本編
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僅かな問題を抱えながらも何とか大呪文、ミナトカールを唱える事に成功し、ダイ、ポップ、マァム、ヒュンケル、レオナの五人は大魔宮に飛んだ。
ダイ達はハドラーや親衛騎団と死闘を繰り広げていたが、死神キルバーンの罠にポップが死に追いやられた。
その危機を救ったのは、死んだ筈のアバン。
アバンの助けや、追撃を抑える役を買って出たヒュンケルに護られながら、ダイ達はついに大魔王の宮廷に突入した。
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ダイ達の侵入にバーンは地上でロン・ベルクと戦いを続けているミストバーンを呼んだ。
『ミストバーン…ミストバーンよ』
〔バ…バーン様!〕
『何を手こずっているのだ?早く余の元へ戻れ!そして大魔宮守護に専念するのだ』
〔なっ…何事です、一体…!?〕
『驚くべき事態だ、あのアバンめが…甦ってきおった…!お前は早く戻り、アレを使って勢いに乗っているダイ達を止めるのだ…!』
〔ア、アバンが…!?…承知いたしました、直ちにそちらにお戻り致します…〕
ミストバーンはロン・ベルクとの戦いを中断し、大魔宮に戻って行った。
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宮廷の中にある綺麗な広場で、ダイ、ポップ、マァムは城の先の構造を調べに行ったアバンとレオナの帰りをアバン手作り弁当を食べながら待っていた。
それと同時に魔法力や体力を完全回復し、ポップが叫んだ。
「どっからでもかかってきやがれ!魔王軍っ!!」
だが彼の声は虚しくこだまするだけで誰も現れず、静けさやアバン達がまだ戻らない事に不安を感じていた。
〔…ここは“ホワイトガーデン”と言う大魔宮の中心部であり、最も美しい場所の一つなのだ〕
突然聞こえた声にダイ達は入口の方を向くと、足音と共にミストバーンと、側に布を全身に纏った人物が立ちはだかった。
「ミストバーン!!」
「突然現れたと思ったら…急に観光案内かよっ!!」
〔フフッ…!あの世へ行く前に、自分達の死に場所の名前ぐらいは知りたかろうと思ってな…〕
薄気味悪く笑うミストバーンにポップは怒るが、ダイは彼の側にいる人物に目が行った。
何故だか解らないが目を反らせない。反らしたら、すぐに消えてしまいそうな感覚が襲うが、布の人物はダイの視線にも動じなかった。
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その頃、宮殿前の守りをしていたヒュンケルの前に立ちはだかったのは、思いがけない人物。
ハドラー親衛騎団の兵士、ヒムだった。
ハドラーが死しても尚、生きているヒムに驚いていると、彼の割れていた頭が割れ、中から銀色の髪が生えてきた。
ヒムは一つの生命体に変わり、ハドラーの命がヒムに宿ったのだ、とヒュンケルは推測した。
ヒュンケルと戦いを始めるヒムだが、今のヒュンケルは立っているのがやっとな状態。
それでもヒムは加減せず、新たに目覚めた闘気の力を使って攻撃し、ヒュンケルは一撃で倒されてしまった。
今までの戦いでかなりの闘気を使ったヒュンケルには今のヒムには太刀打ち出来ない。
次第に全身の感覚も失せていき、朦朧とする意識の中で、ヒュンケルは仲間達の顔を思い浮かんだ。
…ダイ…ポップ…マァム…
体に剣を貫かれ、無惨な姿を見せられたエルダ。
正義に目覚め、共に戦い抜いてきたエルダ。
幼い頃、まだアバンを憎んでいた時に、僅かな光を与えてくれたエルダ。
……エルダ……!!
強く彼女を想い、ヒュンケルの意識は途絶えた。
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…ヒュンケル…!ヒュンケル…!
暗い意識の中、自分の名を呼ぶ声に僅かに目を開けると光が放たれ、その光の中にはダイ達、それにアバンが自分に向けて手を差し延べていた。
『…さぁ!とっとと立っちゃって下さいヒュンケル!まだ貴方は私の言った事を守ってないでしょ?』
「…先生の…言った事…?」
『そうです!力の全てを出し切っての敗北ならばなんら恥じる事はない、でも今の貴方はまだやれる事が残っているじゃないですか!』
幼い頃、まだエルダと出会う前にアバンに言われた事、それと同じ事をもう一度言い返された。
『負ける時は力の全てを出し尽くして思いっきり負けなさい、そうしないと絶対に今より強い自分にはなれませんよ!最後の最後まで己の力を出し尽くして戦いぬく…!それが真の戦士です!!』
その言葉にヒュンケルは痛む体に鞭を入れて起き上がらせ、心の中でアバンに叫んだ。
…不思議なものだ。あれほど憎んでいたのに…殺してやりたいとすら思ったのに…!
…師よ!!瀕死の俺をこうして立ち上がらせてくれたのは、いつも貴方だった…!!
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再びヒムと死闘を始めるヒュンケル。だが全ての武器を使い切り、精も根も尽き果てた彼にはもう、打つ手はなかった。
その時、不意に掴んだ瓦礫の石を握り潰した時、何かに気が付いた。
再び立ち上がったヒュンケルは武装を解き、己の拳に全闘気を集中させてぶつける最後の策に出た。
ヒムは彼に答えるべく、自分も闘気を拳に集中させ、ヒュンケルに渾身の一撃を放った。
ズガアアアンっ!!
ヒムの拳はヒュンケルの顔面に当たる、が、ヒムは口から血を吐き、よく拳を見るとヒュンケルには触れておらず、彼の拳がヒムの胸を貫いた。
止めを刺せと言い張るヒムにヒュンケルは手を差し延べ“生きろ”という言葉を掛けた。
それにヒムは生意気な口を聞きながらも涙を流し、ヒュンケルの言葉を受け入れた。
その時、空から親衛騎団の兵士の駒が現れ、続いて僧正・城兵・騎士の駒が一つずつと、兵士が全部で7体現れた。
その駒達を先導して現れたのは王、マキシマムだった。
ボロボロのヒュンケルに身動き出来ないヒム。ヒムはヒュンケルに逃げろと伝えるが、彼は言葉を聞かずに立ち上がった。
ヒムが見たのは、戦士ヒュンケルの、最後の勇姿だった。
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現れた残りのオリハルコン部隊を、ヒュンケルは先程ヒムと戦った寸法で相手を開始し、11体いた駒達は残り、兵士の駒、5体だけになってしまった。
王は自分を護らせるように兵士達に言うが、ヒュンケルは指示を出す前に王を攻撃し、ヒュンケルを確実に倒す方法を調べ出した。
そして倒れていたヒムを、兵士の駒達が地上に投げ落とそうとしたが、落下する彼を助けたのはヒュンケルだった。
王に踏まれながらもヒムの手を離そうとはせず、ただ堪えているだけのヒュンケルに王が止めを刺そうとした。
ドスッ
何か違う音が聞こえ、王が自分の頭を見ると、ヒュンケルの槍が突き刺さっていた。
[ギャアーー!!だ…誰だ!?こんな大それた真似をする奴は!!]
「…大それた真似?」
声の聞こえた方を振り向くと、そこには一人の人物が立っていた。
「俺にとってはいつもの事だ、…卑劣な戦い方をする外道には例外なく、その魔槍をブチ込んでやるのが流儀でな」
[貴様何者だ…!?名を名乗れ!!]
ヒュンケルもその人物を横目で見ると、アバンが生きていた時と同様に驚いた。
「陸戦騎、ラーハルト推参」
バランの配下の一人であり死んだ筈のラーハルトが生きていた事にヒュンケルは驚き、王は直ぐさまラーハルトのデータを検索した。
しかしラーハルトは素早い動きで王の頭に刺さった槍を抜き、向かって来た兵士達を必殺技で倒した。
駒を全て倒された王は慌てて退却したが、奴はラーハルトが槍を抜いた瞬間に切り刻んでおり、飛び上がった瞬間に爆発した。
王を倒した後、ラーハルトはヒュンケルの方を向き、二人は暫く睨み合った。
「…生きていたとはな、お前が…」
「…その表現は違うな。俺は一度確かに死んだ…だがバラン様の体に流れる竜の血を授かり、死の淵より蘇る事が出来たのだ」
かつてバランと戦った時、ヒュンケルはバランがエルダに与えた血の事を思い出した。
バランは三人の竜騎衆に血を与え、奇跡の泉近くの森に安置した。しかし三人の中で生き返る事が出来たのは、ラーハルトだけだった。
ラーハルトはヒュンケルに向けて槍を構え、突き刺した。
しかし、槍が刺さったのはヒュンケルの顔面横の塀だった。
「ラ…ラーハルト…!」
「戦士ヒュンケルは死んだ、今俺がこの手で殺したのだ。したがって、俺がこの鎧の魔槍を持っていても誰も文句はあるまい?」
僅かに笑ったラーハルトの顔にヒュンケルも魔槍を彼に返し、鎧を纏ったラーハルトはダイ達の元に向けて走り出した。
それを見届け、ヒュンケルの意識は次第に薄れていった。
…やるだけの事はやった…ヒムも救う事が出来た…これなら…これなら叱られはしないですよね…先…生…
数分後、救援に駆け付けたチウとクロコダイン、変な布人物が見たのは、ヒュンケルの事に涙を流しているヒムと。
安らかに眠るヒュンケルだった。
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宮廷内ではダイ達とミストバーンが戦いを繰り広げていたが、急に攻撃を止めた。
オリハルコン部隊の全滅を感知したのか、王の悪口を言い始め、ダイ達に誰が倒したのか問い質した時。
「そいつらを倒したのは、きっと私の自慢の一番弟子でしょう!」
アバンの登場にダイ達には活気が戻り、彼を初めて見たミストバーンは今度は全員で掛かって来いと言い出した。
「へっ、てめぇこそ、そこにいる変な奴を加えたらどうだ?あんたが戦ってるにも関わらず、身動き一つしねぇじゃねえか!」
ポップはミストバーンの側にいる布人物を指差して馬鹿にしたように言うと、ミストバーンは一瞬ポップを見た。
〔よかろう…ならばお前達の相手はこやつに変えようではないか〕
「な…っ、舐めてんのかてめぇ!俺達全員を、そんな貧弱な奴に任せていいのかよ!?」
〔試してみれば解る…〕
ミストバーンの言葉に布人物は前に出て、ダイが剣を構えた瞬間、アバンがその人物と戦うと言い出した。
しかしアバンは死神の鎌に掴まれて別空間に吸い込まれ、これからアバンと決闘を始めるとミストバーンは言った。
それでも尚戦おうとするダイをレオナが止め、ダイはバーンを倒す事に専念すれと言い出した。
だが敵もみすみすダイを行かせようとはせず、布人物がダイ向けて飛び掛かった。
手刀でダイを攻撃していくが、布人物の攻撃はポップとマァムに塞がれ、レオナとダイは先に進む事にした。
しかし追撃を続けようとする布人物にポップは呪文で動きを惑わし、隙を付いたマァムが布人物の顔面を拳で攻撃した。
ドガッ
布人物は地面に叩き付けられ、暫く動かなかったが、少しして何事もなかったように立ち上がった。
その時、布人物の布が微かに破れていた。
それによって隠れていた顔面が見えたが、その顔を見てポップとマァムが驚愕した。
「そ…そんな…っ」
「何で…何でお前が…!?」
二人の驚いた声を聞き、ダイとレオナも振り返ってその人物を見ると、同じように驚愕した。
「う…うそ…」
「ど…どうして…っ」
ダイ達の異様な反応に、ミストバーンは笑いを零して言葉を放った。
〔何を驚いている…?会いたかった筈ではないのか?こやつに〕
ミストバーンはその人物の肩に手を置き、布人物は完全に布を剥ぎ取った。
漆黒の髪
一本の長剣
額に映し出された紋章
〔特にダイ…お前が一番会いたかったのではないか?
エルダに〕
その人物は紛れも無くダイ達の仲間であり、行方不明である
エルダだった。
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