本編
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公開処刑日
カール山脈地帯に用意された処刑場。
そこに十字架に括り付けられ、足を鎖で繋がれたヒュンケル、エルダ、クロコダイン。
周りにある岩陰には、ダイ達をサポートするフローラが待機していた。
そして上空には大魔宮が到着し、ヒュンケル達の元にミストバーンが近寄った。
〔…正午だ〕
ミストバーンの言葉にヒュンケルとクロコダインは顔を上げるが、エルダだけは顔を伏せたままだった。
〔ヒュンケル…よもや忘れてはいまい。この暗黒闘気のグラスを飲みほし、我が配下になるか否か…決めたのか?〕
「……」
〔…だが、その前に〕
ヒュンケルの答えを聞く前に、ミストバーンは二人の間にいるエルダの前に立ち、衣内から剣を取り出した。
「ミストバーン…何を…っ」
〔こいつを生かす意味は、無い〕
ドスッ
ミストバーンの剣は、エルダの体を容赦なく貫いた。
その光景に岩陰にいた仲間達も、ヒュンケルやクロコダインも目を見開いた。
「うわああああッ!!」
絶叫を上げるヒュンケルにミストバーンはエルダから彼に視線を向け、ただ黙って見ていた。
「ミストバーンッ!貴様あッ!!」
〔さあ、これでも考えは代わらぬか?〕
クロコダインは怒り、その言葉を無視してヒュンケルに先程の答えを問うが、彼は未だにエルダを見続けていた。
突き刺さった剣から流れ落ちる血、それから流れ落ちて下に出来た血だまり。
無惨なエルダの姿。
拳を強く握り締め、ヒュンケルはミストバーンを睨んだ。
〔…どうするのだ?〕
「…答えを知りたければ、俺を自由にしろ!」
〔フフフッ…よかろう〕
ミストバーンはヒュンケルの手足の束縛を解き、彼にグラスを差し出した。
〔…忘れるなよ、それを飲んだら最後。お前は再び悪魔に魂を売るのだ!〕
「や、やめろ!ヒュンケル!!」
クロコダインの止めの言葉も聞かず、ヒュンケルは暗黒闘気を飲みほし、彼の表情は一変した。
銀の髪は黒に代わり、彼の体からは邪悪な気配が発せられていた。
〔どうだ…良い気分だろう?人間の首を跳ねろと言われたらまるで花を積むようにたやすく行えそうな気がするだろう?〕
ミストバーンは彼が聞いたら必ず否定しそうな言葉を掛けるが、ヒュンケルはピクリとも反応しなかった。
ミストバーンはエルダの体から抜いた剣をヒュンケルに渡し、それを使ってクロコダインを処刑しろと言う。
血が付着したままの剣を握って構えを取るヒュンケルに、クロコダインは必死の思いで考えていた。
(ど…どうすれば良いのだ!ヒュンケルは今や完全に敵…エルダはもはや生きてはいない…!)
横目で息絶えたエルダを見つめ、ヒュンケルの攻撃に覚悟を決めようとした時、牢獄で会話した彼の言葉を思い出した。
(もしも俺を友と思うなら…何が起こっても俺を信じてくれ…!!)
その言葉を信じ、クロコダインは叫んだ。
「ヒュンケル頑張れ!暗黒闘気ごときに負けるなッ!!」
ピクッ
〔!?どうした?殺せ!殺すのだ!!〕
クロコダイン、ミストバーンの言葉にヒュンケルは震え出していた。
「俺はお前を信じているぞ!たとえこの身を裂かれ、最後の一片になろうとも、お前を信じぬくぞ!!」
〔殺せヒュンケル!!たわ言に耳を貸すなっ!!〕
「ヒュンケル!!」
〔ヒュンケル!!〕
「ウオオオォーーッ!!」
両者の声にヒュンケルの体が爆発し、彼はその場に倒れてしまった。
倒れたヒュンケルを見つめミストバーンは確信したように言い放った。
〔死んだ…か、なんたる馬鹿だ。素直に暗黒に心を染めていれば再び栄光ある魔王軍に戻れたものを…!二つの闘気の激突に耐え切れずにくたばりおって…〕
落ちた剣を拾ってクロコダインに向け、ミストバーンは処刑を継続しようとした。
ガシッ
〔な…何ぃ!?バッ、馬鹿なあっ!!〕
ミストバーンの足を掴んだのは、死んだと思った筈のヒュンケルだった。
「…いい気分で目覚めたよ、ミストバーン…!今ならお前の首でも簡単に落とせそうな気がする…まるで、花を積むようにな…!!」
生き返ったヒュンケルの体からは、凄まじい程の光の闘気が放たれていた。
その光の闘気を放ったまま向かってきたミストバーンの顔面を殴り、続いて攻撃してきた鎧兵士を素手で倒していった。
〔ゆ、許さん…許さんぞ!お前達二人…!この場で私が八つ裂きにしてくれるわっ!!〕
鎧兵士達がヒュンケルとクロコダインに迫るが、彼等は笑っていた。
「俺達二人…?ミストバーン、貴様逆上すると足元もよく見えなくなるらしいな」
その時、鎧兵士達の足元の地面が割れ、紋章の力を使ったダイが現れた。
現れたダイ、そしてポップやマァム、レオナも地中から現れ、二人の側に到着した。
しかしまだ残っていた鎧兵士がダイ達を攻撃しようと仕掛けたが、それは岩陰に潜んでいた仲間達が相手を開始し、クロコダインの束縛を解いた。
「…姉さん…」
ダイは既に息絶えたエルダに近寄り、取り敢えず手足の束縛を解こうとした。
しかし
バキィッ
エルダは自ら束縛を解き、ダイ向けて拳を振り下ろした。
ドゴン!!
ダイは寸止めの所で攻撃を避け、動ける筈のないエルダを見た。
「何で…どうして…っ!」
【惜しい…もう少しの所だったのにな…】
エルダは落ちていた鎧兵士が使っていた剣を拾い、ダイに向けた。
「エルダ!お前何を!?」
【しかし次はなかろう…この体に傷を付けられるならの話だが…なぁ!】
ヒュンケルの言葉を無視し、エルダはダイ向けて飛び掛かり、他の者が心配する中、ダイは拳の紋章を発動させた。
「うわああああーー!!」
ダイの拳はエルダの貫かれた場所に当たり、彼女はそのまま倒れた。
【バッ…バカナ…!】
エルダの体からバチバチと電気が放たれ、彼女の姿は別の物に変わった。
「な…っ!?」
エルダの姿は鎧兵士に変わり、その姿にダイは目を見開いた。
「そんな…じゃあ、姉さんは…姉さんはどこだっ!?」
鎧兵士を掴み上げ、エルダの居場所を聞くと、鎧兵士は途切れ途切れに答えた。
【シラ…ヌ…ワレノヤクメハ…コノモノノカワリ…ソレヲスイコウシタ…マデ…】
完全に息絶えた鎧兵士に、ダイは拳で地面を殴り、そんなダイにヒュンケルは近寄った。
「ダイ…恐らくエルダはバーンと一緒、もしくは大魔宮のどこかだ」
「え…!?」
「処刑までの日時、俺とクロコダインは牢獄に囚われていたが、エルダの姿だけはどこにもなかった。…この処刑場にも、俺達が目を覚ました時に、奴は既にいたからな」
ヒュンケルの言葉にダイはゆっくりと立ち上がり、彼を見上げた。
「姉さんは、姉さんは生きているよね…」
「確実とは言えんが…恐らく」
そう言ってダイの肩に手を乗せるヒュンケル。ダイも決意を改めた。
そしてレオナの説明の元、いよいよ大魔宮に突入を開始した。
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