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お茶の話

カイロスは温羅にゼウスの力が及んでないことを祈った。デメテルを相手にするのでさえ、苦戦したあげくに死んでしまうかもしれないのにゼウスもとなると瞬殺である。
「ワシだけ……また吉備津彦に殺された時のように寂しかった。でも、もうおぬしがおるから平気じゃ」
温羅は赤い顔でケラケラと笑った。
「……温羅さん」
「何じゃ?」
「ごめんなさい。ぼくがいるからこんなことになってしまって。」
すると、また温羅は笑う。
「なあに、心配はいらぬ。このようなことをしたのは理由があろう」
カイロスはゼウスやデメテルのこと、そしてポセイドンのことを話した。
「そうしたら、おぬしが犠牲になるではないか」
「でもそうするしかデメテルさんをこの時代から追い出したり、倒すことはできません」
カイロスは真剣な顔で温羅を見た。温羅も見つめ返す。そしてカイロスの膝に乗った。
「ワシも協力するぞ。言ったであろう? こうみえてワシは強い。吉備の冠者よ」
カイロスは優しく微笑んだ。
「なぬー!? 馬鹿にするなよ」
プンプンと怒り、自分の胸をポカポカ叩く温羅にカイロスは一時の癒しを得た。
「ごめんなさい。でも、これはぼくの責任だから……」


「カイロスちゃーん、いるんでしょー? 出てらっしゃーい」


遠くでデメテルの声が聞こえる。
「温羅さん……ぼくがデメテルさんを引き付けている間に逃げてください」
「はぁ?! 待て、ワシも……」
温羅が次の言葉を言おうとしたが、カイロスは洞窟から出ていってしまった。
「全く、あいつは人……いや鬼の話を聞かんなぁ」


「デメテルさん」
「あらー、カイロスちゃん! 何か企んでる?」
デメテルはカイロスに瞬時に近寄った。
「鬼ごっこはもうおしまいかしら?」
「いいえ、デメテル様」
カイロスは地面を蹴った。爆発的なスピードで空に浮いた。デメテルもそれについてきた。
「な……っ!」
カイロスはデメテルに背後を取られた。
「本当、弱いわね。でも、ポセイドンよりは賢くていい男」
カイロスは高速で落下し、槍で地面に叩きつけられそうになった。足の羽根で急ブレーキをかけ、火花が散った。
「ふふっ♪ ポセ様は馬鹿みたいに突っ込み過ぎですからね!」
再びカイロスは空へ舞い上がり、デメテルの脇腹を一発蹴った。
「……っ! あら! やるじゃない」
カイロスは片手に何やら黒い玉を持っている。
「ぼくにはちゃんと考えがあるんですよ」
ある程度の高さにくると、そっと黒い玉を宙に放った。
「でも、頭が良くても弱い男は嫌いだわ。だって女一人守れないなんて格好悪いじゃない」
「奇遇ですね。ぼくもあまりにも強い女神様は好きじゃないんです」
カイロスはまた黒い玉を放つ。
そこへデメテルの槍で叩きつける一撃。
「ぐああぁっ!」
カイロスは地面に叩きつけられた。
「さて、とどめね」
デメテルがカイロスにとどめをさそうとしたその時ーー
「そこまでだ!」
「くぴっ」
最初に放った玉の中からポセイドン、次に放った玉からは冷龍が出てきた。黒い玉はポセイドンたちを吐き出すと同時に透明になり消えてしまった。
「ポセ様……」
「おい、カイロス! 何で私に相談しない!」
ポセイドンはカイロスに怒った。
「馬は……できましたか?」
「は? 出来るはずがなかろう。きりんばかりだ」
ポセイドンと冷龍はカイロスの側に着地した。
「はははっ……きりん何頭作ったんですか」
「50頭だ」
ポセイドンは疲れたように言う。
「……邪魔よ。お馬鹿なポセイドン様」
デメテルは標的を変えてポセイドンに攻撃を仕掛けた。
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