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目を開けたらある部屋で横になっていた。
起き上がり今までの事を思い出そうとした時、ある事に気付いた。
失った筈の右腕がある。
その事に驚いていると、誰かが部屋に入って来た。
「あ、姉さん起きた?」
そこにいたのは弟であるダイだった。
「…ダ、イ?」
ダイがいる事に驚きつつも起き上がり、ゆっくりと近寄って抱き寄せた。
「ね、姉さん?」
(…ダイだ)
幻でも偽物でもない、本物のダイ。
無意識に抱き締める力を強めていった。
「姉さん、痛いよっ」
「あ、ごめん…」
直ぐに離し、改めて部屋を見回した。
「そういえば、此処は何処?」
「あ、忘れてた!起きたら連れて来いって言われてたんだった!」
ダイはエルダの手を引いて部屋を出て、ある部屋を目指した。
ガチャ
「レオナ。姉さん起きたよ!」
部屋の中にはレオナを中心に、ヒュンケルやマァム、ポップがいた。
「漸く起きたわね。さ、会議の続きをするわよ」
「会議?」
エルダの混乱が収まらないまま会議は始まった。
とある村の村人達が忽然と姿を消し、調査に向かった兵までもが消えたらしい。
そこでこの中から調査しに行く者を決めるらしい。
(姿を消した…)
話を聞きながらエルダはダイを見た。
(何故ダイがいる事に誰も騒いでいないの?それに、この腕…)
右手を強く握り、その感覚を感じていた。
(失った筈の腕が、どうして…)
「ーーー?ちょっと、エルダ!」
ハッと我に返ると、全員がエルダを見ていた。
「な、何?」
「もう、話聞いてなかったの!?調査にはダイ君とヒュンケル、それからエルダに行って貰う事にしたから。いい!?」
「う、うん。わかった」
押し気味のレオナに押されていると、横にいたマァムにも声を掛けられた。
「エルダ、もしかして昨日の疲れが取れてないの?」
「昨日?」
「そりゃロン・ベルクと本気の戦いなんかしてたら、流石のお前もバテるだろ」
マァムの疑問にポップは少し呆れながら答えるが、耳を疑う事を言っていた。
ロン・ベルクと本気の戦い。
つまり彼の腕も不能ではないという事。
何故?
「とにかく、三人には明日出発してもらいます。それまでに準備を」
バンッ
机を叩く突然の音に皆が驚くが、音を出したエルダの様子は可笑しかった。
「…エルダ?」
「…ごめん。出発は明日だね、わかった…」
弱々しくも答えて席を立ち、エルダは部屋を出て行った。
あてもなく歩き、城の外に出て森の中に行き、大分奥まで来た所で足を止めた。
(さっきの机を叩いた時に痛みがあった、これは本物なの?)
右手を強く握り、頭を横に振った。
(違う、私は大魔王バーンとの戦いで右腕を失った。そしてダイも…っ)
全て夢だと思っていた、だが予想外な事ばかりに混乱していた。
そんな時。
「エルダ」
その声に振り返ると、ヒュンケルが立っていた。
「ヒュンケル…」
「少し付き合え」
ヒュンケルはそう言って銅の剣を投げ渡した。
「え?ヒュンケル、体動かないんじゃ…」
「何の事だ?行くぞ!」
構える前に飛び出すヒュンケル、エルダは慌てて防ぎながら、彼の動きに驚いていた。
以前の様な動き、体の不調は見られなかった。
(何で、ヒュンケルも…)
ガキンッ
一瞬の隙を付いたヒュンケルはエルダの剣を弾き、背後にある木に逃げ場を失った。
ドスッ
ヒュンケルの剣はエルダの顔面横を通り、木に突き刺さった。
「何があった?」
間近に迫ったヒュンケルの顔に驚き、少し返答に困った。
「…え?」
「滅多な事では動揺しないお前の驚き、俺が戦う事にも驚いていたな」
「べ、別になんでも…」
「なら俺の目を見て言え」
悟られぬ様目をそらすが直ぐに問われ、返答に迷うエルダ。
いつまでも答えない彼女にヒュンケルは剣を抜き、エルダを抱き寄せた。
「…ヒュンケル?」
「言えない事なのか?俺にも…」
「…ごめん」
寄り掛かったエルダの頭を、優しく撫でる。
「自分でも解らない事が沢山あって、考えても答えに辿り着かなくて、だから…まだ言えない」
「なら…答えが出たら、話すか?」
「…うん」
それ以上は何も聞かず、黙って頭を撫でるヒュンケルにエルダの心は少し和らいでいった。
暫くして、落ち着きを取り戻したエルダはヒュンケルから離れた。
「ありがとう、少し楽になったよ」
「先に戻るね」と、先程弾かれた剣を拾い、城に戻って行くエルダ。
その後姿を、ヒュンケルはじっと見ていた。
.
翌朝、ダイとヒュンケル、そしてエルダは例の村を目指した。
先を進みながらエルダは昨日ヒュンケルと話した事について、色々と考えていた。
目覚める方法は必ずある。だから今は目の前に起こっている事件に専念する事にした。
そして辿り着いた村。報告通り村人の姿はなく、静けさしかなかった。
慎重に調べていくと、所々に争った形跡や、何処かへ向かう足跡も見付けた。
足跡を辿って行くと洞窟があり、三人は中に入った。
奥には牢屋に捕らわれる村人達や、【あやしい影】の魔物が五体程いた。
影達は鏡を持ち、それを意識のない村人に向けていた。
「魔物の仕業だったんだな」
「だが、奴らは何をしているんだ?」
ダイとヒュンケルには影が鏡を向けているだけに見えるが、エルダは違った。
彼女には村人の闘気の様なモノが鏡に吸われているのが見えた。
その様子に剣を構えるが、ヒュンケルが止めた。
「待てエルダ、もう少し様子を見ても」
「あれ以上やっていたら、村人は皆死ぬわよ!」
エルダは飛び出して影達を空の技で倒し、遅れてダイやってヒュンケルも加勢に加わった。
暫くして影達を全て倒し、村人達を解放していった。
エルダは何故こんな行動をしたのか探るが、辺りには影達が故意に割った鏡の欠片しかなく、諦めようとした時。
キラッ
「?」
欠片に埋もれて見付けたのはペンダント型の小さな鏡。
だがそれも割られたのか、一部分の欠片しか付いていなかった。
「エルダ、そろそろ出るぞ」
「あ、うん。わかった 」
鏡を持ったまま立ち上がり、歩き出そうとした時。
ーーーエルダーーー
「え?」
ーーーエルダ、エルダーーー
「誰?」
自分を呼ぶ声、何処から聞こえるのか辺りを見回した時、手元の鏡に目が行った。
グラッ
「エルダ!?」
突然の目眩に体勢を崩し、驚くヒュンケルの声を聞きながらエルダはその場に倒れた。
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