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お茶の話

まだ人間の手で侵されていない美しい海の底、ポセイドンは1人、岩に座り込み黄昏ていた。
「私はこれからどうすればいいんだ。クロノスに飲み込まれたからといって、復讐するも」
ため息をついた。ぷくぷくと小さな泡が上に向かって流れていった。
「冷龍は消滅してしまい、アンピトリテには……顔向け出来ない。ゼウスの命令に従ったりするのももう嫌だぁ……」
またぷくぷくと小さな泡。
「くぴっ」
「そうかぁ、冷龍、慰めてくれるか……ってえぇえ!? お前、消滅したはず」
ポセイドンの膝にクロノスたちとの戦いで消滅したはずの冷龍がいた。
「生きていたのか」
「ぐびー……」
ポセイドンは冷龍を抱き締めた。
冷龍は苦しそうに鳴いているがポセイドンはそれに気付かない。
「ちょっとあなた」
ポセイドンが苦労して口説き落としたアンピトリテが後ろにいた。顔が引きつるポセイドン。
「あれだけ直接戦うのはやめてと言ったのに、よりによって覚醒したヘルメスと戦うだなんて!」
「あ、いや、違うんだ、あれは命令……」
アンピトリテの後ろに熱龍がいる。
熱龍は海中では炎は出ず、熱湯になる。
「何が違うの?」
熱龍はポセイドンに今にも襲いかかりそうだ。
冷龍もポセイドンを離れ、アンピトリテの元に泳ぎ寄った。
「ラグナロクはもう起こさないんじゃなかったの?静かに海の底で暮らすんじゃなかったの?」
「アンピトリテ、私は……」
「何? あなたなんか煮物になって煮崩れちゃえばいいのよ」
熱龍がポセイドンに襲いかかった。
「アンピトリテ、私はゼウスが気に入らないだけだ! あいつとクロノスさえいなければ争いはなかったんだ!」
ポセイドンは熱龍の攻撃を避ける。
「前々から言ってるけど、あなたじゃゼウス様に敵わないでしょ?それは分かってるのよね?海のゼウス様?」
「は?」
ポセイドンはカチンときた。ポセイドンの背後に稲妻が走る。
「クロノスたちはそれでも戦うんでしょうけど」
「何が言いたいんだ」
「あなた一人で戦うのは反対ということよ」
アンピトリテは心配そうにポセイドンを見つめた。ポセイドンはその眼差しに惚れて口説き落としたのである。
熱龍もいつの間にか、湯飲みに収まっている。
「分かった? あなたはゼウス様に敵わない。誰と戦うにしても、一人で馬鹿みたいに突っ込んで行ったのでは勝てないわ。私みたいに口説きおとしなさいな」
アンピトリテはポセイドンの頬に手を当て、顔を近づける。
「あ、はい……」
「分かったならよろしい」
こうしてポセイドンは、一緒に戦う仲間を見付けに旅立つのである。
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