一章 季節外れのプリムラ【前半】
櫻井達と別れ自室へ入る。
ひとまず疲れたのでベッドにダイブした。
「はぁあああー…」
大きなため息をつく。
折角希望ヶ峰学園に入ったのにどうしてオレは人殺し生活なんてしなくちゃいけないんだ。
希望じゃなくて絶望だ。
こんなの、超高校級の幸運じゃなくて超高校級の悪運だ。
今まで幸せに生きてきた日々を思い返し、また憂鬱な気分に浸る。
「今まで、順風満帆に生きてきたのになぁ」
とぅるるるるる…とぅるるるるる…
突然アラームでも鳴ったのか音が鳴る。
それとともに意識が覚醒する。
もしかして、オレは寝ていたのか…。
とぅるるるるる…とぅるるるるる…。
アラームは止まらない。
全く!オレってば律儀にもアラームつけてから寝たのか!?
音のする方を見るとそこには
校庭で渡されたタブレットからだった。
アラームかと思えばそれは櫻井からの着信であった。
ピッ
「…もしもし」
『もしもし?空くん?良かった繋がった!すごいよね!これみんなのタブレットに連絡できるんだよっ!』
相変わらず明るい声がタブレットから響く。
先程のことがあったばかりだというのに。
それは取り繕ってのものなのかもうそういう性格なのか。分からない。
「それで何か用か?」
できればもっと眠っていたかった。現実逃避をしたかった。
朝目を覚ましたら、母が起こしに来て、母の作った目玉焼きを食べて学校に行って。
そんな日常に戻っていて欲しかった。
『空くん今何時だと思う?夜の8時だよ!夕飯食べなきゃっ!』
夕飯だと言われても、何かを食べるという気持ちにはなれなかった。今まで普通に生きてきたオレに「コロシアイ生活」だなんて酷すぎる。
他の奴らもそうじゃないのか。
「…パスしちゃダメか?」
『ダメだよっ!辛い時こそ食べて体力つけなきゃっ!…それにみんな待ってるよ?』
どうしてさっき会ったばかりの人にこうも心配されるのだろうか。しかもどうして大した関係もない人がオレのことを待っているのだろうか。…これからもしかしたらコロシアイが始まるかもしれないというのに。不思議でならなかった。
「分かった。行けばいいんだろ?」
『うんうんっ!待ってるよっ!」
相変わらずの明るい声が聞こえる。
少しみんなと話せば、どうすべきか分かるかな。
仕方なく重い足取りで食堂へ向かった。