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「…、う…っ」
意識を取り戻し、辺りを見回した。
広い空間のある洞窟に、先日見た2メートル程の丸い鏡が置かれていた。
カシャン
音に気付いて自分の体を見ると、両手足が鎖で繋がれていた。
「此処は、私が願った…」
〔ソノ通リ〕
エルダの問いに答える様に、地中から【あやしい影】が現れた。
〔ココハ己ガ願ッタ世界、ヨウヤク思イ出シタカ〕
「…全部、全部幻だったんだ」
〔確カニ幻ダガ、幻デモナイ〕
「え?」
〔ココハイワバ夢ノ世界、シカシ起コル事ハ現実。ダガソレヲ保ツ為ニモ、エネルギーガ必要〕
その言葉にエルダは影達が今までしていた事を思い出した。
「まさか…」
〔ソウ、我ラハソノエネルギーヲ集メテイタ。ダガ己ノ介入二失敗二終ワッタ。ダガ、我ラハ新タナエネルギー源ヲ見付ケタ〕
影はペンダント型の鏡を出してエルダに見せた。
〔コレヲ持ツト不安ヤ混乱ヲ抱キ、欠片ガ全て埋マッタ時己ノ強大ナエネルギーヲ頂ク〕
「強大な、エネルギー?」
〔竜ノ力〕
「っ!」
鏡に映ったエルダは驚いた表情をしていた。
〔ソノエネルギーガアレバコノ世界ハ永遠二保タレル、己モモウ絶望ヲ味ワウ事ハナクナルノダ〕
自分の闘気が鏡に奪われていき、少しずつ力が抜けていった。
(力を渡せば、ずっとこの世界にいられる…)
エルダの脳裏に、ダイの姿が映った。
(もう、あの子を失わない…)
体を楽にし、力を渡そうと思った。
ーーーエルダーーー
「…っ」
突如聞こえた声、その声に目を見開いた。
ーーーエルダ、起きてーーー
「…そ、うだ。この声」
いつも自分を心配そうに呼ぶ声、思い出した。
「…マァムっ」
鏡に願い、そして倒れた自分に駆け寄るマァム。
『エルダ!しっかりして、起きてよ!!』
ガシャンッ!
〔…ム?〕
繋がれている両手を握り、影を睨んだ。
「…渡さない」
〔何?〕
「渡さない、この力は…」
〔何故拒ム?コノ世界ニイレバ、己ハ幸セナノダゾ〕
「…かもしれない。でも、私には」
マァムの泣き顔が目に浮んだ。
「私が目覚める事を望んでいる人がいる…っ」
闘気を内に溜め込み、額に竜の紋章が浮かび上がった。
「その人の為にも、私は…っ」
「負ける訳には、いかないんだー!!」
竜闘気を放ち、その爆発で洞窟は破壊された。
.
その場一帯の地平が変わり、力を出し過ぎたエルダは鎖が取れたがその場で倒れてしまった。
〔オノレ…ッ〕
傷を負った影は巨大な鏡の前に移動し、自分の影で覆い始めた。
〔ナラバ己ヲ殺シ、全テノ力ヲ奪ウマデ!〕
暗黒闘気が放出され、鏡は巨大な黒いゴーレムへと変わった。
「く、そ…っ」
よろめきながらも立ち構えるが、直ぐに巨大な腕に囚われてしまった。
〔己の力、頂クゾ!〕
「だ、れが…っ」
逃れようともがくが出来ず、苦しさに耐えていた。
ドガッ!
ガシッ
圧迫感が消えたと同時に何かに掴まれ目を開けると、エルダはヒュンケルに抱き抱えられていた。
「ヒュン、ケル…何で、ここに」
「俺だけじゃない」
ヒュンケルの視線の先を見ると、ダイやポップ、マァムがいた。
「皆、どうしてここに…」
「こっちの台詞よ、エルダったらいつの間にか居なくなってたんだもの」
「しかも見付けたらなんかピンチみたいだしな」
「でも、間に合って良かったよ」
ヒュンケルに降ろされながら聞いていたが、拳をギュッと握った。
「私は…皆の知るエルダじゃない」
「え?」
「私は偽者よ、だから皆がここにいる必要はない。早く逃げて!」
全てを思い出したから言える、此処は私の世界じゃない。
だから皆が戦う必要もない。
「姉さんは姉さんだよ」
ダイの言葉に思考が止まった。
「強くて、皆を気遣って、時にふざけて、それが姉さんだよ」
「そうそう。大体地平変える程の化物みたいな力、ダイとお前位しか持ってないだろ!」
「そうそう…てポップ!俺の事まで馬鹿にしたな!」
「ホントの事だろ?」
ダイとポップの言い合いを呆然と眺めていると、マァムが回復呪文をかけてくれた。
「レオナも心配してたわよ、こんな奴早く倒して帰りましょ!」
「マァム…わっ!」
髪がぐしゃぐしゃになるまで撫で回され、ヒュンケルはエルダを見た。
「お前はお前だ」
皆の言葉に不安が少しずつなくなっていると、黒いゴーレムが復活し始めた。
「こいつ、まだ動けるのかよ!?」
「だったらもう一度!」
ダイとマァムが技を放ってゴーレムの岩の体をバラバラにするが、直ぐに元通りになってしまった。
「これじゃキリがないわ…」
「エルダ、奴に何か弱点はないのか!」
「弱点って言われても…」
その時、エルダはゴーレムの首元にキラリと光るモノを見付けた。
「あ…あそこ!首元にある鏡!」
首元にはエルダがずっと持っていた鏡が埋め込まれていた。
「あれを壊したら、もしかしたら!」
「よし、なら考えがあるぜ!」
ポップは自分が考えた作戦を皆に伝えた。
それぞれ構え、エルダもヒュンケルから予備の剣を借りて構えた。
「皆行くぞ!」
ポップが目くらましの呪文を放ち、ダイとマァムで両腕の岩を破壊。
その間にヒュンケルが頭を攻撃して体勢を崩した。
「エルダ!」
ヒュンケルの声にエルダは走り、破壊された岩を踏み台に飛び上がった。
狙うは、首元の鏡。
「ハアアアッ!!」
渾身の一撃を放って鏡を貫き、首元の岩をも破壊した。
〔グオオオオッ!〕
断末魔を上げてゴーレムは崩れ落ち、再生する事はなかった。
「お、わった…」
疲労にヨロけたエルダをダイが支え、彼に捕まりながら他の皆を見渡した。
「やったね姉さん!大成功だ!」
「まさかホントに上手く行くとはな。ま、やったな!」
「エルダ大丈夫?もう一度ベホイミしようか?」
それぞれに笑い掛けていると、エルダの体が光り出した。
「ね、姉さん!?」
「まさか、さっきのゴーレムがまだ!?」
崩れたゴーレムを見るが岩は風化しており、エルダは自分の手を見て握った。
「漸くね、夢から覚めるの」
「夢?」
謎な事を言うエルダに首を傾げていると、エルダはダイを抱き締めた。
「姉さん?」
「約束する、絶対に貴方を見付ける。私は、諦めないから」
意味が解らず混乱するダイを他所に、ヒュンケルを見た。
「ヒュンケル。もし戦う力を失ったら、貴方はどうする?」
突然の質問、だが以前にも似た様な事を聞いた気がする。
ならば
「答えは変わらない。それでも俺は、前を向く」
その答えに、ヒュンケルの両手を握った。
「貴方も、必ず元に戻してみせるから」
「エルダ…」
ニッコリと笑い、エルダから放たれる強い光に皆目を閉じた。
.
ゆっくりと目を開けると、どこかの一室に寝かされており、視線を横にずらした。
「エルダ…っ」
そこには、泣きながら自分を見て笑うマァムがいた。
「…マァム」
「よかった…!どこか痛い所とか、苦しい所とかない?」
涙を拭いながら心配する彼女に、エルダはゆっくりと言った。
「…夢を見ていたの」
「え?」
「とても幸せで、でも、とても悲しい夢を…」
そう言い、エルダの目から涙が溢れた。
+++
目覚めてから、今までの事を全て聞いた。
あの鏡の前で倒れたエルダは謎の眠りに付き、ポップとマァムは直ぐに彼女をパプニカまで運んだ。
ポップは原因を調べる為あちこち動き、マァムはエルダの側でずっと呼び掛けていたらしい。
そして一月振りに、エルダは目を覚ました。
城の屋上に立ち、空を見上げるエルダ。
左腕で、失った右腕の袖を掴んでいた。
ガチャッ
そこに現れたのはヒュンケル。彼は何も言わずエルダの横に立ち、顔を見た。
「…夢の中でね、ダイに会ったの」
唐突に、エルダが話し出した。
「あの子に約束したの。絶対に見付ける、諦めないって」
そして、ヒュンケルを見上げた。
「それに、貴方も元に戻してみせるって」
その言葉にヒュンケルは動揺した。
「しかし、俺は…」
「世界は広いんだから、もしかしたら凄い回復薬があるかもしれないでしょ?」
「エルダ…」
「そう信じてる。私のアバンのしるしは『信念』なんだから」
ヒュンケルの肩を軽く叩き、城内に入って行った。
.
その数日後。
「エルダが… またいなくなったー!? 」
レオナの叫びと共に手元にある手紙には。
『また旅に出てくる、じゃあね~♪
エルダ』
という内容だった。
マントをなびかせながら歩き、エルダは空を見上げた。
「さあて、今度はどこを探そうかな?」
彼女の旅が、再び始まった。
.
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