お茶の話
カイロスは時空の狭間の狭間にいる。
「ふぅ、ここから出るのはやっぱ勇気いるなぁ」
足で時空の裂け目をつつきながら考え事をしていた。
「デメテル様……多分ぼくは時間稼ぎというよりやられちゃうかな……弱って時空間からポセ様が出られるようになって、デメテル様とポセ様が戦う」
考えただけでも地獄絵図だ。ポセイドンは戦闘狂。そして今回の戦は水攻め。
「ぼくが何とかして防がないと」
カイロスは「えいっ」と時空の狭間から空中へ飛び出した。そしてすぐに「閉じろ」と狭間の裂け目に手のひらを向け、時空間と時代を隔離した。
カイロスは出来るだけ敵に見つかりにくい山の中に着地し辺りを見渡しながら歩いて進んでいった。時間が止まっているせいか、風もなく不気味なほど静まりかえっている。時を止めるのは慣れているが、敵が動いているとなるとどうも落ち着かない。
「……やっぱりポセ様に相談した方が良か……っ!」
ヒュン
ポセイドンの顔を何かがかすめた。頬からは血がにじんだ。
「あはっ、カイロスちゃんじゃないのー。力が強くなっちゃっててびっくり。てっきりクロノスかと思ったわ」
「こ、こんにちは♪ デメテル様」
カイロスは平常を装い、挨拶した。
「ねえ、いくつか質問に答えてくれるかしら」
デメテルは槍を構えた。先ほどカイロスの頬をかすめたのはこの槍である。カイロスの背中を嫌な汗がつたう。
「クロノスと組んでるの?」
「い、いいえ」
カイロスは逃げる体勢に入る。両足に生えている羽根に力をこめた。
「ホントかしら」
「ホントです。ゼウス様にクロノスが敗れた時、ぼくはクロノスを感知出来なくなりました」
嘘である。人間の主観的な時間を表すカイロスはクロノスが人間の魂の器にいるヘルメスと一緒だということはわかっている。
「そうなのね。でも、だったら何故こんな事をするのかしら」
カイロスはゆっくりと後退りし始める。
デメテルが間合いを詰めようとしたその時、カイロスは少し宙に浮き、いっきに加速した。山の木々をかわしながら少しずつ上昇し、空に舞い上がった。
「……ふう、びっくりした。まさかあんなに早く見付かるなんて。やっぱ目立つのかなこの力、直ぐ見つかっちゃうや」
カイロスは国全体を見渡しながら、先ほどとは遠く離れた山の中に入った。
「どこかに隠れて作戦を考えなきゃ」
そこを右じゃ、すぐ洞窟がある
「え」
右がわからぬか?
「……誰」
カイロスはデメテルへの恐怖のあまり、自分の耳がおかしくなったのかと思った。子供の声が聞こえてくる。
「分からぬなら、ワシが案内しよう」
ガサガサと茂みから音をたてて小さな小鬼が現れた。頭に二本の角を生やし水色の着物に虎柄の羽織を羽織っている。腰にはひょうたんをぶら下げている。
「皆動かんようになってしまってな、誰か動ける者を探しておった」
小鬼はカイロスについてくるよう促した。
カイロスは黙ってついていった。本当にすぐ洞窟につき、二人は入り口付近で立ち止まった。
「この、例えようのないことはおぬしがやったんか」
「……はい」
カイロスは警戒している。小鬼はカイロスをじっと見つめ、やれやれ、とため息をつきながら言う。
「ここはワシの国じゃ。おぬしとワシが出会ったのも何かの縁、何か困っておるのだろう? ほれ、話してみぃ」
小鬼は近くの石にドカッと座った。ひょうたんの栓を抜き、お酒をぐいっと飲んだ。
カイロスは小鬼は敵ではないような感じがした。
「この国を元に戻してくれるなら、ワシは力になる」
小鬼はまた一口ぐいっと飲んだ。そしてひょうたんに栓をし、自分の胸をドンと叩いた。
「ワシは温羅。こう見えて、結構強いぞ」
「ふぅ、ここから出るのはやっぱ勇気いるなぁ」
足で時空の裂け目をつつきながら考え事をしていた。
「デメテル様……多分ぼくは時間稼ぎというよりやられちゃうかな……弱って時空間からポセ様が出られるようになって、デメテル様とポセ様が戦う」
考えただけでも地獄絵図だ。ポセイドンは戦闘狂。そして今回の戦は水攻め。
「ぼくが何とかして防がないと」
カイロスは「えいっ」と時空の狭間から空中へ飛び出した。そしてすぐに「閉じろ」と狭間の裂け目に手のひらを向け、時空間と時代を隔離した。
カイロスは出来るだけ敵に見つかりにくい山の中に着地し辺りを見渡しながら歩いて進んでいった。時間が止まっているせいか、風もなく不気味なほど静まりかえっている。時を止めるのは慣れているが、敵が動いているとなるとどうも落ち着かない。
「……やっぱりポセ様に相談した方が良か……っ!」
ヒュン
ポセイドンの顔を何かがかすめた。頬からは血がにじんだ。
「あはっ、カイロスちゃんじゃないのー。力が強くなっちゃっててびっくり。てっきりクロノスかと思ったわ」
「こ、こんにちは♪ デメテル様」
カイロスは平常を装い、挨拶した。
「ねえ、いくつか質問に答えてくれるかしら」
デメテルは槍を構えた。先ほどカイロスの頬をかすめたのはこの槍である。カイロスの背中を嫌な汗がつたう。
「クロノスと組んでるの?」
「い、いいえ」
カイロスは逃げる体勢に入る。両足に生えている羽根に力をこめた。
「ホントかしら」
「ホントです。ゼウス様にクロノスが敗れた時、ぼくはクロノスを感知出来なくなりました」
嘘である。人間の主観的な時間を表すカイロスはクロノスが人間の魂の器にいるヘルメスと一緒だということはわかっている。
「そうなのね。でも、だったら何故こんな事をするのかしら」
カイロスはゆっくりと後退りし始める。
デメテルが間合いを詰めようとしたその時、カイロスは少し宙に浮き、いっきに加速した。山の木々をかわしながら少しずつ上昇し、空に舞い上がった。
「……ふう、びっくりした。まさかあんなに早く見付かるなんて。やっぱ目立つのかなこの力、直ぐ見つかっちゃうや」
カイロスは国全体を見渡しながら、先ほどとは遠く離れた山の中に入った。
「どこかに隠れて作戦を考えなきゃ」
そこを右じゃ、すぐ洞窟がある
「え」
右がわからぬか?
「……誰」
カイロスはデメテルへの恐怖のあまり、自分の耳がおかしくなったのかと思った。子供の声が聞こえてくる。
「分からぬなら、ワシが案内しよう」
ガサガサと茂みから音をたてて小さな小鬼が現れた。頭に二本の角を生やし水色の着物に虎柄の羽織を羽織っている。腰にはひょうたんをぶら下げている。
「皆動かんようになってしまってな、誰か動ける者を探しておった」
小鬼はカイロスについてくるよう促した。
カイロスは黙ってついていった。本当にすぐ洞窟につき、二人は入り口付近で立ち止まった。
「この、例えようのないことはおぬしがやったんか」
「……はい」
カイロスは警戒している。小鬼はカイロスをじっと見つめ、やれやれ、とため息をつきながら言う。
「ここはワシの国じゃ。おぬしとワシが出会ったのも何かの縁、何か困っておるのだろう? ほれ、話してみぃ」
小鬼は近くの石にドカッと座った。ひょうたんの栓を抜き、お酒をぐいっと飲んだ。
カイロスは小鬼は敵ではないような感じがした。
「この国を元に戻してくれるなら、ワシは力になる」
小鬼はまた一口ぐいっと飲んだ。そしてひょうたんに栓をし、自分の胸をドンと叩いた。
「ワシは温羅。こう見えて、結構強いぞ」