本編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
私を呼ぶ声が聞こえる
必死になって呼んでいる
その声を、私は知っている
二度と聞く事のなかった
私の大切な
重い瞼をゆっくりと開ける。
すると、目の前には死んだ筈のラーハルトの姿があり、エルダは数回瞬きをして彼の名前を呼んだ。
「ラー…ハルト…?」
「エルダ様…」
「…わ…たし……死んだ…の?」
意識が朦朧とするエルダの言葉にラーハルトは目を見開くが、直ぐに首を振り、他のメンバーがいる方向を見た。
それに釣られるように彼が見る先を振り返ると、そこにはポップやマァムを始めとする仲間達や、何故か死んだ筈のアバンもいた。
「アバン…先生…?」
「エルダ、ようやく気が付きましたか」
「…何で…私…今まで、何して…?」
何故自分がここにいるのか何があったのか、と混乱していると、ラーハルトはエルダを落ち着かせてゆっくり話し出した。
「そっか…父さんが…」
「私が今ここにいられるのは、バラン様のお陰です」
今までの出来事、ラーハルトが生きていた事をエルダに話すと、悲しそうな顔をしてエルダは俯いた。
そんな彼女の表情に、ラーハルトは何かを思い出し、ダイから預かっていたアバンのしるしを渡した。
「これ、私の…」
「ダイ様から預かっていました。必ず貴方にこれを返すようにと…」
エルダはしるしを受け取り、それを大事そうに握り締めた。
ポウッ
「?」
瞬間、しるしが黄色く光りその光りにエルダは唖然とした。
「何…これ?」
「それが貴方の魂の力ですよ」
混乱するエルダにアバンは彼女の側に立ち、しるしが光った意味を教えた。
「しるしには私が与えた者達全員に心の力を増幅させる事が出来ます。エルダ、貴方のは“信じる”心です」
「信じる…心」
「貴方は幼い頃からダイを捜し、彼に会う事を信じ続けた…貴方の心の強さはそれなのです」
アバンの言葉にしるしを見つめ、再びそれを大事そうに握り締めた。
「ありがとうラーハルト。しるし、大事に持っててくれて…」
「いえ、それぐらいの事…」
しるしを握り、俯いたままラーハルトに御礼を言うエルダ。
そんな彼女に、ラーハルトも少し安心したように息を吐いた時。
ギュッ
エルダは突然ラーハルトの手を握り、両手を震わせた。
「エルダ…様?」
「よかった…」
「え?」
「また会えて…よかった」
ラーハルトが生きている事に喜び、涙をそっと流すエルダにラーハルトは慌てたが、彼女を安心させるように添えられた手を握り返した。
ドガンッ
急に聞こえた音に、そちらの方向を向くと、マァムがポップをボコボコにしていた。
だが、事情を知らないエルダは慌て、急いで彼女を止めた。
「マァム落ち着いて!一体何があったの!?」
「止めないでエルダ!ポップったら……エルダ!?」
「あ、はい…エルダですけ…どっ!?」
バタバタと暴れていたマァムだったが、止めに入ったエルダに気付いたマァムは、直ぐに彼女に抱き着いた。
「マ…マァム?」
「エルダ…よかった…無事でよかった…っ」
縋り付いて泣くマァムにエルダは少し慌てたが、無理に引きはがそうとはせずに彼女を抱き返して慰めた。
「ありがとう…マァム。ごめんね…」
迷惑を掛けた事、そして一時的とはいえ彼女を傷付けてしまった事に謝罪するとマァムはエルダに抱き着いたままコクコクと頷いた。
その時、武装の不要な部分を取り除いていたラーハルトが準備はいいか、と声を掛けるが、マァムによってポップはヨレヨレのままだった。
エルダはマァムに回復を頼んだが、未だ怒っているのかポップに自分でしろと言った。
ラーハルトは呟いた、ダメージが大きい者は此処に残るか引き返した方がいいと。
しかし、起き上がったポップは言った。
「この中にまともに大魔王と勝負出来るなんて思っている奴は、最初から一人もいないさ。でも皆決めてるんだ。勝てようが勝てまいが、それでも行くってな」
そう。ダイがいるから。ダイの為なら弾よけになればそれでいい。
そのポップの言葉に、ラーハルトも同意した。
「一理ある…!」
「それによ…おめぇだって好きな女は命懸けで護りてえだろ?」
その瞬間、ラーハルトの顔が赤くなった。
「き、貴様っ!」
「何だよ照れんなよ、自分でああしながらバラしやがったんだからよ、自業自得だぜ?」
「よ、余計な事を言うなッ!」
茶化すポップに怒鳴り、ラーハルトはそーっと背後にいるエルダを見たが。
じー。ビリッ
彼女は自分の剣を拾って近くに突き刺し、急に服を破き始めた。
「ちょっ…!エルダ何してるのッ!?」
「だってなんかこの服、動きにくくって…」
」
エルダはマァムの焦る声に構う事なく長いスカートを破り、破った部分の布で右腕を厳重に固定。
地面に突き刺した剣を抜きそれを余った布で包んで鞘代わりにし、背中に背負った。
「よし!戦闘準備完了!ダイの元に行くわよ!」
拳をグッ、と握り締めて戦う気満々のエルダ、どうやらポップの言葉を聞いていないらしく、ラーハルトは小さく息を吐いた。
そして一行は、ダイがいる最上階を目指した。
オマケ
「エルダ様、体は本当に大丈夫なのですか?」
まだ少し顔色の悪いエルダを気遣うようにラーハルトが声を掛けるが、エルダは何やら複雑な表情をした。
「…ラーハルト」
「はい?」
「敬語使うなっ!!」
「……は?」
突然指をビシッと指され、ラーハルトは一瞬唖然とした。
「何で敬語なんてしてるのよ。ハッキリ言って、気持ち悪い」
「きっ…、しかし、今のエルダ様はダイ様と同じく私の主君で…」
「主君なんてダイだけでいいだろ?」
「しかし…」
「次に敬語使ったら、口聞かないから」
黒いオーラを放ちながら笑い、拳を握るエルダに他のメンバーは驚き、アバンとヒュンケルはため息を付いた。
そしてその黒いオーラを感じたラーハルトも、少し考えた後、結論を出した。
「…分かった、エルダ…ぐッ!?」
「そうそう♪語っ苦しいの嫌いなんだからね、私は」
ラーハルトの肩に手を回して笑うエルダに、ラーハルトは少し困ったようになりながらも笑いを見せた。
教訓、エルダを怒らせるような事をするな。
.