ぬら孫
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何を話す訳でもなく、ただ母と散歩するのが好きだった。
大好きな母。
この日々がずっと続くと思っていた。
でも、母が死んで、心にぽっかりと穴が空いた感覚がずっと消えなかった。
その日からあたしは変わった。
笑わなくなった、前の様に活発じゃなく、何事にも中途半端だった。
おばーちゃんもお父さんも前と変わらず接しとくれているから、あたしはそれに甘えて今の性格になってしまった。
気が付くと母と最後に散歩した場所に立っていた。
そこには母が立っており、あたしを見て笑った。
「…お母さん」
あたしの頭を撫で、優しく抱き締めてくれた。
「…ごめんなさい」
ずっと言いたかった。その言葉を、やっと言えた。
「あたしのせいで…、あたしが、何もしなかったから、お母さんは…っ」
母を抱き返し、泣き出した。
「ごめんなさい…っ」
母は頭を撫でながら体を離し、サヤの涙を拭って笑った。
(サヤ、笑って)
ペロペロ
「…んっ」
顔を何かに舐められる感触に目を開けると、猫がサヤの顔を舐めていた。
ニャー
「…おはよ」
.
居間に行くといつもの様に父が朝食を準備しており、それを眺めながらゆっくりと中に入った。
「…おはよう、お父さん」
「っ、サヤ!…気分はどうだい?」
「眠い」
「そ、そうかい…」
いつもと変わらぬ娘にホッとし、座って味噌汁を渡した。
「…おばーちゃんは?」
「確か本堂にいる筈だけど、何か用事でもあるのかい?」
「んーん」
食事を済ませ、学校に向かう前に祖母の元に向かった。
「…おばーちゃん」
「っ、サヤ…」
本堂内で座っていた祖母はサヤの声に振り返った。
「…これから学校か?」
「うん、行ってきます」
短く伝えて出ようとしたが、足を止めた。
「…おばーちゃん。お母さんがね、言ってくれたの」
振り返ったサヤの表情に、祖母は驚いた。
「笑ってって」
サヤが、笑っていたのだ。
「じゃあ、行ってきます」
「…ああ、気を付けてな」
数年振りに見た孫娘の笑みに、祖母は安心した。
.
登校途中、リクオは前方に見知った人物を見付けて思わず足を止めた。
(朝倉さん…)
昨日の事もあり、どう声を掛けていいか悩んでいると、急にサヤが振り返ってリクオを見た。
「お、おはよう。朝倉さん…」
「…」
何も言わないサヤにリクオは焦っていた。
「…リクオ君?」
「リクオだよ!…あれ?」
いつも間違う自分の名前を初めてちゃんと呼ばれた。
「おはよ」
軽く挨拶して笑うサヤに、リクオも笑顔で返した。
「朝倉さん、初めて僕の名前読んでくれたね!」
嬉しくてもう一度訪ねると。
「…リオク君?」
「だからリクオ!今言ってくれたのに何でまた忘れるの!?」
「……」←考え中
いつもの様子のサヤに戻り、リクオも安心した。
最終匹目
(もうリー君でいい?)
(投げやり!?)
【完】
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