お茶の話
カイロスは時間を動かせないでいた。
ポセイドンが馬を作れないからである。
「ポセイドン様、無理をされない方が」
「に、人間が……神をあまく見るなっ!」
「ああ、またウニですよ」
ウニは地面に転がった。
時空間ですればウニは消えるのだが、エネルギーが足りない。カイロスは温羅に腕を斬られて回復しきらないでいた。
「デメテルさんは消えたようですけど、僕たちがこの様じゃ……」
三成も疲労がたまっている。
「カイロス殿、私はこれからどうすれば元の居場所に戻れるのか、教えて頂きたい。一刻も早く……」
「待ってください。そんな疲れた身体では戻せません。あなたの役目が果たせず、時空が狂って戦に負けますよ、死にますよ!」
三人は同時に溜め息をついた。ポセイドンは地面に座り、続けて口を開いた。
「カイロス、馬が作れない、どうすればいいんだ」
「……簡単で、時間を戻せばいいだけです。ただ、三成さんの記憶は僕たちと出会う前に戻ります」
すかさず三成が話に入った。
「では、お二人と出会った後の記憶は無くなると」
「はい、残念ですが。でも、それと同時に疲労感も当時に戻ります」
「三成……」
ポセイドンはがっかりした三成にかける言葉もなかった。
「……あ、いや、それがいい。そうしたらポセイドン様はもう馬を作らなくてよくなり、傷を癒すことに専念できるのであろう?」
「それでいいのか? 記憶が消えるのだぞ」
「……カイロス殿」
カイロスは黙って頷いた。
「三成さん、舌を噛まないようにしてくださいね」
カイロスが片手で宙に円を描くと、黒い穴があいた。
「うむ、ようやく戻れるのだな……」
三成は歯をくいしばり、目をつぶった。
「このくらいの時間かな……はあっ!!」
「ぐあっ!」
三成はカイロスに背中を突き飛ばされ、時空間に入った。
「……こ、これは」
まぶたを開くと、今までのポセイドンとカイロスの姿が走馬灯のように三成の進む方向とは逆に流れていた。
「ポセイドン様、あんなに傷を負って死なないのはやはり神だからか……あ、カイロス殿だ。あの方は戦は得意ではなさそうだが、このようなことが出来るのは……あれ……私は何を?」
だんだん衝撃が三成の身体に加わり、時空間の出口に近づいてきた。
光が眩しい。
「ぐあっ!」
ポセイドンは誰かにに言われたことを思いだし、歯をくいしばった。
「これで戻れる」
その三成にはもう先ほどまでの記憶は無く、誰かに歯をくいしばらないといけないと言われたことしか頭に残っていなかった。ほぼ何も覚えていない。
気が付くと三成は馬小屋の前に立っていた。
秀吉軍、高松城総攻撃前。
「嫌な予感がする。あの城は平城、三方が沼地、残りの一方は堀……総攻撃を秀吉様は仕掛けようとされているが、果たして……」
三成の予想通り、高松城は城兵の抵抗が激しく、秀吉軍は何百もの死者を出した。
しかし、秀吉の「水で守られているなら、水で攻めたらどうか」という呟きを黒田官兵衛が実行に移した。それにより高松城は水没。
「なんとも幻想的な景色だ、なぁ、三成」
「ああ、秀吉様はさすがだな」
三成は、朝日を浴びた高松城を親友の大谷吉継と眺め、初陣は無事、勝利で終わったかに見えた。
ポセイドンが馬を作れないからである。
「ポセイドン様、無理をされない方が」
「に、人間が……神をあまく見るなっ!」
「ああ、またウニですよ」
ウニは地面に転がった。
時空間ですればウニは消えるのだが、エネルギーが足りない。カイロスは温羅に腕を斬られて回復しきらないでいた。
「デメテルさんは消えたようですけど、僕たちがこの様じゃ……」
三成も疲労がたまっている。
「カイロス殿、私はこれからどうすれば元の居場所に戻れるのか、教えて頂きたい。一刻も早く……」
「待ってください。そんな疲れた身体では戻せません。あなたの役目が果たせず、時空が狂って戦に負けますよ、死にますよ!」
三人は同時に溜め息をついた。ポセイドンは地面に座り、続けて口を開いた。
「カイロス、馬が作れない、どうすればいいんだ」
「……簡単で、時間を戻せばいいだけです。ただ、三成さんの記憶は僕たちと出会う前に戻ります」
すかさず三成が話に入った。
「では、お二人と出会った後の記憶は無くなると」
「はい、残念ですが。でも、それと同時に疲労感も当時に戻ります」
「三成……」
ポセイドンはがっかりした三成にかける言葉もなかった。
「……あ、いや、それがいい。そうしたらポセイドン様はもう馬を作らなくてよくなり、傷を癒すことに専念できるのであろう?」
「それでいいのか? 記憶が消えるのだぞ」
「……カイロス殿」
カイロスは黙って頷いた。
「三成さん、舌を噛まないようにしてくださいね」
カイロスが片手で宙に円を描くと、黒い穴があいた。
「うむ、ようやく戻れるのだな……」
三成は歯をくいしばり、目をつぶった。
「このくらいの時間かな……はあっ!!」
「ぐあっ!」
三成はカイロスに背中を突き飛ばされ、時空間に入った。
「……こ、これは」
まぶたを開くと、今までのポセイドンとカイロスの姿が走馬灯のように三成の進む方向とは逆に流れていた。
「ポセイドン様、あんなに傷を負って死なないのはやはり神だからか……あ、カイロス殿だ。あの方は戦は得意ではなさそうだが、このようなことが出来るのは……あれ……私は何を?」
だんだん衝撃が三成の身体に加わり、時空間の出口に近づいてきた。
光が眩しい。
「ぐあっ!」
ポセイドンは誰かにに言われたことを思いだし、歯をくいしばった。
「これで戻れる」
その三成にはもう先ほどまでの記憶は無く、誰かに歯をくいしばらないといけないと言われたことしか頭に残っていなかった。ほぼ何も覚えていない。
気が付くと三成は馬小屋の前に立っていた。
秀吉軍、高松城総攻撃前。
「嫌な予感がする。あの城は平城、三方が沼地、残りの一方は堀……総攻撃を秀吉様は仕掛けようとされているが、果たして……」
三成の予想通り、高松城は城兵の抵抗が激しく、秀吉軍は何百もの死者を出した。
しかし、秀吉の「水で守られているなら、水で攻めたらどうか」という呟きを黒田官兵衛が実行に移した。それにより高松城は水没。
「なんとも幻想的な景色だ、なぁ、三成」
「ああ、秀吉様はさすがだな」
三成は、朝日を浴びた高松城を親友の大谷吉継と眺め、初陣は無事、勝利で終わったかに見えた。
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