外伝
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ーーーエルダ、エルダーーー
この声…知っている、なのに思い出せない。
貴方は誰?
「ーーーエルダ?」
「…だ、れ?」
「もう寝ぼけてるの?あたしよ、マァムよ」
「…マァム?」
目を開けると、マァムが自分を起こしたらしい。
「エルダ大丈夫?最近あちこち行って疲れたんじゃない?」
「いや、そんな事は…」
「…ねぇ!少し気分転換しない?」
「え?」
マァムに手を引かれ、部屋を出て行った。
鏡をベッドに置いたまま。
.
マァムに連れられて部屋を出たが、何やら城内が騒がしい事に気付いた。
「…マァム、何かあるの?」
「あのね、今夜ここで舞踏会をするんですって!」
「ぶとうかい…」
その単語に、エルダはマァムが戦う姿を想像した。
「マァム、そんなに私と戦いたいの?」
「違うわよ!踊る方!」
辿り着いた部屋には、様々なドレスが置いてあった。
「あ~、舞踏会ね…」
「レオナがね、好きなの選んでいいって!エルダはどれにする?」
「いや、私は遠慮した「あ!これなんてどう!?」
「………任せます」
マァムのはしゃぎ様に嫌とは言えず、側にある椅子に座って呆然と眺めた。
夜になり、国中の人々が集まる中、ダイ達も会場前でマァムとエルダを待っていた。
ダイは青、ポップは緑、ヒュンケルは黒のタキシードを着ているが、ダイは首元を何度も触っていた。
「ダイ、お前いじり過ぎだぞ」
「だって苦しくて、これ取っちゃダメかな?」
「ダメだろ。いいか、こういう所ではビシッとした格好で!」
「だったら頭のバンダナを取りなさいよ」
「どわっ!」
背後からの声に飛び上がりつつも振り返ると、そこにはダークブルーでオフショルダーやスリットが入ったロングドレスに、右サイドで緩い三つ編みをしたエルダが立っていた。
「折角決まってるのにそのバンダナで台無しになってるよ」
「来て早々嫌味か!」
「姉さん綺麗!似合ってるよ!」
「ありがとダイ」
「あれ?マァムは一緒じゃねぇのか?」
「ヒールに苦戦中」
エルダの後方を見ると、淡いピンクのワンピースドレスを着て、ポニーテールのマァムがゆっくりと歩いていた。
ポップにマァムの側に行く様に言い、エルダはダイの前で屈むと首元の蝶ネクタイを取った。
「え?取ってもいいの?」
「無理にしなくてもいいの。これで良し」
襟を整えて頭をポンッと触り、ヒュンケルを見た。
「似合うな」
「……」
二人の雰囲気にダイはポップとマァムの元に行き、エルダはゆっくりと話し出した。
「…さっきはごめん、心配してくれたのに」
「気にしていない」
ヒュンケルの表情で本当に気にしていない事は解ったが、じっと見られて視線を反らした。
漸くマァムも追い付き、会場に入った。
中では街の人々や城の者達が集まっており、ダイはレオナの元に向かい、ポップはドキドキしながらマァムと踊り始めた。
ヒュンケルもエルダを誘おうとしたが、彼女は迷わず飲み物を取って壁側に向かい、自分も向かおうとしたが。
「ヒ、ヒュンケル!私と踊って!」
押し気味のエイミに捕まり、出来なかった。
一方エルダは飲み物を飲みながら会場内を見渡し、自然と溜め息を付いた。
昔一度だけあった。城の者達が集まった小さなパーティ、自分の側には常に母がいた。
ハァ、とまた出した溜め息と同時に呼ばれた名に顔を上げ、いつの間にか側にいたヒュンケルを見た。
「ヒュンケル」
「お前…来たくなかったのか?」
「唐突だな。…まあ、そうだね」
飲み物を飲み干し、グラスを見た。
「昔、一度だけあったんだ。母さんと一緒にパーティに出て、過ごして…」
小さくなっていく声に、ヒュンケルはグラスを取った。
「一曲付き合え」
手を引かれた先はダンスホール、その先を見てエルダは動揺した。
「え?ヒュンケル踊れるの?」
「少しな」
「無理して踊らなくていいんだよ、私足踏まれたくないよ!」
「…」
失礼な態度に少々怒るが、構わず強めに引っ張った。
「わっ」
エルダを引き寄せ踊り始めた。
「踊ってる…何で?いつ覚えたの?」
「……」
「あ、わかった。アバン先生に教わったんでしょ?」
「聞くな」
図星を突かれて癪な顔をしたヒュンケルに、エルダは笑った。
「まさかこんな風に、ヒュンケルと踊る日が来るとはね、夢みたいだ」
「そうだな。だが、夢じゃない」
踊りながら辺りを見回した。そこにいる人々は、皆笑顔だった。
「お前も願った『誰もが欠ける事のない、平和な日々』だ」
「ーーー、え?」
グラッ
「わっ!」
足がフラ付き、ヒュンケルにもたれかかった。
「大丈夫か?」
「ごめん、大丈夫…」
少し休むと言ってその場を離れ、バルコニーに向かった。
外の風を受けながら、エルダは先程のヒュンケルの言葉に疑問を持っていた。
(願った…私が?いつそんな事を)
頭に手を置いて気持ちの整理をするが変わらず、不意に城壁のある一部に目が行った。
何かが窓から侵入する様子。盗賊かと思いエルダはその場所に向かった。
向かった先はエルダの部屋。そっと中を覗くと、布を被った者が何かを探していた。
気付かれない様静かに中に入り、扉を閉めた。
「何の様だ?」
すると布人物がこちらを向くと、そいつはペンダント型の鏡を持っていた。
「っ、貴様!」
取り返そうとしたが布人物は窓から逃走、追い掛けようとしたが自分の格好を思い出し、身軽な服に着替えて剣を持ち、後を追った。
布人物は森ではなく裏路地を進みながら時折後ろを向いていた。
まるで誘導されている様に感じながらも、布人物は人気のない崖で足を止めた。
そこで布を取ると、正体は【あやしい影】だった。
「貴様、何の為に」
〔フ、フフフ…〕
影が突然笑い声を上げ、エルダは警戒した。
〔己ガ願ッタ世界ハドウダ?〕
「またその話。私は願った事なんてない、何の事を言っている!?」
〔己ハ確カニ願ッタ、ソシテ日々ハ流レタ。ソノ代償ヲ払ッテ貰オウ〕
影が奪った鏡をかざすと、欠片が全て埋まっており、その鏡にエルダを映し出した。
「……、っ!」
突如激しい眠気に襲われ、その場に膝を付いた。
「…な、にを…っ」
遂にその場に倒れ、深い眠りに落ちた。
.
ダイを探す旅の途中、私は不思議な鏡を見付けた。
そこに居合わせたポップとマァム。
二人に「この鏡に願い事をすると叶う」という迷信を聞き、私は咄嗟にこう願った。
ダイもいて、私やヒュンケルの体も万全な、そんな。
『誰も欠ける事のない、平和な日々』を過ごしたい、と。
すると鏡が突然光り出し、ポップとマァムは眩しさに目を閉じるが、エルダはまともにその光を浴び、その場に倒れた。
.