序章 ダチュラの花の咲き始め
「おーい、起きて〜」
「もうとっくに日が昇ってるよ!」
どこからか声が聞こえる。
「起きないと無理矢理目蓋、開けちゃうよ?」
ハッと起き上がると目の前には、髪を一つに結えた同い年くらいの女子が立っていた。
「えっと……おはよう?」
「残念!もう午後の1時だからこんにちはだね!」
いきなりなことに状況を飲み込めずにいる。
この人は誰だ?ここはどこだ?さっきまでの暗闇は…?
「……いきなりのことで驚いてるよね?目が覚めたらいきなり知らないところにいるんだもん!」
「ああ……もしかして、お前も?」
聞くところによると自分と彼女は全く同じ状況にいるらしい。
今いる部屋も保健室。どうやらベッドでずっと眠っていたようだ。
「でもよかった!アナタ全然目を覚まさないから心配して様子見てたんだよっ!」
ありがとう。ぼそっと呟くと彼女はふふっと微笑んだ。
キンコンカンコーン
彼女と自分の声しか音が無かった世界へ
突然機械音が邪魔をする。
『あ、あー。マイクチェックマイクチェック。おほんおほん。全員起きたようだね!これから入学式を始めるから校庭に来て頂戴!……プツッ』
どうやら放送のようだ。
それにしてもやけに明るい声だったな。
「入学……式?」
入学式といい保健室といい、ここはもしかして学校なのか?
「何がなんだかわからないけど、入学式の始まりみたいだね!一緒に行こう!」
我先にと駆け出した彼女を追って、保健室を飛び出す。
「お、おいちょっと待てって!」