序章 ダチュラの花の咲き始め
「ピンポンパンポーンッ!遅くなってごめんね!すまない!さあ入学式の始まり始まり〜!」
重い空気の中いきなり場違いな声が響く。
見ると朝礼台の上に小さい羽の生えたトカゲのような、白黒の生物が立っていた。
「みんなもう集まってるね!おほんおほん、ボクはモノゴン、学園長だよ!」
「「ト、トカゲが喋った!?」」
失礼だね!トカゲじゃなくて誇り高きドラゴンだよ!フン!
そういうドラゴンはどう見ても小さなトカゲにしか見えない。
そんなことよりねぇ!
入学式なんだから整列してよ!
遅刻の謝罪も無しに学園長は偉そうにしている。
学園長というのは普通はもっとまともじゃないのか?それともこの学校が普通なのか?
何もかもよく分からなくなってきた。
「えー、学園長に代わり私が挨拶させていただきます。私は教頭の一郷です。」
突然声が変わったかと思えば先ほどの嫌味な白黒頭が出てきた。
って教頭だったのか!?!?
「学園長だけでは不安もあると思いますが私もいますのでご安心を」
どっちも安心しないよ!!
なんかもっと教師という人はいないのだろうか。
教師って生徒を教えるきちんとまともな人のことを言うのだろうに、この二人(一人と一匹?)としたら教師なんかじゃなくて曲芸師と動物芸をする変わったトカゲにしか見えない。
そんな不安もある中トカゲがまたも口を開く。
「みんな初対面で親睦を深めたいのもわかるけどねぇ。進行も押してるから、さっさと次に行っちゃうよ〜」
「後でゆっくり仲良くできる時間がありますのでご心配は要りませんよ」
「単刀直入に言っちゃうけどみんなこの学園の中で過ごして頂戴!そして、
『コロシアイ生活』を楽しんで!」
「…………。」
シーン。誰も喋らない。というか開いた口が塞がらないのだ。今聞こえた言葉は嘘ではなかろうか。
「あーもう!二度も言わせないでよね!コロシアイ生活だよ、コ ロ シ ア イ !」
ああ、本当の言葉だ。本当にこのトカゲは恐ろしいことを言っている。
「え、えっとー」
沈黙に耐えかねてか、四津谷が口を開いた。
「アレだよな!あの、古代ローマの超でっけー円形闘技場!」
「ああ、きっとそれだ!一度運動選手として見に行きたいんだ!」
四津谷の独り言?に伊織が賛同する。
「奇遇〜今度一緒に観に行かね?行くならやっぱコロッセオだぜ!」
「いいねぇ!ついでにヴェネツィアとかも行きたいよな!」
「ばっかもーーーん!!!」
二人の会話に突然日曜国民的アニメのお父さんのような怒鳴り声が入る。
「何何?コロシアム生活って!コロシアムで生活すること!?この学校のどこが円形闘技場なの!?」
二人の馬鹿さにも呆れるが、そっちであって欲しいと思ってしまうのはきっと他の誰もが同じだろう。
「大体ねぇ…」
学園長の声のトーンが真剣になる。
「こんなボロい学校のどこがコロシアムみたいな立派な施設に見えるってんだよ!」
ボロい学校…。
確かにボロい。
「確かに、希望ヶ峰学園なのに木造建築で昭和の学校かよって感じだし周りは森だらけで人が通うようなとこじゃないって思うよ」
百鬼の言う通りだ。
周りは森で木以外何も見えない。
たまにドスン、ギイィイイなどと音はするが。
「…プッ、アハハハハ!まさかこの学校が希望ヶ峰学園だとでも思ってたの!?!?こんなんそこらへんに放置されてた廃…いや、僕が建てた学校に決まってんじゃん!」
その言葉に絶望する。
希望ヶ峰学園のフィールドにも立てず
どこか分からない場所で人殺し大会。
そんなの許されてたまるもんか。