本編
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クロコダインの放つ獣王痛恨撃にダイは倒れ、マァムは悪魔の目玉に身動きが取れなくなった。
ただ一人残ったエルダは痛む体に鞭を打ちながら、クロコダインに向かっていった。
「覚悟はいいか、小娘」
「ハァ…ハァ…」
息を乱しながらエルダはダイやマァムを見る。
(ダイ君もマァムも瀕死状態…何とか私一人でこいつを倒さないと…)
クロコダインをぎっと睨みエルダは短剣を構えた。
「そんな小さな短剣で何が出来る!?そんな物では、俺に傷を付ける事は出来んぞ!」
「どうかな…」
エルダは短剣を隠し、クロコダインに大地斬を放った。
ビキッ
「ん?…な、何!?」
クロコダインの鎧が一部砕け、エルダの方を見る。
彼女の短剣は氷で覆われていた。
「貴様、何だその剣は?」
「ただ魔法を剣にまとわせただけさ」
「魔法を…そんな事が」
驚くクロコダインに次に足元を凍らせ、攻撃しようとしたが、尻尾が襲い掛かり咄嗟に飛び上がった。
「カアッ!」
「ッ!」
クロコダインが焼けつく息を放ち、それを受けたエルダは体がマヒして倒れた。
「…っ、」
「てこずらせおって…今楽にしてやる」
足元の氷を壊し、倒れて動けないエルダに向けて、クロコダインは斧を振り上げた。
「っ…エルダ…!」
悪魔の目玉に押さえられながらエルダを見るマァム。
「っ…く…」
「もうよせ、お前は十分戦った。この俺に傷を付けたのは、女ではお前が初めてだからな」
クロコダインの言葉を聞きながら、エルダは心の中で悔いていた。
(悔しい、私はまだ死ぬわけにはいかない。あの子に会うまで…あの子を見つけるまで…死ねない…!)
力を振り絞って立ち上がろうとする。だが立ち上がる事は出来なかった。
「死ねーー!!」
「っ、エルダーー!!」
「待てーー!!」
クロコダインがエルダに止めを刺そうとしたその瞬間。扉にポップの姿があった。
「ポップ…!?」
(ポップ君…)
息を切らして現れたポップに、マァムとエルダは驚きながら彼を見た。
「誰かと思えば、あの時の臆病者ではないか。今更来て何になる?邪魔だ!失せろ!!」
クロコダインの威圧にポップは少し驚く。だがすぐにクロコダインに向き直った。
「…許さねえ!」
「何だと?」
「俺の仲間に手出しする奴は、絶対に、絶対に 許さねえぞっ!! 」
クロコダインに向かっていくポップ。だが彼の最強呪文、メラゾーマはクロコダインには効かず、早くもピンチに追われてしまった。
だがポップはある事に気付き、何と魔法の杖でクロコダインを攻撃した。
杖は粉々に砕かれ、クロコダインは何度もポップを踏んだ。
「魔法の杖で殴りかかってくるとは、魔法力が尽きて血迷ったか!?」
「ぐああッ!」
痛みに堪えながらポップは砕けた杖のかけらをブラスの足元に飛ばし、全てを飛ばすと仰向けになった。
「たいしたしぶとさだ、だが杖は砕け、魔法力も尽きた貴様に一体何が出来るというのだ?」
「くっくっくっ…ハハハハッ!全部計算ずくさ、杖を砕いたのも魔法力を温存したのも」
「な、何ッ!?」
「イチかバチか、これが最後の賭けだぜ!」
ポップは右手に魔法力を集中させた。すると、ブラスの足元にある杖のかけらが光り出した。
「ご、五芒星!?」
「これこそ、我が師アバンが得意とした伝説の呪文…!邪悪なる威力よ、退け!!」
「マホカトール!!」
ポップが呪文を唱えると、五芒星は輝き、ブラスは正気に戻った。
「こ、ここはどこじゃ!?わしは一体…ポ、ポップ君!?エルダさん!ダ、ダイ!!」
倒れている人物の名を呼び慌てるブラスにポップが声を掛けた。
「じ、じいさん!あんたは魔王軍に操られていたんだ」
「ポ、ポップ君…!?」
「あんたにダイを襲わせようってきたねえ作戦なんだ!いいか!絶対にその魔法陣から出ちゃ駄目だぞ!!」
「おのれッ!」
クロコダインは魔法陣を壊そうとしたが、手が触れただけで電撃が走り、壊す事は出来ず、倒れているポップの胸倉を掴んだ。
「小僧!貴様ッ一体何をしたのだ!?」
「マホカトール、魔を拒む光の魔法陣を作り出す呪文さ…先生みたいに島ごとまではいかねえけど、あのぐらいのやつなら俺にだって…」
「馬鹿め!今更ブラスを救った所で何になる!?」
クロコダインはポップをたたき落とし、その痛みにポップは体を震わせる。
「し、心配ねえさ。ダイが…まだダイがいる。ブラスじいさんさえ無事ならダイは思う存分戦える…てめえなんざ軽くやっつけてくれるさ…」
起き上がる事も出来ず、ダイに全てを託すポップ。その言葉にクロコダインはダイを一瞬だけ見た。
「貴様、ダイの為に命を捨てる覚悟だったのか!?」
「そんなカッコイイもんじゃねえよ。俺だって出来たら死にたかねえぜ。でもよ、仲間を見捨てて自分だけぬくぬくと生きてるなんて…」
「死ぬよりカッコ悪いやってそう思っただけさ!」
クロコダインはポップの言葉に少し戸惑いを見せた。だがそれは悪魔の目玉から聞こえたクロコダインの仲間の声に掻き消された。
そしてゆっくりとポップに近付き、斧を振り上げた。
「…許せ小僧!!」
「ポップーー!!」
斧を振り下ろそうとした瞬間、背後から黄金の光が照らし、後ろを振り返ると、瀕死状態のダイが立ち上がっていた。
「クロコダイン…許さないぞ…たとえどんな理由があったとしても俺のじいちゃんに悪い事をさせ、俺の仲間を傷付けたあんたを許す事は…出来ないっ!! 」
ダイの額に浮かび上がった紋章が光り、マァムを捕えていた悪魔の目玉は化石になって崩れた。
ポップは倒れたマァムに近付き、エルダはダイの紋章を見た。
(あれは、アバン先生が死んだ時に現れた…)
ダイは身構え、クロコダインは斧でダイの首を吹き飛ばそうとした。だが、ダイは斧を素手で受け止めた。
そして斧の一部を砕き、その部分を持ったまま、クロコダインを投げ飛ばした。
「お…おのれえ…死んでも負ける訳にはいかぁん!!」
クロコダインは右手に全エネルギーを集中させた。それは先程ダイ達を瀕死状態に追いやった獣王痛恨撃。
「いかに今の貴様の肉体が鋼のような強度でも、至近距離からこれを喰らわせれば砕けぬ筈がない!俺の最大最強の技で、あの世へ行けいっ!!」
ダイは身構えるが、今の彼に武器がなかった。
「今こそ勝利を我が手に…!」
クロコダインが技を放とうとした時、急にポップが走りだし、刺さってあった兵士の剣をダイに投げた。
「ダイ!こいつを使え!!」
ポップから投げ渡された剣を構え、エネルギーを剣に溜めていく。
「今更遅いわッ!!くらえッ!獣王痛恨撃っ!!」
「うおおおっ!!」
放たれた瞬間、ダイは剣を構えながらクロコダインに走り、紋章の力で獣王痛恨撃を避けた。
「ダーイ!今こそぶちかませっ!!俺達の先生の…あの技を!!」
「アバン、 ストラッシュ!! 」
ダイの放った技に一瞬時が止まり、誰もが二人を直視した。
「グ…フフフ…アバンストラッシュ…か…」
「!?」
クロコダインの途切れ途切れの声にダイは振り返る。
「み…見事な技だ…俺の…負けだ… ぐはあッ!! 」
クロコダインの大きく腹が裂け、その部分から大量の血が流れた。
「どうせ負けるなら…正々堂々、お前と戦って負ければよかった…」
「クロコダイン…」
流れ落ちる血を押さえながらポップの方向を見る。
「小僧…お前にも教えられたぞ…男の誇りの尊さをな…」
その言葉にポップは何も言えずにクロコダインを見ていた。
「…お前達のような相手に敗れたのであれば…全く悔いはない…むしろ、誇るべき事だ…己の立場を守る為に卑怯な手段を使ってまで目先の勝利に走った俺は…俺はっ…馬鹿だった…」
そのままクロコダインは壁まで歩き、ダイを見た。
「さらばだ、ダイ!」
「っ!」
「負けるなよ…勇者はつねに…」
クロコダインはゆっくりと壁から飛び降りた。
「強くあれーー!!」
「クロコダイン!クロコダイーン!!」
クロコダインの叫びと倒れた音を聞いたモンスター達はリーダーを失ったと知り、戦意をなくして森へと逃げて行った。
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戦い後、傷を回復させ、ダイ達はロモス王の話しを聞いていた。
「ダイ、ポップ、マァム、エルダ。そして我が城の兵士諸君!皆よく戦ってくれた!」
そしてダイの方を向いて笑顔を向けた。
「特にダイ、この度の勝利はまさにお前のおかげじゃ!」
兵士達はダイに拍手をし、それにダイは照れてしまった。
「もはや名実ともに勇者にふさわしい男に成長したと言えよう。晴れて今日から“勇者ダイ”を名乗るがよい!!」
その言葉に兵士達、それにポップやマァムやエルダも祝いの言葉を掛けた。
しかし。
「王様。俺…まだいいです!」
「な…何言ってんだよおめえ!?」
ダイの否定の言葉にポップは彼の胸倉を掴むが、ダイはそれをスッ、と取った。
「だって俺、一人じゃ勝てなかった。ポップ、マァム、エルダ、ゴメちゃん。それに、お城の皆が力を合わせたから勝てたんだ!俺が勇者なら…皆が勇者だよ!」
「ダイ君…」
「だから、せめてもう少し強くなって、皆に迷惑かけずに戦えるまで…勇者なんて呼ばないで下さい。何だか恥ずかしいや…」
ダイの発言に納得したのかロモス王は笑って答えた。
「あい分かった!さらに大きな成長を期待しておるぞ!」
その後、ロモス王は四人に宝物を差し出し、それを身につけて国民の前に出るよう頼んだ。
新しい防具を身に纏ったダイ達は国民達の前に出、盛大な歓声に囲まれた。
国民達に手を振るダイ達を見て、ロモス王は心の中で思った。
(例えお前が望まずとも、人々はお前をこう呼ぶだろう)
小さな勇者、ダイと。
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