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お茶の話

深夜の火がない暖炉、机の上にひとつのランプ。椅子に座ってヘスティアは本を読んでいる。

窓からひとつの風が入ってきた。

「あら、ヘルメス、いらっしゃい」

「邪魔するぞ」

ヘスティアはどんな話をしてくれるのかウキウキしている。ヘルメスはヘスティアの向かいの椅子に座り、話始めた。

「今日は探りたいことがあって来た」

「カイロスのこと?」

「ああ。今クロノスの体調が悪くなっていて、時空間も歪みが生じている。もしかしたらカイロスは強敵と戦ってるんじゃないかと思ってな」

「あの子、あまり強くないですものね」

「それで、誰と戦っているかを知りたいのだが……」

ヘスティアは苦笑いを浮かべた。

「その……知っていれば、でいい」

「……ごめんなさい、知らないわ」

「……そうか、ありがとう」

ヘルメスは去ろうとした。

「ヘルメス」

「何だ」

「お話を」

「すまない、時間があまりないんだ。クロノスの調子が悪い」

ヘスティアは笑う。

「面倒見が良いのね」

「本当にすまない……」

「優しいヘルメスのために、教えてあげる」

ヘスティアは本を閉じ、椅子から立ち上がって暖炉に近づいた。すると暖炉には火がともり、パチパチと音を立てた。

「今、カイロスはポセイドンと石田三成と一緒に行動しているわ」

「なんと……」

「ポセイドンは重傷、カイロスは腕に深い傷を負っている。二人とももう戦闘する力が残されていないわ。石田三成は人間だし」

「……誰と戦ってたんだ」

「温羅に憑依したデメテル」

暖炉にデメテルの温羅に憑依した姿が映し出されて、ヘルメスはぞっとした。

「倒したのか?」

「いいえ、こちらも深手を負っているけど、逃げたわ。デメテルだけならまだしも、温羅の力も加わるとなると、ポセイドンだからあそこまで戦えた……というところね」

「ならば、その時代に行って早くデメテルを倒さないとならない」

ヘルメスはガタッと椅子から立ち上がる。

「待ちなさい」

「何だ!」

「……デメテルは別の時代に移動するわ」

「別の時代? どうして」

「言ってたの。ポセイドンは役に立たないし、カイロスもしばらく動けない。もうこの時空は放っておいても思い通りになるだろう、と」

「誰が言っていた」

「ふふっ、わかってるくせに」

「……あ。すまない」

ヘスティアは鈴が鳴るようにコロコロと笑った。
ヘルメスもつられて笑う。

「二人とも死なないわ。それより、デメテルを追わないといけないわね。どの時代に行くのかはクロノスが分かるはずよ」

「そうだな、ありがとう」

ヘルメスはヘスティアにお礼を言ったあと、すぐに風となって窓から出て行った。しばらくヘスティアは窓の外を見つめていたが、暖炉の火を消し再び椅子に座り本を読み始めた。
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