一章 季節外れのプリムラ【前半】
お昼は皆集まって食べる必要もないと判断したので、その辺で朝作ったおにぎりでも食べることにした。なんだかそこまでお腹が減らないのだ。
うん。鑑ほどじゃないけどオレのおにぎりも十分美味い!
「おっ!何食べてるんだ?」
いきなり横に座る奴がいた。伊織蒼太だ。
「自作の超絶美味しいおにぎりだ。」
「一個くれよ!」
返事をする前に一個食べられてしまった。
クソ、オレのスペシャル自作おにぎりが…。
「美味しいな!オレは料理そんなにできないからさ。キミも鑑もすごいよな!」
はははと笑う彼の得意料理はサラダらしい。
「オレ、ずっとサッカー一筋で生きてきたからさ。もちろん、料理含め他のことにも努力したんだけどどれもダメダメで…。サッカーのことだけやってろ!て怒られる始末なんだよなー!」
サッカーできること自体すごいと思うのだが天才にはそういう苦悩もあるのか…。
少し同情をしてしまう。
「でも、オレには頼りになるチームメイトもいるしサポートしてくれるファンがいるし!今の自分が大好きなんだぜ」
寮の自室にも、サッカーボールとかみんなで取った大会のトロフィーとか、集合写真とか飾ってあるんだぜ。とのこと。
どうやら、才能に関する過去の物は自室に送られている人もいるらしい。
オレは幸運でそういうの何もないからなぁ。
まぁ、別にいいんだけど。
「あ、もうこんな時間だ。」
他にも伊織と話したり、サッカーの特技を見せてもらったりしているうちに時刻は夜に近づいていた