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一章 季節外れのプリムラ【前半】



校庭へ戻ったが静かだった。
何があったか分からずに、恐ろしいのだ。

「なななななななな、何があった?大丈夫?蒼太は生きてんの?」

「無事だったのかなっ!?」

四津谷と櫻井が詰め寄ってくる。
ことの顛末を説明すると、その二人を含め
全員が生きていたことへの安堵をする、と共に足を怪我したことに対して心配や同情をした。

「サッカー選手なのにねェ。足を怪我なんて大変だよォ?」

「後遺症とか残らなければいいんだけど。とりあえず率先して見に行ってくれて真飛ありがとう。」

あの時桐谷が指揮を取らなければ、きっとオレ達は足がすくんだままで助けに行くのが遅くなったはずだ。印象で大丈夫か、など要らぬ心配をしていたことを恥じる。
やはり超高校級の警察官だ。

「だって死人が出たら困るしねー」

その通りだ。とりあえず今日は解散、ということで各自自室へと戻った。
誰も何か話そうとはしなかった。


部屋に戻ってさて寝よう、そんな気分には到底なれない。この状況で一番明るくて引っ張ってくれていた存在が大怪我をしたのだ。
心配で仕方がないし、何より次会ったときになんて声かけようか考えないといけない。
サッカー選手の命より大事かもしれない足を怪我することは、どれだけショックなのか。自分には完全に解りきれない。
しかし、それが相当のものだということは分かる。
話しかけるにしても言葉は選ばないといけない。治る怪我だといいのだが…。


ピンポンパンポーン

「ただ今、夜の10時になりました!夜時間だよ!立入禁止区域もあるから気をつけるんだよ!ウププ!……ブツッ」

夜の放送が入る。ああ、こんな放送だったか。
夜時間だからと言って自分にとって何か変わるわけではないが、健康の為に放送が入ったら寝ることにした。今日は大変な日だった。
コロシアイ生活と言われつつ、平和であったから油断していたのだ。
明日起きたら夢だといいのに。またまた現実逃避をし、いつのまにか夢の中へと旅立っていった。

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