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ーーーエルダ、起きて。エルダーーー
ゆっくりと目を開けると、ダイとヒュンケルが目の前にいた。
「…ダイ、ヒュンケル」
「姉さん、大丈夫?」
「此処は…」
「俺達が調査に来た村だ。お前はあの洞窟で突然倒れたんだ」
今までの事を思い出そうと、目元に手を置いた。
「…ねぇ、二人は私に『起きて』って呼び掛けてた?」
「え?俺もヒュンケルも何も言ってないけど」
エルダの問いにダイが答え、ヒュンケルも首を横に振った。
「俺はもう一度村の様子を見てくる、お前はもう少し休んでいろ」
「ヒュンケル、俺も行くよ!」
二人は部屋を出て行き、エルダは目を閉じて溜め息を付いた。
「何で、覚めないの?それに…」
ーーーエルダーーー
「誰の声なの…」
顔を横に向け、窓の外の晴れた空を見た。
.
あの後、村人達に変わった事がない事を確認し、エルダ達はパプニカに戻った。
だが戻って早々、レオナから他にも同じ事件がある事を知らされ状況を知るダイはポップとマァムと共に、エルダはヒュンケルと共に旅立った。
「と、いうか。何で私はヒュンケルと一緒な訳?」
出発早々、エルダは愚痴をし始めた。
「俺は魔法は使えんからな、連携を考えるなら妥当だろう」
「だったらダイやポップ君でもいいでしょ」
「ダイはあまり呪文が得意ではないし、俺とポップは相性が悪い。そうなると、お前しかいないだろう」
「うわ~、サラっと毒舌吐いたなこいつ」
「何ならお前は帰ってもいいんだぞ」
「それが出来たら苦労しませんよ」
もし帰ったらレオナの怒りが落ちそう、と想像するエルダ。その表情にヒュンケルは小さく笑った。
.
今回の村は少し遠い場所の為、一晩野宿する事になった。
焚き火が消えない様小枝を入れつつ、ヒュンケルはエルダを見た。
あの洞窟で見付けたペンダント型の鏡を持ち帰っており、その鏡を見ていたが、視線に気付いて顔を上げた。
「何?」
「いや…悩みは解決したのか?」
「え?」
「以前、城で動揺していた時があっただろう」
ヒュンケルの問い掛けに、エルダは鏡を持つ右腕に目を向けた。
「…夢を見たの」
「夢?」
「その夢の中では、魔王軍との戦いでヒュンケルは戦えない体になり、私も右腕を失い、ダイは、何処かへ消えてしまった…」
左手で右腕を掴みながら、話を続けた。
「だから、思うんだ。今いる此処が夢で、私は覚めない夢の中にいるのかなって」
最近思う様になった。本当は今が現実で、あの辛い日々は全て夢だったのではないかと。
出来る事ならそう思いたい、でも心の中の何かが言っている。
『此処は違う』と
「なんて、こんな話信じないだろうけどね。まあただの戯言だと思ってくれれば「思わない」
遮った声にヒュンケルを見ると、彼はエルダの側に座り、真剣な眼差しを向けながらエルダの右手を握った。
「もしその話が本当で、俺は戦えなくなっても…」
「俺は、前を向いているだろう」
その言葉に目を見開き、ヒュンケルは手を離してエルダの頭をポンポンッと軽く叩いた。
「火の番は俺がする、お前は寝ろ」
「…あ~、ハイハイ。何かあったら起こしてよ」
「ああ」
マントに包まって横になり、眠りに入るエルダをヒュンケルは黙って見ていた。
翌日、無事村に到着したが誰もおらず、前と同じ状態に付近を捜索し始めた。
すると洞窟を発見し、中に入ると牢屋に捕らわれる村人達と、【あやしい影】達が鏡を持ってウロウロしていた。
二人は手分けして影達を倒し、村人達を解放した。
カチャンッ
「?」
胸元から音がして中に入れていたアバンのしるしとペンダント型の鏡を出した。しるしは普通だったが、鏡の欠片が一つ増えていた。
「エルダ、どうした?」
「ヒュンケル、この鏡…」
近寄って来たヒュンケルに鏡の事を話そうとした時。
ーーーエルダーーー
「…っ」
「エルダ!」
また聞こえた謎の声に倒れかけるエルダを、ヒュンケルは受け止めた。
「エルダ!」
(誰なの?私を呼ぶのは…)
ーーーエルダーーー
(誰なの…!?)
「エルダ!」
ヒュンケルの怒鳴る様な声に意識を戻し、彼を見上げた。
「…ヒュン、ケル」
「大丈夫か?」
「…うん、ごめん」
「…とにかく、まずは此処から出るぞ」
言いたい事が色々あるが、先ずはエルダを休ませる事が先決と思い、洞窟を出た。
村人達に何があったか尋ねるが原因は解らず、特に変わった事がないと解ると、二人はパプニカに戻った。
城に戻るとヒュンケルは休めという言葉と共にエルダを部屋に押し込め、仕方なく休む事にした。
ベッドに腰を下ろし、胸元から鏡を出した。
突如増えた鏡の欠片、今回の影達が集める闘気を見れたのも自分だけ。
だとすれば
「この鏡が、この世界から目覚める鍵なの?」
その後、帰還したダイ達を迎え、ペンダント型の鏡を確認すると、欠片が一つ増えていた。
.
再び起こった事件にエルダは皆が止める間もなく現場に向かい、今回も出現したあやしい影達に今までの行動理由を聞いた。
だが何も話さず、隙を狙って一匹逃げ出し、その場の影達を倒して逃げた一匹を追った。
逃げた先は広い空間の洞窟で、奥には2メートル程の丸い鏡が置かれていた。
影は鏡の前まで行くと逃げるのを止め、エルダに振り返った。
〔ナゼ、邪魔ヲスル〕
「え?」
〔ココハ己ガ望ンダ場所、願ッタ地。ナゼ邪魔ヲスル?〕
「望んだ、願った?一体何の事だ!?」
〔新二願ッタ地、逃ル術ハ…〕
ピカッ!
巨大な鏡が突然光り出し、あまりの眩しさにマントで光りを防いだ。
光りが収まり目を開けると、置かれていた鏡やあやしい影は消えていた。
「どういう事?一体…」
ハッとして胸元からペンダント型の鏡を出すと、また一つ欠片が埋まっていた。
その日エルダはパプニカには戻らず、今回事件にあった村に泊まり、宿の部屋で考え込んでいた。
ココハ己ガ望ンダ場所、願ッタ地。ナゼ邪魔ヲスル?
「願った…何を?」
鏡を取り出し、それを掲げながらずっと考えていた。
今まで話さなかったあやしい影が突然話し出し、意味不明な事を言い始めた。
考えても答えは出ず、エルダはいつしか眠ってしまった。
先を歩くダイ、追い掛けようとしたが足が重い。
それでも進むがバランスを崩し右側を見ると、右腕がなかった。
遠くなっていくダイの背中、叫んでも、彼が止まる事はなかった。
(待ってダイ!ダーイッ!!)
「ダイ!」
叫びながら飛び起き、此処が宿だと知り息を整えた。
(あんな悪夢…何で)
「…ううん、悪夢じゃない」
頭を振り、右手を見下ろした。
「あれが現実、これは…偽物だ」
私の右腕は、もうないんだ。
.
パプニカに戻ったエルダはレオナを見付けて今回の村の事を報告し、直ぐにその場を立ち去った。
レオナの側にいたダイを見るのが、辛かったからだ。
だがそんな彼女を待ち構える者がいた。
怒りの雰囲気を出すヒュンケルだった。
「何故一人で行った?」
「…私一人で十分だと判断したからよ」
「あの場に遭遇する度に倒れていたのは誰だ?」
「それも影達を倒した後でしょ?今回は平気だったわ」
話は終わりと彼の前から去ろうとしたが、手を掴まれて止まった。
「何かあったらどうするんだ!?」
「ヒュンケルには関係ない!」
怒鳴り返した言葉に、ヒュンケルは驚いた。
「エルダ…」
「ヒュンケルにも、他の人にも関係ない。これは私の問題だ!」
強引に手を振り払い、早歩きで去るエルダ。追い掛ける事も出来たが何故か出来ず、ヒュンケルは立ち尽くした。
バタンッ
宛がわれた部屋に入り、マントや剣を外してベッドに倒れ込んだ。
「…もう嫌だ…何で、私は…っ」
ヒュンケルに言った言葉に罪悪感を思いながらも、言った事は正しい。これは自分で解決しなければならない事、なのに何故不安になる?
「私は、いつからこんなに弱くなったんだ…」
胸元から鏡を出し、それを眺めている内に眠ってしまった。
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