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お茶の話

「さあ、いくぞ」
ポセイドンは言葉を発すると同時に氷刀で風を斬った。風は細かい氷針になり温羅のほぼ全身に刺さった。
「ぐががっ」
間髪いれずにポセイドンは温羅の懐に踏み込み腹を斬りつけようとしたが油断した。温羅の爪がポセイドンの右腕を切り裂き、鮮血が舞った。
「ぐっ」
ポセイドンは温羅からすぐに離れてまた氷針を放った。しかし、温羅は刀を振るい、全て弾き返し、ポセイドンはそれを刀で弾き落とした。温羅は体に刺さっている氷針を片手で毛をむしりとる様に抜いた。
「面白いな」
ポセイドンの目は子供がおもちゃを見付けたかのように輝いた。
「ポセ様……ベールを張ってるのにわざわざ弾き落とさなくてもいいのに」
カイロスは呆れて見物していた。
「ぐがあぁ!」
今度は温羅がポセイドンに斬りかかる。ポセイドンは真っ向から温羅の刀を受け止めた。
「ははは、さすが吉備の冠者だなっ」
「ポセ様、楽しんでるし……」


ギィイイン……キンッ!


しばらく山の中を刀の音が響く。どのくらいの時間、斬りあったのだろう。決着がつく気配がない。
「ポセ様!」
ポセイドンは今度は左腕を斬られた。温羅もあちこちの切り傷から血が流れている。
「まだまだだ」
ポセイドンが温羅の足を斬ろうとしたその時、温羅の体内から女の声が聞こえた。


甘いわね


「ぐがあぁぁあああ」
温羅は途端に叫び声をあげた。傷がふさがり姿が変わっていく。人型により近くなり、その姿はデメテルそっくりになった。
「あ……そ、そんな……おしまいだ」
カイロスは絶望した。傷を負っている自分たちはもう、いくらポセイドンでもデメテルには勝てないと感じた。
「ふぅ。カイロスちゃんもお馬鹿なポセイドンも甘いんだから」
デメテルは温羅が持っていた刀をへし折ってうっとりした。
「ふふふふふ! なんて力なのかしら! 武器がなくても海のゼウスに勝てそうね」
「おい」
ポセイドンはデメテルを睨み付けた。
「温羅と代われ」
ポセイドンに静かに怒りがこみ上げてくる。声は落ち着いているが、ポセイドンの体の周りには細かい水の粒が漂っている。
「私の楽しみを邪魔するな、デメテル」
「あの、くれぐれも殺さないように……」
カイロスは恐る恐る念をおす。しかし、ポセイドンの耳には届かない。
「もう一度言う。温羅と代われ」
せっかくの楽しみを奪われたポセイドンの怒りは増していく。
「え? 温羅ちゃんは私が食べちゃったかも。もういないわ。ふふふふふ!」
デメテルはぺろっと舌をだした。

ドーーーーーン!!!


何処かで爆発音がした。数秒後、バケツをひっくり返したような雨が降ったと思ったら霧が現れた。
「やっと楽しいことが出来たのに。デメテル、お前は許さん」
「ひえぇえ! ちょっとポセ様、何処の水なんですかそれ!!!」
「恐らくは備中高松城付近の水かと思います」
石田三成が茂みからひょこっと顔を出した。
「三成さんいつから……あれ、ぼく三成さんは狭間に残したはず」
「大分出血がひどい様ですね。ここは私に任せて、少し休まれてはいかがですか」
石田三成はいつから隠れて様子をうかがっていたのか分からないが、何か策があるのだろう。
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