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お茶の話

石田三成は二人を交互に見た。
「これは夢幻か」
「現実だ」
ポセイドンが静かに答えた。
石田三成は宙に浮いている物を触ろうとしたが体をすり抜けていく。
「ここは時空の狭間です。外の時間は止まっています。まぁ、織田軍の馬は全てデメテル様に逃がされたままですので、安心は出来ないですけどね」
「……だがしかし、このままこうしていても私は戦に出ることが出来ない、馬もいなければかなり不便だ。私が馬をどうにかする! だからお願いだ、私を元の世界に戻しては頂けないか」
石田三成が頭を下げる。
「それは出来ない」
ポセイドンが申し訳なさそうに答えた。
「何故です!?」
「このまま外の時間を動かすと、秀吉さんが負けてしまいますよ♪ 今味方についてくれている宇喜多がどうなるか分からないですし」
三成はカイロスの言うことに驚いて目を見開いたが、何も言えなかった。
「元はといえば、私が無闇にあの馬に触ったのがいけなかった。私が馬を何としてでも作らないといけないと思っている」
「馬を……作る」
カイロスは驚いている三成を見るのが楽しそうである。
「いつになるか分かりませんけどね」
ポセイドンはカイロスの言葉にイラッとしながら何かを作った。
「……これは!」
「カバですね」
三成はまた驚いた。今度は興奮もしている。
「はっ! はあぁ! くっ!」
牛、きりん、リスと動物が生まれた。
「ポセ様ー、それそろ限界なんじゃないですか」
「まだまだぁ! はぁ! はっ……」
牛、タコ、珊瑚が生まれた。
「ぽせい……様、無理はされない方が」
「無理なもんか」
ポセイドンが言葉を言い終わらないうちに、新たな生き物、ヒトデが三成の手に生まれた。三成は気色が悪いので振り払おうとしたが、必要がないものなので三成の手を直ぐにすり抜けて何処かへ消えていった。
「それに私はポセイドンだ。呼びにくければ内海で良い……!」
今度は三成の手のひらに小さなタコ。三成は小さな悲鳴を上げ、顔が引きつった。それでもタコはお構いなしに三成の手のひらの上をうねうねと動き、三成をすり抜け、時空間に消えていった。
「……ふう」
ポセイドンはその場に乱暴に座り込んだ。
「すまない、しばらく休憩させてくれ」
「ポセイドン様……」
三成がポセイドンの隣にあぐらをかいた。
「ポセ様、ぼく、ちょっと用事があるので外に出ますね。またしばらくしたら戻ります♪」
「あ、ああ。何をしに行くんだ」
ポセイドンはカイロスを見上げた。
カイロスの表情が一瞬曇る。
「まぁ……これだけの規模の時間を止めるのはぼくには難しかった、ということです」
「止まっていない部分もあるのか」
「うーん、部分ていうか」
カイロスは戦好きなポセイドンを刺激しないよう、ゆっくり考えて説明しながら、徐々に宙に浮き上がった。
「デメテル様が動いています。恐らくはゼウス様の何らかの力が加わったからだと考えられますね」
「待て、まさかお前!」
ポセイドンは慌ててカイロスの足を掴もうとするが、もう手の届かない高さまで行っていた。
「お前にデメテルは無理だ」
「いいえ、ぼくにも考えがあります。……いいですか、この中なら、ぼくが存在する限り安全です。馬作り、頑張ってくださいね」
カイロスは必要のない物たちにまぎれて静かに時空間の中を消えていった。
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