一章 季節外れのプリムラ【前半】
バーベキューを終え、最後に待っていたのは花火だった。
この時既に20時だった。
「よーし!花火大会だぜ!」
皆が花火のセットを手に取ろうとする。
「あれ、わたしの分…」
出口の分がなかった。
一つ足りないようだ。
「……すまない。ちゃんと数えたつもりだったんだけど。僕の分を…」
明石が申し訳なさそうに申告してきた。
しっかりしてほしい。
「いいよ!オレの分使え!オレは自分の分倉庫に取りに行くから!皆花火先にやってたり好きなことして待ってろよ!」
「…ごめん」
伊織は、自分の分を出口に渡し足早に倉庫へ向かう。
先に花火をしようと火をつける人もいれば、
伊織が帰ってくるまで待とう、とグラウンドに絵を描いたり花を摘みにいく人もいた。
しばらく経っても伊織は帰ってこない。
段々不安になってくる。
花火が見つからないのだろうか。
先程明石が倉庫をいじってる時にチラ見した時は、入り口手前の机に置いてあったはずだ。
ガシャーンッ
ぐぎぁ゛あ゛あ゛ぁ゛ッ゛
不安になったも束の間、突然の物音と叫び声が倉庫から聞こえた。