本編
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次の日、ダイはアバン流刀殺法の一つ、大地斬を覚えそのまた翌日には二つめの海波斬を覚える為に一つの洞窟を目指した。
「ダイ君、今日は貴方に二つめの流技、海波斬を覚えてもらいます。」
「いやったぁ!」
「ただしハンパじゃないですよ?」
「はい、覚悟は出来ています」
「下手をすると君は死にます」
その言葉にダイとブラスは顔を見合わせ、エルダはアバンに駆け寄った。
「先生、まさかあの技を!?まだ早過ぎるんじゃ!」
「大丈夫です。エルダはもしもの時の為にサポートをお願いします」
「…はい」
初めて見たエルダの動揺した様子に、ダイは少し不安になってきた。
洞窟に付くと、アバンはブラスやゴメに外で待つよう言いダイ、アバン、エルダは中に入った。
「緊張する事はありません、今日の特訓は簡単です」
「え?」
「私と戦えばいいのです。ただし、私はある魔法を使いますから君は真剣を使っても構いません」
「し、真剣を!?」
二人の会話を黙ったまま聞いているエルダの後ろの岩陰に、着いてきたゴメが盗み聞きしていた。
「たった今から私の皮膚は鉄よりも硬くなってしまいますからね」
「え、でも…」
「エルダ、貴方は下がっていなさい」
そう言われ、少し下がったエルダを見ると、アバンは構えた。
「行きますよ、ダイ君」
アバンは精神を集中させ、呪文を唱えた。
「ドラゴラムーー!!」
アバンは炎に包まれ、姿を竜に変えてしまった。
「ド、ドラゴンだ!先生がドラゴンに!」
ドラゴンの姿に変わったアバンを見たゴメは脅えて、隠れていた事も忘れてエルダに飛び付いた。
「ゴ、ゴメちゃん!着いて来たの!?」
「ピィ!ピピピィー!」
脅えながら縋り付くゴメを抱きながら、エルダは驚愕したダイを見た。
【ありとあらゆるモンスターの中でも最強の力を持つ種族、ドラゴン。これと互角以上に戦えなければ真の勇者ではありません】
「…っ!」
【私は私の意志を消し、貴方を殺そうとする一頭のドラゴンになります!助かりたかったら戦うのです!】
「そんな、いくら何でも無茶だよアバン先生!」
だがアバンはダイの言葉を聞かずに自分の意志を消しダイに襲い掛かった。
「うわああーー!!」
「ピピイィ!!」
竜からの炎を喰らったダイを見てゴメが叫び、ゴメはエルダに向かって叫んだ。
「ピピ!ピピピピー!」
「私は助けない、これはダイ君の特訓なの。私が手を出したらそれは全て無駄になる」
エルダの言葉にゴメは急いで洞窟を出て行き、エルダはアバンと戦っているダイを見た。
.
暫くただ力任せに戦っていたダイだが、急に攻撃を止めてある構えをした。
「っ、気付いたか…」
「ダーーイ!!」
ダイの名前を呼ぶ複数の声に後ろを向くと、ポップやブラス、ゴメがいた。
「ブラスさん、外で待っててと言ったのに」
「そんな事よりエルダさん!ダイは、ダイはどうしたんじゃ!?」
エルダは黙って前を見、ポップ達もその方向を見ると、ダイが竜の前で剣を構えていた。
「ダイ!」
「駄目です!ここで見ていて下さい」
駆け寄ろうとするブラスを止め、三人と一匹はダイを見た。
迫ってくる炎を前にダイは逃げる事なく剣を構え、こう叫んだ。
「アバン流刀殺法、 海波斬!! 」
炎を切った剣圧はそのまま竜の鼻を裂き、竜は痛みで元の姿に戻り、戻ってもアバンは鼻を押さえて暴れていた。
倒れるダイをエルダが支え、ブラスとゴメはダイに向かい無事かと聞き、Vサインしたダイに安堵した。
笑いながらアバンを見るとまだ痛がっていた。
「先生!大丈夫?」
「うう~痛いです~…」
「自業自得ですよ、先生。もう~ドラゴラムで修行なんて無茶苦茶やるんだもんな」
「いや~、初めてガーゴイルと戦った時、ダイ君の剣の威力が海を割ったでしょ?」
アバンに言われ、皆はその時の事を思い出す。
「そういえば…」
「だから、海波斬はいきなりでも出来るかな~なんて」
「そんないい加減な目算でやらないで下さいよ!!」
ポップに怒られながらもアバンはダイの成長振りを話し、自信満々に言った。
「この調子なら特訓コースの達成も夢ではなーい!」
言い切った後、切れた鼻から血がダラリと流れた。
「あ、ポップちゃん。絆創膏持ってませんか?」
その言葉にエルダを除く全員がこけ、エルダはやれやれと呆れ顔になった。
ポップに絆創膏を貰い、鼻に張ると、アバンは皆に笑われた。
「もう、しまんねぇな、先生」
「ん~全く、格好悪いっすね。アハハハッ!」
アバンに釣られるように皆が笑い出した。
だが、暫くしてから急にアバンとエルダの顔付きが変わった。
何か小さな音が聞こえ、次第に地面が揺れ始めた。
「っ、地震だ!」
「何じゃ!火山の爆発か?」
すると、少しずつ洞窟が崩れ始めた。
「いや、違います。この振動は…何者かが島の魔法陣を破ろうとしているのです」
「えっ!一体誰が!?」
「馬鹿、魔王の手下に決まってんだろ!」
「魔法の手下!?」
「ここは邪悪を拒む魔法陣に護られている、入ってこれないのは邪悪な者。そして魔法陣を無理矢理破こうなんて考えるのは魔王軍だけ」
侵入者を大方予測したポップとエルダはダイとブラスに内容を教えた。
(だが、並のモンスターでは一歩足りとも立ち入れぬ筈…、まさかっ!)
洞窟が次々と崩れ、落ちてくる岩を避けながら嫌な予感がした。
(何、この邪悪な気配は…今まで感じた事のない気配…)
その時、ブラスが苦しみ出し、その様子にアバンは小さく呟いた。
「どうやら、不安が的中してしまったようですね」
「え!?」
すると、洞窟の一部が突然爆発し、天井の穴から一人の人物が現れた。
「フフフフ、貴様の魔法陣には中々骨を折らされたぞ。ハハハハ!」
その声を聞き、アバンは目を見開いた。
「やはり生きていたか!魔王!!」
アバンの言葉に皆が驚愕した。
「ええっ!?」
「魔王!こいつが!?」
「魔王、ハドラー…っ」
魔王、ハドラーがダイ達の前に立ちはだかった。
.
デルムリン島にやって来た邪悪な人物。それは、15年前に倒された魔王、ハドラーだった。
「久しいなアバン、あれから年月がたったものう」
ハドラーの言葉にダイとポップは驚いてアバンを見た。
「先生、魔王と会った事があるの?」
ダイの言葉に無言で答えるアバン。その表情はとても真剣だった。
「お前のような男がこんな所にいるとはな、勇者アバン」
「ゆ、勇者アバン!?」
「せ、先生が勇者?」
表情を変えないアバンを、ハドラーは睨み付けた。
「かつて貴様は俺の前に立ち塞がり、もう一歩で達成するはずだった、この俺の野望をことごとく打ち砕いた。貴様は、我が命をも奪った」
怒りながら話すハドラーの話を聞き、ブラスは何かを思い出した。
「そ、そうかアバン!その昔魔王に戦いを挑み、これを倒して世に平和をもたらしたという伝説の勇者の名が、アバンじゃった!」
「先生、本当なの!?」
「古い話ですよ」
ブラスの話にも表情を変えないアバンに、ハドラーは苛立ちした。
「あの痛みと屈辱、決して忘れん」
「お前は、その数百倍にも及ぶ人間の命を奪ったではないか」
「ふん、笑わせるな。人間など我々魔族に比べようもない愚かな存在。たとえ数百万集まった所で、俺の命とは釣り合わんわ!」
「こいつ!」
飛び出そうになるダイを抑えながら、エルダもハドラーを睨み付ける。
「変わらんなハドラー、いや、以前にも増して愚劣窮まりない性格になったようだな」
「何だと!?」
その言葉にハドラーは怒り、アバンはダイ達に洞窟から出るよう言い、ポップとエルダはダイ達を連れて洞窟の外に出た。
アバンは強かった。ハドラーが放った呪文、イオラを受け止め、お返しと言わんばかりのベギラマを撃った。
ハドラーはベギラマの炎に包まれ、ダイ達は喜びの声を上げるが、それは別の声に遮られた。
炎の中から現れたハドラーは傷一つ付いていなく、アバンに向かってベギラマを放った。
アバンはベギラマを海波斬で防ぐ。だが凄まじい威力にアバンは膝を付いた。
「以前戦った時よりも遥かに強くなっている…。な、何故?」
「知りたいか、知ればきっと後悔するぞ。貴様は相変わらず俺が魔王だと思っているらしいからな」
「何だと!?」
「俺は、あるお方の力で再びこの世に甦ったのだ。以前よりも強靭な肉体を与えられてな」
「あるお方…?」
嫌な予感がするものの、ハドラーの声に黙って耳を傾けた。
「俺よりも遥かに強大で偉大なお方だ」
「え?」
「ま、魔王より凄い奴が!?」
「何者だ!そいつは?」
驚くアバン達の顔を見て笑いながら、ハドラーはゆっくりと答えた。
「大魔王、バーン」
その名にエルダ達は驚愕した。
「貴様に敗れ、死の世界をさ迷っていた俺の魂を蘇生させて下さった。偉大なる魔界の神だ!今の俺は、バーン様の全軍を束ねる総司令官」
「魔軍司令、ハドラーだ!」
ハドラーのとんでもない言葉に、皆は驚きを隠せずにいた。
「だ、駄目だ!もうこの世の終わりだ!!」
ポップの言葉を聞きながらエルダも顔を強張らせ、ずっと身構えていた。
その後、ハドラーはアバンに部下になれと、世界の半分をやると言ったが、アバンは勿論断り、再び剣を構えた。
自分の事を大魔王の使い魔呼ばわりされて怒ったハドラーはイオナズンを放ち、アバンはアバンストラッシュを打った。
大爆発が起こり、エルダは皆を庇いながら、爆風が晴れた方を見た。
ハドラーの胸から血が流れダイ達が安堵した。
だが、ハドラーは傷を塞ぎ大ダメージを受けたアバンを見た。
「流石はかつて我が命を奪った奥義、アバンストラッシュ。だが!甦った俺の魔力には僅かばかり及ばなかったようだな」
「先生!!」
崩れるアバンを見たダイは剣を構えるが、それはポップが抑えた。
アバンは先程のダイとの特訓で魔法力を使い果たし、もはや呪文は一つも出せない。
絶体絶命のアバンにハドラーが止めを刺そうとした時だった。
「やめろー!!」
ダイがナイフを振り上げてハドラーを攻撃した。が、その攻撃は、ハドラーの指一本で止められてしまった。
「引っ込んでいろ、小僧!」
ハドラーはダイを蹴り飛ばし、倒れたダイをエルダが抱き上げた。
「ダイ君!」
「エルダ!俺達は邪魔になる、早いとこ逃げよう!」
ポップは怯えながら言い、エルダはチラッとアバンを見た後、ダイを抱えて洞窟を出ようとした。
「待て、小娘」
ハドラーはエルダの事を呼び止め、その声に振り向くと、ハドラーは右手に炎を出していた。
そしてよく見ると、ハドラーの指から血が流れていることにエルダは気付いた。
(あの指は、ダイ君のナイフを受け止めた指…)
痛みに堪えているダイを見て、再びハドラーを見た。
「気が変わった、やはりアバンの弟子は一人足りともこの世に残して置けん。皆殺しにしてやる」
「い、いかん!」
ハドラーはダイ達に向かってメラゾーマを放った。
「ポップ!ダイ君!エルダ!」
アバンは急いでダイ達に駆け寄り、そしてメラゾーマによって大爆発が起こった。
バリンッ。
.
自分の体を防御しながら前を見ると、アバンがダイ達の前に立ち塞がっていた。
「せ、先生!!」
「大丈夫ですか…、皆?」
皆の無事を確認し、アバンは膝を付いた。エルダは背中を見ると、そこには痛々しい火傷が残っていた。
「先生!大丈夫ですか!?」
「大丈夫です…。しかし奴の力はかつて魔王だった時以上。しかもその上には大魔王が控えているのですから…」
心配そうにアバンを見るダイ達に、彼は語りかけた。
「敵は私の想像を遥かに上回っています…。だからこそ奴だけは、魔軍司令ハドラーだけは、私が倒します」
決意したような目でハドラーを睨み、ダイ達に話し続けた。
「そしてダイ君、ポップ、エルダ。いつか貴方達の手で、大魔王バーンを倒して下さい」
「…まさか」
エルダの呟きに彼女を見て、ポップはアバンの言葉を悟った。
「まさか、先生…死ぬ気じゃ…」
「先生!俺も一緒に…」
「アストロン」
アバンが呪文を唱えると、ダイ達の体が鋼鉄になってしまった。
「これなら皆安全です。そこで、私の最後の戦いを見守って下さい」
「や、やっぱり…」
「先生…こんなの、こんなの嫌だよ!俺も先生と一緒に…」
アバンはハドラーに話す時間を貰い、懐から三つのネックレスを出した。
「そ、それは、アバンのしるし、卒業の証だ!」
「卒業の証?」
アバンはダイとポップにしるしを渡しながら話したい事を話した。
そして最後に、懸命に涙を堪えているエルダに向いた。
「エルダ、貴方はもうとっくに卒業していた身でした。それでも私を手伝ってくれた事、私はとても嬉しかったです」
「アバン先生…」
「貴方と過ごした十一年間とても楽しかったです。必ず、貴方の捜しものを見付けて下さいね」
「…はいっ」
耐え切れなくなった涙がアバンのしるしに零れ、アバンはブラスやゴメにも挨拶を言って、ハドラーに向き直った。
だがアバンは殆どの魔法力を使ってしまい、彼はハドラーになぶり倒されてしまった。
そして最後の一撃を喰らったアバンはそのままの体制から手をハドラーの耳を刺し、そのままある呪文を唱え出した。
「この呪文は殆ど魔法力を使わない。そのかわりに、己の全生命エネルギーを爆発力と変えて敵を討つのだ」
「や、止めろ!!」
(ポップ、ダイ、エルダ。後は頼みますよ)
「メガンテ!!」
その瞬間、大爆発が起こった。
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