないか」
うん、でも笑顔だったよ…。みんな伊織さんの為に倉庫の調査行ったんだけど、私は断ったの…。弱虫だよね。
落ち込んでいた理由を知る。
他にも行かないって言った人いるしさ!俺ちゃんなんて見舞いにも行ってねーし!?蒼汰が元気になること祈ってりゃ良いんじゃね!?
とにかく今の俺ちゃんがすることは百鬼の励ましだ。曲も作り終えてないから完成したら一番に見せてやろう。
しかし、やはりコロッセオに行く約束した仲間としては怪我の具合が心配だった。
一緒にイタリア行こうぜーなんて調子のいいこと言っておいて本人が怪我したら放置、なんて酷いにも程があるぜ。別段蒼汰と仲がいいわけではないが、この初対面だらけの中で唯一仲良くなれそうな奴だ。
「紗月っち〜俺ちゃんちょっと蒼太の見舞い行ってくるわ〜」
「えっ、…っち…?う、うん!」
とりあえず見舞いの品ってことでそのテーブルに置いてあった饅頭をいくつか取って保健室に向かった。