一章 季節外れのプリムラ【前半】
親睦会をやるらしい。
これは使えるかもしれない。
夕飯を終えて部屋に戻りメモをする。
早く外に出なければー。
「はぁ、美味しかった〜」
部屋に戻って今日二度目のベッドダイビングをする。ベッドがふかふかでよかった〜。
明日の夜に親睦会か。とても楽しみだな。
花火なんて小学生の頃にやったっきりだ。
線香花火が落ちる瞬間がとても儚くて、綺麗なんだよな。誰が早く落ちるか、誰が一番火を長く保っていられるか友達と勝負したっけ。
ベッドに横たわることで疲れから解放されたからか、ちょっとしたノスタルジーに浸っていた。
そこではっと思い出したのはタブレットの存在だった。
よく見るとモノタブレットと書いてある。
ヘルプボタンを押すと突然音声が鳴った。
「ヘイ!ようこそ!モノタブレット通称モノタブへ!」
ダサい名前だなぁ。
「モノタブは録音機能やカメラ機能を使えるよ!ただし質は悪いからご注意を!そして、クラスメイトとチャットや電話を楽しめる!今この時代に、対応してまーす!……ブツッ」
不快なモノゴンの声はそこで途絶えた。
「これで終わりかよ!」
そう叫んだ瞬間、目の前に黒い物体が降ってきた。
「もっと詳しく知りたいなら自分で調べればいいのにねー!」
モノゴンだ。
「は!?ちょっと、人の部屋に勝手に入るなよな!?」
「学園長の特権でーす!」
職権乱用すな!突っ込んでも不快な声で笑うだけのモノゴンに嫌気がさす。
「一体何の用できたんだ」
「物足りないみたいだから、詳しく教えてあげようと思って!」
これ以上あんなものについて知りたくないのだが。さっきのは内容の少なさに驚いただけだ。
「モノタブはね〜さっき言った機能はもちろん、生徒情報も見れるよ!ちょっとしたウェブ検索も可能!そして一番重要なのは校則のとこだね。破ったらどうなるか、分かるよね?」
そう言ってモノゴンは消えていった。
一体どこから湧いて出るんだ。
実はドラゴンじゃなくてハエかなんかじゃないのか?
とりあえず校則を把握すべくモノタブを開く。
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【小舟神学園校則一覧】
・生徒達は共同生活をすること。
・夜10時から朝7時までを”夜時間”とする。夜時間は立入禁止区間があるので注意。
・就寝は自身の部屋ですること。他の部屋での故意の就寝は居眠りと取り罰します。
・学園長モノゴンと教頭一郷への暴力を禁じます。
・仲間の誰かを殺したクロは卒業となりますが
誰かに知られてはいけません。
・生徒内で殺人が起きた場合は一定時間後に学級裁判が行われます。
・学級裁判にて正しいクロを指摘した場合はクロだけが処刑され、できなかった場合はクロだけが生き残り、残りは全員処刑されます。
・モノタブの貸し出しを禁止します。
・同一のクロが殺せるのは二人までとします。
・鍵のかかっているドアを壊すのは禁止とします。
・監視カメラの破壊を禁止します。
尚、以上のことを守れなかった場合は
外の害獣と楽しい時間を共に過ごすか
マシンガンで蜂の巣にされるか選択してもらいます。
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こんなにあるのか。
というかこの学校の名前が小舟神学園だなんて今初めて知ったぞ。
小舟神ってなんだ。
…しかしそれよりも、「監視カメラ」という単語に目が行った。
まさか、この部屋にも…。
急いで天井を見るとそこには、他の施設とは異なるかなり最新の監視カメラが設置されていた。きっと新しくつけたのだろう。不格好にも程がある。思い返せば食堂にも廊下にも監視カメラのようなものはあった。
少しでも違反したらお陀仏ということか…。
再び絶望感に苛まれた。